パニックアタック?
聞いたこともない言葉だ
「大丈夫、死ぬことはないわ」
ナースは笑顔で
そう俺に告げると
また無表情に戻り
自分のしていた仕事に戻っていった
少し落ち着いた俺は
今度は違う部屋に運ばれた
ベッドに寝かされる
そして何やら色々体につけられた
脈を測り
熱を測り
心拍数や呼吸の状態を調べる
そして最後に
俺の腕をまくり
血液を採ろうとした
俺は恥ずかしながら
注射が怖い
墨を彫るときの針は怖くないのに
注射針は怖いんだ
情けないけど
ナースが俺の刺青をしているほうの腕をまくる
俺は針が見れないから
目を閉じた
よりによってそっちの腕かよ…
なんて思いながら
針が刺さっていくのを感じた
この時ほど
刺青を隠したいと思ったことはなかった
もちろん刺青を入れたのは
自己満
だけどやっぱり
「みんなに見せたい!」
「俺は刺青してんだぜ~!!すごいだろ~」
みたいな部分も大いにあった
そんな外見ばかりを気にして
着飾って
たいして勇気も力も無いのに
あたかもそれで強くなったような
そんなことで今まで偽りの強さを誇示してきた自分
しかし
「死」を間近にすると実は
びっくりするほど
チキンで
ビビリで
死ぬのにおびえ
注射におびえている自分がそこにはいたんだ
「どうしたの?注射は嫌いかい?」
ナースは俺の心を見透かしたように
笑いながら俺に尋ねる
「そっ、そんなことないよ…」
必死に強がってはみせるが
ナースはまだ笑っていた
そして母親が俺の所にやってきた
その顔を見て
少し安心した俺は
いつの間にか
呼吸ができるようになっていた
しばらくすると
誰かが俺に尋ねた
「体は動く?」
「もう動くようになったよ」
そう答えると
ナースは俺を車椅子に乗せ
また違う部屋に運んだ
「この扉の向こうで待ってて」
ナースはそう言って俺を車椅子から降ろすと
すぐに立ち去っていった
俺は扉を開けた
するとその先は
ICUでもなければ
診察室でもない
ただの待合室だった
受付があり
自分の番を今か今かと待ちわびている人達でごった返す
待合室
まじかよ…
さっきまで俺
死にそうだったのに
体が動くようになった途端
こんなとこで待たせる気かよ…
しかし
そう思ったのもつかの間
その人達に先に目をやると
そこには
愛する家族がいたんだ
もう二度と見ることも
話すこともできないと思っていた
俺の家族
また会えた
エミが瑛斗をだっこしながら
俺に近づいてくる
その顔はもう涙でぐしゃぐしゃだった
「ユースケ、大丈夫だったの?良かった~生きてて」
そして陽夏が俺の脚にしがみついていた
「ダディ…」
俺はみんなと抱き合った
「ごめんね、心配かけて…」
たぶん時間にして30分もたっていないだろう
30分前に死にそうだったのが
まるで何かの嘘みたいに
今は呼吸もできれば体も動く
今こうしてまだ生きていて
家族に会うことができている
俺は幸せで
涙をこらえるのに必死だった
その後すぐにエミと陽夏と瑛斗は家に帰した
インフルエンザが流行っているから
病院にいると移ってしまう
再会もつかの間
すぐにお別れをし
俺と母親だけその場に残った
どれくらい待ったか?
やっと俺の名前が呼ばれた
そしてまた中に入る
今度は自分でベッドのある部屋まで歩いていけた
そこで更に待つこと30分
若いドクターがやってきた
「一体どうしたんだい?」
俺は事の一部始終を
ドクターに説明した
するとドクターは俺にこう尋ねた
「君はストレスはあるかい?」
ストレス?
あるわけない
最近のブログでもお伝えしている通り
俺はこんなことになるまで
絶好調だった
仕事も家庭も
すべてがノリノリだったはずだった
なにより
俺はストレスとは無縁の人間だと
今でも思っている
「パニックアタックは極度のストレスが原因なんだ」
ドクターは俺に説明する
「ストレスはないよ。むしろ俺はいつもすごいハッピーだから」
ドクターは首をかしげる
「ストレスじゃないなら、何かイリーガルのドラッグでもやったかい?」
「いや、やってないよ。俺はケミカルは嫌いだから。でも日本のルルってドラッグを3錠飲んだ」
笑いながらそう伝えると
ドクターも笑っていた
俺はドクターに伝えた
「たぶん肺気腫かもしれない…」
「肺気腫?それは無いと思うな」
「でも俺のじいちゃんもそれで手術したし、この前受けた検査で肺気腫の疑いがあるって言われたし…」
しかしドクターは
また首をかしげてこう言った
「パニックアタックの問題は別として…」
「…、君の心臓の動きが少しイレギュラーなんだ」