15年ほど前、私が交通計画をやっていた頃、都市計画とは何かということを考えさせてくれたのが『人間都市クリチバ』という本だった。

クリチバ市は、ジャイメ・レルネル氏が若干33歳の若さで市長になり、都市の成長に合わせて人のためのヒューマンスケールの都市計画を実現させたブラジルパラナ州の州都。1990年頃から建築家主導で設計された人工都市のブラジリアやチャンディガールと対比されて注目を集めるようになった。

この本はクリチバ成功の理由を明快に、日本の都市計画の問題を端的に指摘していて、著者は切れ者なんだろうという印象を持っていた。

 

右はレルネル氏とその著書『都市の鍼治療』

 

 

そのレルネル氏が先月亡くなり、著者が発起人でレルネル氏の追悼オンラインセミナーを開くという。当時、レルネル氏のもとで環境局長だったナカムラヒトシ氏を招いて環境シンポをしたこともあって、急に色々なことがよみがえり興味深々で参加した。

 

結果はあてがはずれてなんかがっかり・・・えー

 

4人のスピーカーがそれぞれレルネル氏との思い出をボツボツ話すだけで、居酒屋の同窓会を覗いてるみたい…

冒頭、会議の趣旨をレルネル氏の都市計画の思想が日本の都市計画分野において過小評価されていることを反省し、この類いまれな実績を有効活用できるようにしたい、と説明しているくらいだからもう少し建設的でもよかったんじゃないかと思う。

 

日本の都市計画は、国交省が方針を決め、地方自治体が補助金をもらうために右に倣えで策定する。計画を作るのはコンサル、市名を変えればどこの都市でも適用できてしまう。自治体は計画策定の体裁を整えるために大学教員を委員に呼び、大学教員は計画の本質的な問題は問わず適当にお茶を濁す。市民は計画の内容を知ることはなく、計画の実施と評価には誰も注意を払わず、計画策定は数年ごとに繰り返される。全て税金で。

 

レルネル氏が成功とされる都市計画を作れたのは、ブラジルにもはびこる日本と同様の構造問題に真っ向から取り組んだからであって、せっかくならこの問題を取り上げてほしかった。参加者の大半は都市計画に関わっている人たちだろうから問題を共有できるチャンスだったのに。少しでも日本の都市計画が絵に描いた餅でなくなることが、レルネル氏への追悼になると思った。

 

 

♡レルネル氏に

もう向日葵の季節です