全色盲の青年がいました。
彼は生まれてこの方
灰色と黒以外の色を知らずに育ってきました。
そのような境遇でありながら
彼の職業は建造物に絵を描く仕事です。
その才能は国中の人々が認めており
彼が手掛けた建造物はたちまち繁盛し
今や我も我もと引く手数多となる程です。
彼はどのような絵を描くのでしょう?
世界は2つの色で成り立っている彼ですが
彼の描いた作品とは思えない程
とても鮮やかな世界で描かれていました。
引き込まれるような色づかいに
国中の皆が見とれてしまうほどの
美しい女性が描かれています。
不思議に思った者がその青年に聞きました。
「あなたの世界は2色しか見えないのに
どうしてそんな美しい絵が描けるの?」と。
彼は答えました。
「私の“大切な女性”が色を教えてくれたのです。」と。
今までを考えると彼はいつも同じ配色の
パレットを使っていました。
そうか、その配色通りに色を重ねているのかと人々は納得し
もう一つ質問をしました。
「その方と結婚はなさらないの?」
彼は答えました。
「そうですね。」
少し困ったような顔で答えました。
それを聞いてこの人は仕事に生きる人なのだと思い
そこから何も聞きませんでした。
真面目で誠実で勤勉な彼なので
近寄ってくる女性も多くいました。
しかし彼は全てを丁寧にお断りし
“大切な女性”と共に生きる決意をしていました。
そこまで陶酔させる程の女性はどのような人なのでしょう?
“大切な女性”は今も彼の傍で寄り添っています。
周りの人々には見えていません。
彼だけが彼女の存在を認識できるのです。
この2つの色の世界に突然舞い降りた
鮮やかな彼女に彼は心を奪われました。
いつも建造物に描いている美しい女性は
“大切な女性”だったのです。
これからもずっと
彼はその女性と寄り添い生涯を終えるのでした。
来世では夫婦になることを夢見ながら…
