次に火神が目を覚ましたのは、夕方だった。
目を覚ましたというより、さっきから何度も鳴らされているインターフォンの音に『起こされた』 と言った方が正しいだろう。
「誰だよ・・・」
火神はよっこらせ、と重い身体を起こし、壁づたいに玄関まで向かいドアを開けた。 するとそこにいたのは、相変わらず仏頂面をした緑間真太郎だった。
「・・・み、緑間?」
「見舞いに来てやったのだよ」
予想もしていなかった人物の訪問に驚く火神をよそに、 緑間は一言そう言うと我が物顔で部屋に上り込んで来た。
何が何だか分からない。
どうして秀徳の緑間がここに現れたのだろうか。
「いつまでそこで突っ立ってるつもりだ。早く来るのだよ」
取り敢えず色々考えるのは後にして、火神は緑間の指示に従う事にした。 来た時と同じように壁づたいに緑間の方へ歩いて行くと、 「寝室はどこなのだよ」 と訊かれたので、こっちだと寝室へと素直に案内する。
寝室に何か用でもあるのか?と思いながら、緑間の次の行動を立ったまま観察していると 「何をやっている。さっさと寝るのだよっ」 と、今度は何故かイライラした様子の緑間に指示され、 何でコイツはさっきから上から目線なんだ、と思いながらも火神はベッドに横になる。
「・・・何でお前がここにいるんだよ」
少し落ち着いたところで、改めて緑間に訊ねると 「さっきも言っただろう。見舞いに来てやった、と」 緑間はそう言うと、火神を見下ろした。
見舞いに来たのなら、もう少し気を遣った言葉や態度をとってもいいと思うのだが、 今の緑間はしかめっ面で、自ら進んで火神の見舞いに来た訳ではないのが分かる。
「何でお前が見舞いに来るんだよ。つか、何で知ってんだ?オレが風邪ひいたって」
「お前が風邪をひいたと黒子からメールがあったのだよ。それで、自分は用があって見舞いに行けないから代わりに行って欲しいと頼まれた」
緑間は不本意そうな表情をして、きっちりとテーピングされた長い指で眼鏡のブリッジを上げた。
よりにもよってどうして緑間だったのだろうか。黒子の人選に疑問が浮かぶ。 それに緑間も緑間だ。断る事も出来た筈なのに、どうして素直に従ったのだろうか。
「・・・ところで、具合はどうなのだよ」
訊かれて目線を声のする方へ向けると、直ぐ近くで緑色の瞳と目が合った。
(・・・よく見るとコイツ、キレーな顔してんだな。睫毛とかふさふさじゃん)
熱で頭がぼーっとする中、火神は無意識に緑間の顔を見つめ、緑間は自分を見つめてくる火神の普段見せないトロンとした目つきに一瞬だが息を飲んだ。
「あんまよくねぇ・・・」
熱も下がっている気がしないし、相変わらず頭痛も酷い。 支えなしで歩くのが困難な程身体もダルくて仕方ない。
火神が正直にそう告げると、スッと緑間の手が伸びて来て、その大きな掌がそっと火神の額に触れた。
ひんやりとした掌にホッと溜息が漏れる。
「・・・熱いな。ちゃんと薬を飲んだのか?」
「飲んでねぇ・・・。買い置きとかしてねー し・・・」
弱々しく答えるとフッと緑間が口角を上げた。 バカにした笑い方だ。
「大方、風邪なんて自分には無縁だとか思っていたんだろう。バカめ」
図星を指された火神は何も言えなくなる。 悔しくて言い返したいところだが、生憎と今はその気力を持ち合わせていない。
「おい、キッチンを借りるぞ」
そう言って寝室を出て行こうとする緑間を呼び止め、どうしてキッチンへ行く必要があるのかと問いかけると、
「その状態からして、朝から何も食べていないんだろう?空きっ腹で薬を飲むのは避けた方がいいから、俺が何か作ってきてやる。感謝するのだよ」
緑間はそう言う。
火神は「薬なんて……」 ない、と続けたかったが「俺が持っているのだよ」と、緑間に遮られてしまった。
「買ってきてくれたのか…?」
自分のために緑間がそこまでしてくれるなんて、驚きだ。 緑間にも人並みの優しさはあるようだ。
そんな風に緑間の事を見直していると
「か、勘違いをするな!風邪薬は今日のラッキーアイテムで、たまたま持っていただけなのだよっ!」
ほんのりと頬と耳を赤くした緑間が慌てて弁解し、火神から逃げるように寝室から出て行ってしまった。
「…誤魔化せてねぇし」
火神はそう呟いて頬を綻ばせた。
そう言えば緑間が何か料理を作ってくれるみたいだが、彼の料理の腕前はどうなのだろう。
見た目通り器用に作ってみせるのか、器用に見せかけて実はリコのようなとても料理とは言えない代物を作ってみせるのか。
ドアの向こうから聞こえてくる緑間の気配に「… 楽しみだな」と火神は微笑んで、うとうとし始めた。
目を覚ましたというより、さっきから何度も鳴らされているインターフォンの音に『起こされた』 と言った方が正しいだろう。
「誰だよ・・・」
火神はよっこらせ、と重い身体を起こし、壁づたいに玄関まで向かいドアを開けた。 するとそこにいたのは、相変わらず仏頂面をした緑間真太郎だった。
「・・・み、緑間?」
「見舞いに来てやったのだよ」
予想もしていなかった人物の訪問に驚く火神をよそに、 緑間は一言そう言うと我が物顔で部屋に上り込んで来た。
何が何だか分からない。
どうして秀徳の緑間がここに現れたのだろうか。
「いつまでそこで突っ立ってるつもりだ。早く来るのだよ」
取り敢えず色々考えるのは後にして、火神は緑間の指示に従う事にした。 来た時と同じように壁づたいに緑間の方へ歩いて行くと、 「寝室はどこなのだよ」 と訊かれたので、こっちだと寝室へと素直に案内する。
寝室に何か用でもあるのか?と思いながら、緑間の次の行動を立ったまま観察していると 「何をやっている。さっさと寝るのだよっ」 と、今度は何故かイライラした様子の緑間に指示され、 何でコイツはさっきから上から目線なんだ、と思いながらも火神はベッドに横になる。
「・・・何でお前がここにいるんだよ」
少し落ち着いたところで、改めて緑間に訊ねると 「さっきも言っただろう。見舞いに来てやった、と」 緑間はそう言うと、火神を見下ろした。
見舞いに来たのなら、もう少し気を遣った言葉や態度をとってもいいと思うのだが、 今の緑間はしかめっ面で、自ら進んで火神の見舞いに来た訳ではないのが分かる。
「何でお前が見舞いに来るんだよ。つか、何で知ってんだ?オレが風邪ひいたって」
「お前が風邪をひいたと黒子からメールがあったのだよ。それで、自分は用があって見舞いに行けないから代わりに行って欲しいと頼まれた」
緑間は不本意そうな表情をして、きっちりとテーピングされた長い指で眼鏡のブリッジを上げた。
よりにもよってどうして緑間だったのだろうか。黒子の人選に疑問が浮かぶ。 それに緑間も緑間だ。断る事も出来た筈なのに、どうして素直に従ったのだろうか。
「・・・ところで、具合はどうなのだよ」
訊かれて目線を声のする方へ向けると、直ぐ近くで緑色の瞳と目が合った。
(・・・よく見るとコイツ、キレーな顔してんだな。睫毛とかふさふさじゃん)
熱で頭がぼーっとする中、火神は無意識に緑間の顔を見つめ、緑間は自分を見つめてくる火神の普段見せないトロンとした目つきに一瞬だが息を飲んだ。
「あんまよくねぇ・・・」
熱も下がっている気がしないし、相変わらず頭痛も酷い。 支えなしで歩くのが困難な程身体もダルくて仕方ない。
火神が正直にそう告げると、スッと緑間の手が伸びて来て、その大きな掌がそっと火神の額に触れた。
ひんやりとした掌にホッと溜息が漏れる。
「・・・熱いな。ちゃんと薬を飲んだのか?」
「飲んでねぇ・・・。買い置きとかしてねー し・・・」
弱々しく答えるとフッと緑間が口角を上げた。 バカにした笑い方だ。
「大方、風邪なんて自分には無縁だとか思っていたんだろう。バカめ」
図星を指された火神は何も言えなくなる。 悔しくて言い返したいところだが、生憎と今はその気力を持ち合わせていない。
「おい、キッチンを借りるぞ」
そう言って寝室を出て行こうとする緑間を呼び止め、どうしてキッチンへ行く必要があるのかと問いかけると、
「その状態からして、朝から何も食べていないんだろう?空きっ腹で薬を飲むのは避けた方がいいから、俺が何か作ってきてやる。感謝するのだよ」
緑間はそう言う。
火神は「薬なんて……」 ない、と続けたかったが「俺が持っているのだよ」と、緑間に遮られてしまった。
「買ってきてくれたのか…?」
自分のために緑間がそこまでしてくれるなんて、驚きだ。 緑間にも人並みの優しさはあるようだ。
そんな風に緑間の事を見直していると
「か、勘違いをするな!風邪薬は今日のラッキーアイテムで、たまたま持っていただけなのだよっ!」
ほんのりと頬と耳を赤くした緑間が慌てて弁解し、火神から逃げるように寝室から出て行ってしまった。
「…誤魔化せてねぇし」
火神はそう呟いて頬を綻ばせた。
そう言えば緑間が何か料理を作ってくれるみたいだが、彼の料理の腕前はどうなのだろう。
見た目通り器用に作ってみせるのか、器用に見せかけて実はリコのようなとても料理とは言えない代物を作ってみせるのか。
ドアの向こうから聞こえてくる緑間の気配に「… 楽しみだな」と火神は微笑んで、うとうとし始めた。




