原点回帰 | サイタマ無頼

サイタマ無頼

【中年サラリーマンの週末自転車モノローグ】


サイタマ無頼


原点回帰・・だって?


やっとの思いで到達点にたどり着いておきながら、そこを原点と錯覚する悪癖。

30年かそこいら、ずっと進歩していない。


原点は原点、到達点は到達点。

この認識をしっかり持たなければ、いつまでも、何十回でも、同じところをグルグルまわり続けるだけだ。

物事は前へ進まず、あるべき成熟から遠ざかる。



久しぶりに東京ヒルクライム成木ステージのコースを上る。

毎回のことだが、喉は嗄れ、皮膚は痺れ、脚は棒になる。

途中、背後から「こんちは!」の爽やかな掛け声とともに、青年が軽やかなダンシングで走り去って行った。

萎えそうになるのを堪えるだけで必死な私は、もはや追いすがる気も起こらない。

身体には鉛が詰まっている。


今日は、

登坂中に脳内でループする音楽もなく、瀬音と蝉の声だけが響き続けた。

ゴール地点で仰向けになれば、雲間に洩れる陽射しをひんやりと澄んだ風が運んでくる姿が見えた。



ここは小さな到達点なのだ。

自転車趣味の原点などではない。

原点はもっと甘々しく快適な快感体験にあったはずだ。

幼い好奇心の充足に根ざしていたはずだ。


我ながら、思いあがりも甚だしい。


自分に厳しく、現実を受け容れる必要がある。

自分に優しく、進歩を認めてやる必要がある。



いつになく静かに、疲労した。