「STAR DRIVER 輝きのタクト」二次BL小説です。

今回からいよいよリョウスケ×ヘッド編に突入です。


スガタクあるいはタクスガファンの方はもう暫くお待ちください。

スガタ×タクト小説をご覧になりたい方は第一話~第十三話を

ヘッド×スガタ小説をご覧になりたい方は第十四話~第二十三話をどうぞ。


R18の作品に関しましては18歳未満の方の立ち入りは禁止しておりますので

くれぐれも入室にはご注意ください。


尚、ヘッド×スガタ編ではヘッドの名前の表記はミヤビ・レイジとなっておりましたが

リョウスケ×ヘッド編ではリョウスケ視点となりますので

ツナシ・トキオとさせていただくことをご了承ください。



「銀河美少年」 第二十四話 遺された肖像画編


「いないのか?」

 久しぶりにミヤビ・レイジの部屋を訪れたカタシロ・リョウスケはいつものように声をかけた。だが部屋の主からは一向に返事がなかった。

左目を黒い眼帯で隠したリョウスケは長身で見るからに異質な存在感を放っていた。だが彼の表の顔は南十字学園の理事長代行である。学園の理事長であるレイジの下に彼が度々訪れることはそう珍しいことではなかった。

留守なのかと訝しげに部屋の中を歩き出したリョウスケは思いがけない光景に目を見張った。部屋の中にはカンバスを立て掛けたイーゼルが数えきれないほど並べられていた。

「これは・・・?」

 カンバスの前に立ったリョウスケは愕然となった。そこに描かれていたのは一人の少年の眩しいまでの美しい肖像画であった。それは服を纏った普通の肖像画だけではなかった。肌も露わに悩ましい姿態を晒した少年の裸体が目に飛び込んできて、リョウスケは驚愕に目を見開いたままだった。

「これはまさか・・・シンドウ・スガタ・・・?」

 見覚えのある肖像画の顔にリョウスケは思わずその名を口にした。普段の彼からはとても想像も出来ないほど匂い立つような美しさがそこには描かれていた。リョウスケは一瞬にしてその絵に目を奪われていた。かつて同じような光景を目にしたことを思い出して、リョウスケの背中に戦慄が走った。

レイジ・・・いやヘッドが綺羅星十字団、第二隊バニシングエージ代表の座から退いて暫く休養するとは聞いていたが、まさかシンドウ・スガタの絵を描いているとは思いもよらないことであった。何よりも長い間絵筆を握ることさえしていなかった彼が再び絵を描き始めたことに驚きを隠せなかった。

 一体いつのまにこんな絵を・・・?

 リョウスケは幻でも見ているのかと、思わず部屋の中を見渡した。

「・・・?」

 大きな鳥籠のような丸い檻の中には鎖が付いた首輪と手枷が無造作に置かれていた。それを見たリョウスケは途端に眉を顰めた。

「なんだ・・・誰かと思えば・・・」

 背後から聞き覚えのある声が聞こえてリョウスケは思わず振り返った。

「トキオ・・・?」

 トキオと呼ばれて気怠そうにベッドから躯を起こしたレイジはリョウスケの姿を目にすると不機嫌そうに溜息を漏らした。

 ミヤビ・レイジという名は画家としての雅号に過ぎない。公ではミヤビ・レイジと名乗っているが、リョウスケにとっての彼は今でも本名であるツナシ・トキオでしかなかった。

「寝ていたのか?」

「オレが眠れないことくらい知っているだろう?」

「ああ・・・そうだったな。」

 あの日以来トキオは眠れない体になっていた。それはシルシを手に入れた代償といってもよかった。戦士のシルシを譲り受けた者はその強い力を得た代わりに眠ることが出来なくなるらしい。それはシルシの持つ力に呪われているといっても可笑しくなかった。

「休養するとは聞いていたが、まさか絵を描いていたとは思わなかったよ。しかもこの絵のモデルは・・・シンドウ・スガタか?」

「ふふっ・・・彼に会ったら眠っていた創作意欲が呼び覚まされてね・・・何だか急に描きたい衝動に駆られた。彼は実に綺麗で魅力的だ。あの美しさは永遠に遺す価値がある。そうは思わないか?」

 トキオの言葉にリョウスケは眉間に深く皺を寄せた。

 ソラ・・・

 リョウスケはかつての自分の婚約者ソラのことを思い出さずにはいられなかった。あのときもトキオは同じことを自分に言ったのだ。

トキオにとってソラはカンバスに描く絵の対象でしかなかったのか?やはりおまえは本当にソラのことを愛していなかったのか?

そんなことを今更言ってもどうすることも出来ないのはわかっていた。悪いのはトキオだけではない。自分にも非があった。トキオを責める資格は自分にはないのだ。

「それで・・・彼はどうした?ここにはいないのか?」

 部屋の中にシンドウ・スガタがいないことを気にしたリョウスケにトキオは自嘲的に笑みを浮かべてみせた。

「彼はもういない。ここを出て行ってしまったよ。」

 寂しそうに言葉を漏らしたトキオにリョウスケは小さな溜息を漏らした。

「そうか・・・また大切なものがおまえの手からすり抜けていってしまったか・・・」

「彼もまた最初から自由だった。」

「・・・」

 リョウスケはトキオの下を離れて島から去ったソラのことやサカナちゃんと呼ばれていた気多の巫女のことを思い出して複雑な思いに駆られていた。お互い好き合っていたはずなのにそれを手放してしまうトキオの勝手さにやりきれない思いが残るばかりだった。シンドウ・スガタもまたそうして同じようにトキオの下から離れていったのかと思うと半ば呆れるしかなかった。

あの頃トキオはソラではなく、この島に眠る地下遺跡に心を奪われていた。何処で情報を手に入れたのか彼は島の地下で発見されたオリハルコン素体を復活させようとしている秘密結社の存在を知っていた。

 トキオが描く世界・・・それは現実の世界にあって、オレには決して気付けない美しさを的確に結晶化させていた。そんな絵を描くトキオが地下遺跡に執着していることがオレには奇妙に思えた。彼はオリハルコン素体の共生能力者になりたがっていた。だがそれは望んだからといってなれるものではない。

トキオはシルシを持つ家系に生まれながらそのシルシを父親から譲られることはなかった。それゆえ彼はシルシに執念とも言える強い思いを抱いていた。皮肉なものだ。自分にとってシルシは邪魔な存在でしかなかった。シルシを持っているが為に見たくもないものまで見えてしまう現実から逃げることが出来なかった。オレには見えていた。トキオとソラがやがて惹かれ合い愛し合う姿を・・・そんな二人の関係を見ていたくなかった。そして見ないようにとしていたらこの目は見えなくなった。オレの左目はいつしか光を失っていた。そうすることでしかオレは逃げられなかった。

そしてどうやって見つけたのかトキオはシルシを持った少年マキバ・シンゴを手に入れていた。いつのまにかその少年からシルシを譲ってもらうという約束までしていた。彼のその手腕にはただ驚くしかなかった。マキバ・シンゴという少年もまたトキオの野心の一つに過ぎなかった。だがオレには彼を止められなかった。

彼が欲しいのは胸のシルシだった。特別な力を手に入れることが彼にとっての夢であった。そうやって彼は一歩ずつ夢に近づいているかのように思われた。だが彼の願いはそう容易く手に入れられるものではなかった。

「眠りに落ちてしまった。オレにシルシをくれると約束していたのに・・・シンゴは深い眠りの中に逃げてしまった。」

トキオとの約束を果たさないまま、マキバ・シンゴはある日突然深い眠りに落ちてしまった。深い眠りから覚めないシンゴを前にして、トキオの落胆は大きかった。いつも強気なまでに自信に満ち溢れたトキオがあれほどまでに嘆き悲しむ姿を見たのは後にも先にもあれが初めてだった。

だがトキオは彼が眠りに落ちてしまったことを悲しんでいたわけではなかった。彼から胸のシルシを譲ってもらえなくなったことに失望していたのだ。何故それほどまでにシルシに執着するのか・・・

「オレのシルシをおまえにやろう。こんな力、オレには必要ない。」

 オレは躊躇うこともなくトキオにシルシを譲る決意をした。絶望に打ちひしがれるトキオを見ていられなかった。シルシなど自分にはもう必要ないものだった。それならシルシを欲しがっている者に譲ればいい。シルシを譲る者と譲られる者・・・ただそれだけだ。

 リョウスケはシンゴが眠るベッドの上でトキオの胸に手を翳した。途端に眩い光がリョウスケの掌から溢れ出してトキオの胸に輝きだした。

病室の中は瞬く間に閃光に包まれていた。その光がトキオの運命を狂わせることになろうとはそのときリョウスケはまだ気付いていなかった。




第二十五話に続く




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