小屋にあるモノ・・・ | ムーンスピリッツ

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白井照菜の徒然なるままに・・・

残暑お見舞い申し上げます。

 

夏の終わりが近づくなか、まだまだ暑い日が続くので、晩夏の怪談でひとときの「涼」を感じていただければと。

 

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これは、友人が若気の至りで女の子とデートをした時の話。

 

その日は付き合い始めたばかりの彼女を連れて、深夜のドライブをしていたそうです。

 

彼は、二人の距離を一気に詰めるべく

 

「ねえ、これから〇〇池に行ってみない?」

 

と彼女に提案。

 

「え~、どうしようかな~。」

 

「今日は天気もいいし、池まで行けば空も綺麗に見えるしさ!」

 

と悩む彼女に畳み掛ける彼。

 

「でも~」

 

と悩む彼女。

 

「そこって小さな小屋があるんだけど、そこ鍵がかかってないんだよね。」

 

と彼が追撃。

 

「え~。〇〇くんなんか変なこと考えてない?」

 

と彼女の返し。

 

でも彼女の目はそれほど嫌がっていなかったそうで

 

「星空の元で、池のほとりの小屋でって・・・なんかロマンチックじゃない?」

 

彼のこの一言がどこまで決め手になったかわからないですが、彼女は池に行くことを了承。

 

二人を乗せた車は、山の中腹にある池に向かったそうです。

 

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「うわ~、素敵!」

 

空には満天の星空。その日は風も吹いていなかったこともあり凪いだ水面にも星空が映し出されていたそうです。

 

彼は心の中で

 

「よし!今日は行ける!!」

 

とガッツポーズを取ったとか。

 

「どう、来てよかっただろう?」

 

「うん!」

 

彼女はかなりご満悦。

 

「ほら、例の小屋ってあそこなんだけど、行ってみない?」

 

と彼が小屋を指差す。

 

「うん、行ってみよっか。」

 

彼女はウキウキして、そう二つ返事!

 

「間違いない、今日は決められる!」

 

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小屋のノブに手をかけると難なく開く扉。

 

中の広さは三畳くらい。

 

小さな小窓が一つあるだけで電気も通ってない様子。

 

「真っ暗だね。」

 

彼女がそうポツリ。

 

確かに小窓の下一畳ほどは星あかりが入って多少見えるのだが、扉の左側奥の方は真っ暗で何も見えない。

 

彼は焦りを感じたか

 

「じゃあさ、小窓のほうで乾杯しようよう!」

 

コンビニで買ってきた飲み物やお菓子を広げる彼。

 

彼が窓の下に陣取り、その前に彼女が座る。

 

「じゃ、キミの瞳に乾杯!」

 

と彼が言ったかどうかはさておいて、宴会を始める二人。

 

しばらく飲み食いしながら、他愛もない話で盛り上がる二人。

 

やがて二人は徐々に距離を詰め始め、気付けば肩がふれあう距離に並んでいたそうです。

 

どちらから求めたのか・・・唇を重ねる二人。

 

小窓から漏れ入る星明かりが、求め合う二人を照らしている。

 

当然横になるにつれ、二人は「暗がり」の奥へと倒れ込んでいく。

 

「冷たい!」

 

彼女を優しく横にして、いざこれからという時、彼女の一言。

 

彼は気にせず、彼女に覆いかぶさろうとするが、

 

「ねえ、何かが手に当たった!」

 

「え、気のせいじゃない?」

 

と彼は彼女の気が散らないよう、雰囲気を作りながらやんわりといなそうとする。

 

「違うよ!なんか冷たいものが触ったの!」

 

と彼女の気分は一気に冷めた様子。

 

「ここの奴ら、魚でも置いてったのか?!」

 

などと心中で怒りを持ちながら、ポケットからライターを出し必死に火をつけ用とする彼。

 

しかしイラついているせいか、なかなか火がつかない。

 

「ねえ、何がいたの?」

 

と彼女はとっとと小窓の星明かりの下に移動。

 

「ぜって~、池の中に放り込んでやる!」

 

そんなことを心に決めた時に火がついた。

 

「っっっ!」

 

と息を飲む彼。

 

「ねえ、どうした・・・っ!」

 

と彼女も息を飲む。

 

彼が灯したライターの日に照らされていたのは、人の手。

 

そしてライターを持ってゆっくり奥を照らす彼の下には、青白い顔の横たわる二人の人間。

 

「・・・・!」

 

悲鳴をあげているのだろう彼女だったが、声は出ず脱兎の如く扉から出て行く。

 

その時やっと我に帰った彼も、後を追って小屋を後にする。

 

車に着くと彼女が助手席のドアをガチャガチャしながら

 

「ねえ、早く開けてよ!こんなとこ早く離れるわよ!」

 

「あ・・・ああ。」

 

車のロックを外し、滑り込むように乗り込む二人。

 

エンジンをかけ、一目散に池を後にしたそうです。

 

翌日ニュースにでもなるかと思っていたら、そんなニュースが流されることもなく、彼はしばらく悶々としつつ、2度とあの池には近づかないと心に決めたのだそうです。

 

果たして横たわっていた人たちは一体・・・?!