雷電本紀が面白すぎて困る | リュウセイグン

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雷電本紀 (小学館文庫)/飯嶋 和一
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『雷電本紀』を読み始めたばっかりなんだが、既にして名作と呼ぶに足りる風格を漂わせている。
これは伝説的な力士雷電爲右エ門 の生涯を書いた時代小説である。
私としても相撲史上に残る有名な力士としか知らなかったが、いやはやここまで面白いキャラクターだとは思わなかった。


いや、史実のみで言えばどういう人物であったのかは分からない。


しかし飯嶋和一は雷電に単に強いというだけではなく当時の世相を反映させて、雷電が一体どういうものを背負って土俵に立っていたのかまでをも書いてしまうのである。
マイク・タイソンとモハメド・アリのどちらが強いかは異論が分かたれるかもしれないが、ボクサーとしてスポーツマンとして人間としてどちらが偉大と称されるかといえば恐らくは後者であろう。
この書での雷電はまさに日本に於けるモハメド・アリの如く当時の抑圧された民衆の希望を担い、権力による横暴を象徴的にうち崩す存在として書かれているのである。
嘘かもしれぬ、というより多分嘘だろう。


だがそこに込められた飯嶋和一自身の魂は本物だ。


だからここに出てくる漢は、みな異様に格好良い。
雷電だけではなく彼の導き役とも言える日盛や谷風、逆に雷電に導かれていく者、そして谷町として共に歩むものまでが素晴らしく男前なんである。まだ三分の一くらいなのに、一々目頭を熱くしてくれる。

いやぁ、こういう作品を読むと本当に頭が下がる。

今まで読んでいない作者ともなれば、私にとっては金鉱を発掘したに等しい喜びだ。