【タロット小説】 〜Ⅳ 皇帝 〜
「すみません」わたしの背後上の方から少し低めの柔らかい声がした「ん?」と思った次の瞬間わたしの腰にすっと両手が添えられたわたしの体に触っているその手のひらと五本の指の力加減がとてもソフトでしかもいやらしさを感じさせずけれどしっかりとわたしの体を支えていた…そしてわたしの体をそっと左側に寄せたあまりにもさりげない紳士的な彼の行動に違和感なく従うわたし左に寄せたわたしの横を彼はすっと横切っていったほんの一瞬の出来事だった「ドアが閉まります ご注意下さい」車内アナウンスを聞きながら見送るその男の背中180cm以上はあるか長身で細身髪はやや長めの金髪柄のシャツを着ていて履き込んだジーンズ姿背筋が伸びていて姿勢が良かったので後ろ姿だけでもかなりカッコいい彼は柔らかい風をまといそのまま改札に向かう階段を降りていった残念ながら顔までは見れなかった気づかずに出入り口に立ちはだかってしまい仕事のメールに没頭してしまっていたわたし普通なら今の時代これは痴漢まがい安易にちょっとしたことでも犯罪と化すなんとも不自由なガチガチのこの時代にあのスマートな身のこなし嫌味もなくとても女性の扱いに慣れている風な仕草だったもしかしたらホストかかなり女性慣れしている仕事かだとしても嫌じゃなかったああいい感じだな素直にそう思った去年の夏の出来事