ムーンスピリッツ

ムーンスピリッツ

白井照菜の徒然なるままに・・・

 

 

3時間目の英語の授業が始まった。

 

昼休みまであと1時間。

 

絶妙に気だるい時間。

 

授業も上の空・・・とまではいかないが、

 

「ちょっと集中出来ないな・・・」

 

なんて感じながら、視線を校庭へ。

 

校庭では男子生徒たちが、体育の授業で野球をしている。

 

騒々しいくらいに鳴くセミたちは、さながら観客といった感じ。

 

そして、私の集中はここから校庭に注がれる。

 

多くの男子生徒の中で、ある人物を追うことで・・・・・。

 

その人物は、バットを持って打席についていた。

 

ピッチャーが振りかぶりボールを投げる。

 

ブンっと力強く振られたバットは、大きく空を切る。

 

「ハッ!」

 

と息を飲んでしまう私。

 

授業そっちのけでハラハラしてしまうのは、打席に立っている人物が私の大好きな彼だから。

 

でも、言葉も交わしたこともないし、もちろん告白もしていない。

 

すれ違うと、私が目を逸らす。

 

でも、この心の中では「大好き!」と叫んでいる。

 

そんな片想い中の彼の姿を、見逃すことはできない私。

 

と、2球目が投げられる。

 

「ストライク!」

 

2球目もまた空振り。

 

私のハラハラ感も上昇する。

 

 

先生が何か話しているが、私の耳には入らない。

 

バレない様に顔は黒板の方に向けているが、私の視線は窓の外を注視している。

 

鉛筆も持っているが、ノートにはメモすらなく書いたふり。

 

チラッと先生を盗み見るけど、先生は気づいていない様子。

 

その時、ピッチャーが振りかぶって3球目が投げられる!

 

ビュン!と言う音が聞こえそうな早い球。

 

「!!!」

 

心で祈る私。

 

 

彼は思いっきりバットを振る。

 

カキーン!!

 

と軽快な音が校庭に響き、打球は空に吸い込まれる様に高くあがり、遠くへ飛んでいく。

 

「ホームランだ!」

 

 

私は鉛筆を取り落として、思わず手を叩きそうになる。

 

「しまった!」

 

視線を先生に向けると、チラッと見た先生と視線が合う。

 

ドキドキする心臓の鼓動を抑えながら、なんでもない様にノートをとるふりをする。

 

先生は

 

「集中しなさい!」

 

と言わんばかりの一瞥をしたあと、背を向け教壇の方へ移動していく。

 

ホッと一息ついて、再び校庭へ視線を向ける。

 

校庭では彼がクラスメイトから手洗い歓迎を受けていた。

 

「やったね!」

 

私は心で拍手をする。

 

******

 

いつか話せたらいいのに。

 

いつか恋人になってくれたらいいのに。

 

私の夢は叶わないのかな。

 

心に小さな痛みが走る。

 

そんな私の癒す様に、窓から吹き込んだ優しい夏風が私を包み込む。

 

窓の外に視線を向けると、真っ青な青空と大きな雲が浮かんでいた。