獣の奏者 エリン 第24話 「嘆きの歌」 | リュウセイグン

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リョザ神王国の歪み





今回は、エリンが過ごしてきていた国そのものにスポットライトが当たった回でした。
それまでに幾度かはありましたが、今回は真王・大公のすれ違いの根っことも言うべき部分が描かれていました。

必死になって戦う大公軍。
それを労うどころか、むしろ小馬鹿にした節すらある真王領の民。

これが逆なら問題は小さかったでしょう。武力のある方、苦労している方が力が強いのならば。
しかしのうのうと暮らしている真王領民の方が地位が高く、事態を分かっていない癖に大公領民を見下している。

まさに内憂外患の樣相。

大抵の場合、国家は内政さえしっかりしていれば外敵が来てもさほど苦労する事はありません
しかし内部分裂を起こした時、まず間違いなく外敵も襲い来り国家は致命的な傷を負いかねない。

古今東西に通じる、歴史の法則です。

一見盤石そうなリョザ神王国でしたが、真王と大公の断絶は実に根深い問題となっているらしい。

で、その一端を担っていると思われるのが、

イケメンボイスだけど時として非常に胡散臭い石田彰ことダミヤ


です。
このダミヤの思惑がまた読みにくい。今回も医師団を派遣したのが城、そして花を贈りました。
見舞いの花……だそうですが大公の長男シュナンにとっては逆に真王達の脳天気さを見せつけられる思いで、怒りの表情を顕にしていました。

しかしダミヤほど小賢しく胡散臭そうな顔をした男が、その程度の気遣いが出来ないとは思えません。

これは確信犯ではないのか?

医師団を戦地には派遣させず、戦の役にも立たない花などを送って大公軍を挑発しようとしているのではないか?

この推察に加え、今回決定的な分裂を起こしたシュナンとヌガンを見るとダミヤの企みの一端も垣間見えるのではないでしょうか。
以前からダミヤはヌガンにモーションを掛けていました(ノンケ的な意味で)
今までは真王に逆らわないようにしているだけにしか見えなかったので、その意図が今イチハッキリしなかった。
シュナンだってセイミヤとフラグ立ててましたし。

しかし、現大公やシュナン達を焚き付け暴発させたところをヌガンに討たせれば、真王側は一気に有利となるでしょう。ヌガンは真王とダミヤに心酔している上に、父親と仲が悪い
そして力はあっても短慮で思い込みが激しい傾向が見られます。
自意識の強いシュナンや現大公よりも操りやすいと目されるのですね。
ダミヤはそれを狙っているんじゃないかとという気がします。

あとはサイガムルとの関係性ですが……シュナン達とてサイガムルとは手を組まないでしょう。
彼らは前真王を暗殺しましたが、シュナンとしては争いは本意でない。
加えてセイミヤフラグから、彼女を傷付けるような真似はしないと言えます。

ヌガンに至っては益々関係なさそうですが……彼の場合「父親と兄がサイガムルと通じている」なんて事を信じてしまいそうです。ここら辺は結構重要になってくるんじゃないでしょうか。

また、エリンの存在も両陣営にとって非常に大切です。
真王側にとっては王獣を自由に使える少女は、非公式にかくまえば闘蛇軍に対抗する決定的な秘密兵器足り得ますし、大公側にとっては真王にしか扱えないはずの獣を操る少女は公表するだけで真王の権威を崩壊させる事が出来ます。もちろん戦いになっても闘蛇&王獣が揃えば無敵。
エリンは「くだらない」と吐き捨てるでしょうが、それでも絶対的な権力者たちが彼女を見過ごすはずもない。


まさに傾国の少女となったエリンの運命や如何に


個人的にはシュナンとセイミヤがゴールインして一つの統治国となるのが政治的な帰結だと考えているのですが、どうなるか。さて、政治的な話が中心になりましたが今回も演出がキレキレでした。
舞い散る赤い葉っぱには何か意味があるのかなと思っていたら、やはり真王領の白い花びらと対応しているのですね。
真王領民が無垢な白い花びらの元で祭りに耽っている間、大公領民は傷付き苦しみ、血のような赤い葉っぱの元で戦いに明け暮れている。
そしてシュナンとヌガンの植えた赤い葉の木が二手に分かれ、兄妹の決闘に敗北したヌガンがその木を斬り倒すと川に流れていた二つの赤い葉っぱが別れていく

二重三重の暗喩が物語の味わいを一層深くしてくれます。
そこがまたこの作品の魅力でもあるし、小説だけではなかなか表現しきれない描き方ですね。

さて、来週はヌック&モック無双の予感。

どんなドタバタ劇が繰り広げられるのか楽しみです。
そういや、エリン&トムラフラグも順調でしたね。
イアルが本命っぽいけど、どうなんだろ。