「死にたい」「死にたくない」12 | IRIEなLIFE

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「コングラッチュレーション」



ぶっきらぼうのドクターが言った






30分が過ぎた

結局、心臓の動きに

何も変化はなかった





後から来た何人かのドクター達も

一通り「おめでとう」と言ってはくれたが

すぐに部屋を出て行ってしまった






そのレアな病気ではなかったせいか

ドクター達のその表情は

何だか獲物を取り逃したハンターのように

落胆しているようにも見えた










とにかく


俺は

ほっと一息…





こんなに心から「安心」したことは

今まであまりない






良かった…












そして部屋に帰ると

安堵からか

とても眠たくなってきた






本当に良かった…










そしてウトウトしたかと思った矢先

ユリが部屋に入ってきた





「おめでとう!変な病気じゃなくて良かったね!!」



「あぁユリ、ありがとう。心配かけたね。安心したせいか、なんだか眠くなってきたから少し寝るよ…」




そして目を閉じようとする俺に

続けてこう言った


「もう一回、今度は違うテストをするよ。それをクリアすれば退院できる!!」







退院!?


目が覚めた





退院できる?





思ってもみなかった







俺はすっかり

自分が大病にかかっているものだと

思い込んでいたから

退院なんて

まだまだ先だと思っていた







「じゃあ10分後に迎えにくるから」


そう言って部屋を出て行った









そしてきっちり10分後

ユリがやってきた


「君は靴下持ってるかい?」

「靴下?持ってないけど…、何で?」

「じゃあこれを履いて。今度のテストは走るテストだから」







走る?







訳が分からない俺を車椅子に乗せると

今度はまた

別の部屋に連れて行った







中に入ると

何やらパソコンが並んでいる




中には大勢のドクターとナースがいた






そしてその奥に

ランニングマシンがあった





「よし、はじめるよ」


一人のドクターが言った





「はじめるって何を?」

「そのランニングマシンで9分間走ってもらう」







は?

走るの?

しかも9分間も?










だって俺

ずっと寝てたから

足もフラフラだし

それよりも何よりも

20分前に

あんな危険なテストしたばっかだけど…










しかしそんなことはお構いなしに

俺は上半身裸にされた










そして毎度のことのように

体に何やらいっぱい付けられたんだ





「9分間走ったあとに、心臓の動きをチェックするから」







そして言われるがままに

ランニングマシンに乗せられたんだ













入院してからも

ずっと息苦しさは続いていた







そんな状態で

走るなんて絶対できない!





と思っていたが

断ることもできない








そしてマシンは動き始めた











しかし

予想とは裏腹に

走るというよりは

歩く感じで始まった










これなら大丈夫!

全然余裕だ!!








そして1分が過ぎた頃

ドクターが言った

「それじゃあ、少しスピードを上げるよ」

「OK!」






俺は余裕で答えた







そして2分が過ぎた頃

またドクターが言った





「じゃあもう少しスピード上げるよ」

「OK」





しかし

もう歩くというよりは

走らなければならないほどになってきた








3分が過ぎた頃

ドクターが言った




「じゃあもう少しあげるよ」

「えっ、もっと?」





今度は早い

病んでる俺には

なおさら早く感じる







まだ6分もある

持つかな…?








4分が過ぎた頃

ドクターが言った




「上げるよ」

「…OK]





もはや走るというよりは

ダッシュに近い感じになってきた









辛い

まだ5分ある










これは最後までもたないかもしれない


でも無理なんて言いたくない









ひたすら走る







5分が過ぎた

ドクターが言う



「上げるよ」











…ちょっ、無理…












スピードが上がる

こんなスピードで走るなんて

中学以来だ


いや、

むしろ初めてかも…








足がもつれる

息が上がる










「苦しいかい?」

ドクターが聞いてきた

「だっ、大丈夫…」








もはや意地とプライドをかけた

自分との戦い












6分が過ぎた

ドクターが言う

「スピード、上げるよ」











マ…ジ…っすか!?













ひたすら走った










もうその頃には

心臓なんて気にしていられなかった













ただただ走ったんだ


見えない明日に向かって…










残り2分


もうスピードは上がらなけど

ほとんどダッシュ









「これを走りきれば、その向こうにはきっと明るい明日が待っている…」

なんて訳の分からないことを思いながら

見えない明日に向かって走ったさ…



ただひたすらね…













そして9分が過ぎた

ランニングマシンが止まった








もちろん

走りきっても

明日なんてまったく見えない…


それどころか

苦しくて

目の前すらあんまり見えない…








とにかく苦しい…











俺は

横にあった

ベッドに倒れこんだ







ドクターが

すぐに俺の心臓を調べ始めた

俺の息は上がりまくっている




もう心拍数なんて

気にする余裕もない








ドクターがモニターを見つめる









しばらくの沈黙のあと

ドクターが言った






















「…99%、君の心臓は問題ない。」