前回告知した「STAR DRIVER 輝きのタクト」
BL二次小説「スガタ×タクト」です
「銀河美少年」 第一話 海辺編
ここは日本の南方に浮かぶ緑豊かな島、南十字島。
僕はこの島にやってきた。何かスゴイことが起こる予感に胸をときめかせながら・・・
この島の学校『南十字学園高等部』に入学したツナシ・タクトは新しい生活にもすっかり馴染んでいた。明るく元気なタクトはすぐに友達も出来て、楽しい日々を過ごしていた。
青い海、青い空・・・タクトはまさに青春を謳歌していた。
タクトはこの海辺の美しい景色に魅せられ、一人で時々ここにやってきては静かに海を眺めていた。
すると遠くから砂浜を踏みしめてくる静かな足音が聞こえてきた。海辺で腰を下ろしていたタクトがふと顔を上げると、見覚えのある人影が自分に近づいてきた。
「タクト。」
突然名前を呼ばれてタクトは目を円くさせた。そこに立っていたのはクラスメイトのシンドウ・スガタであった。
スガタはこの南十字島の名家シンドウ家の跡継ぎで古武術の使い手でもある上に容姿端麗で知性的、学園でも人気の憧れの的だ。そんな彼が一人で海辺を歩いているのが何だか不思議だった。
「スガタ・・・どうしてここへ・・・?」
「うん。きみがここにいるような気がしたから・・・」
「え・・・?」
スガタはにっこりと微笑むとタクトのすぐ傍に立った。
「きみは誰かと待ち合わせ?」
そんなことを尋ねられてタクトはかっと顔を赤らめた。
「ち、違うよ。僕は一人で海を眺めていただけで・・・」
「そう・・・じゃ、きみの隣に座ってもいい?」
タクトが恥ずかしそうに頷くとスガタはタクトの隣に腰を下ろした。あまりにも距離が近くて、タクトは驚いてスガタを見た。
うわっ・・・ちかっ・・・スガタの顔・・・すごく整って・・・綺麗だ・・・それに何だかいい匂いがする。
タクトはこんなに近くでスガタを見るのは初めてのような気がした。傍にいるだけで何故か胸がドキドキするのを感じて恥ずかしかった。
「どうしたの?タクト・・・僕の顔に何か付いている?」
「あっ・・・いや・・・その・・・綺麗な顔だなあって思って・・・」
慌てて答えるタクトにスガタはくすっと笑みを浮かべた。
「ふふ・・・きみの方がずっと綺麗だよ。タクト・・・初めてきみを見たときからなんて綺麗な子だろうって、ずっと思っていた。」
「ええっ?!」
スガタの言葉に驚いてタクトは思わずひっくり返りそうになった。
「嘘だろう?僕、男だし・・・女の子じゃあるまいし・・・」
「僕だって男だよ。タクト・・・」
スガタに見つめられて、タクトはかっと顔を真っ赤にさせた。
「あっ・・・ごめん。そんな意味じゃなくて・・・その・・・」
「そんな意味じゃないって・・・どういう意味?」
恥ずかしくてタクトはスガタから思わず顔を逸らした。
「いや・・・きみは学園でもすごく女子たちからも人気があるし・・・なんていうか男の僕から見てもかっこいいし・・・」
「ありがとう。タクト・・・きみにそう言われると嬉しいよ。でもきみの方がずっと人気者だよ。」
スガタに嬉しそうに微笑まれて、タクトは困ったように苦笑した。そんなタクトにスガタはおもむろに話し始めた。
「ここに来るとね・・・きみがこの海辺に流れ着いて倒れていたときのことを思い出す。」
スガタの言葉にタクトも懐かしそうにそのことを思い出していた。フェリーの最終に乗り遅れたタクトは入学式に間に合わなくなると焦って、本土から泳いで渡ろうとした。でもそれはあまりにも無謀なことだった。タクトは波に飲まれて流されて、この海辺に打ち上げられたのだ。
「ワコがきみを見つけたときは本当に驚いたよ。きみが生きていてよかった。」
「あのときはきみにも迷惑をかけたね。」
「きみを助けたのはワコだ。僕はただきみを見ていただけだよ。」
スガタがタクトの顔をそっと覗き込んだ。スガタに真っ直ぐ見つめられてタクトはぽっと顔を赤らめた。
どうしよう・・・やばい。なんかドキドキしてきた。
「ごめん。オレ、急に用事思い出しちゃった。」
タクトは急いで腰を上げて立ち上がった。
「・・・?」
するとタクトの右手はいつのまにかスガタの手にしっかりと握られていた。
「僕と一緒にいるのは嫌・・・?」
スガタの何処か寂しそうな声が静かな海辺に響いた。
「あ・・・そんなことは・・・」
「だったらもう少し僕と一緒にいてくれないか?」
「え・・・?」
「きみともっと話がしたい。」
スガタに手をぎゅっと強く握られて、タクトはその手を離すことが出来なかった。仕方なさそうにタクトはスガタの隣にもう一度腰を下ろした。それを見て、スガタはほっと安堵の笑みを零した。
「ありがとう。タクト・・・きみ、やさしいね。」
タクトは困ったように笑うしかなかった。こんなふうに二人きりで話すことは今まであまりなかったのだ。いつもはワコや演劇部の連中と一緒にいることが多くて、正直スガタと何を話していいのかわからなかった。
「きみはワコのこと、どう思っている?」
スガタにそう尋ねられてタクトは困惑した。ワコはスガタの許婚だ。それは島の誰もが公認していると言ってもよかった。やはりスガタはワコのことを好きなのかと思うと何だか胸が締め付けられた。
「ワコは・・・その・・・可愛いし・・・好きだよ。」
「ふうん・・・それだけ?」
「それだけって・・・?」
「ワコを自分のものにしたいのかって聞いている。」
「そんなの・・・まだわからないよ。僕たちまだ出会ったばっかりだし・・・それにきみだってワコの許婚でワコのこと・・・」
いつのまにかスガタの顔がタクトに触れそうなくらいすぐ傍にあった。海のように吸い込まれそうなスガタの瞳に見つめられて、タクトは躯を強張らせた。
「まだわからない・・・?」
「・・・?」
「僕が興味あるのは・・・タクト・・・きみだよ。」
タクトは金縛りにでもあったかのように目を見開いたまま身動き出来なかった。その刹那、スガタの唇がタクトの唇にそっと重なった。
「・・・?!」
生温かな感触がタクトの唇を熱くさせた。それは初めての体験だった。
「あっ・・・」
一瞬何が起こったのかわからず言葉を失ったタクトだった。だがスガタが自分にキスをしたのだとわかって、途端にタクトはパニックを起こした。
「なっ・・・今・・・キ・・・」
「ガラスのないガラス越しのキス・・・嫌だった?」
「嫌も何も・・・僕たち男同士で・・・」
タクトはかっと顔を真っ赤にさせた。顔から火が出そうなほどタクトは顔が熱くなった。まさかスガタにキスされるとは思いもしないことだった。
「ご、ごめん。やっぱり帰る。」
慌ててタクトは立ち上がると、スガタの前から一目散に走り去った。そんなタクトの走っていく後ろ姿をスガタは黙って見送っていた。
海からそよぐ風がスガタの髪を撫でるように靡かせて通り過ぎた。スガタはふと笑みを零すと、そっと指先で唇に触れてみた。
タクト・・・きみの唇・・・柔らかかった・・・
そのとき薄暗い夜空に光った一筋の流れ星が海の向こうにきらりと消えた。
夕日が海に沈んで茜色に染まった空は深い夕闇へと色を変えた。代わりに西の空に浮かんだ白い弦月は碧い海にその姿を映して揺らめいていた。
第二話に続く
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