少子化とお見合いおばさん | 門前小僧、習わぬ今日を読む

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反グローバリズム、反新自由主義、反緊縮財政。
アイコン,ロゴ画面はイラストレーターtakaさんより。
takaさんの詳細情報はブログ画面にて。

 

個人主義と言えば聞こえはいいけど、

 

要は共同体が解体されて共同体内で世帯を生み出す構造

というか機能が失われた

 

ってのはあるんじゃないかとは思う。

 

例えば

 

今の人でも昔の漫画とかドラマで見たことあるかもしれんけど

 

“やたらと見合い写真持ってくるおばさん”

 

みたいな存在が、

親戚or近所に一人はいる、

 

みたいな時代が、40年くらい前までは確実にあった。

 

今では企業とか、

胡散臭い個人がネットでゴチャゴチャやってるようなことだけど、

 

相手方の情報の量と質、

精度などに関しては、

比べ物にならないほどレベルが高かったはずなのよね。
 

まぁ人によって個人差はあっただろうけど。

 

婚活業界のことはよく知らんけど、

 

相手の勤め先とか大体の仕事ぶり、

家族構成とか経済状況など、

 

本人が自分で知り合って

得るまでに時間がかかるような外堀の情報も、

まずおばちゃんセンサーが把握して、

おばちゃんコンピューターが

紹介先に見合う相手を弾き出して提供してくれる。

 

自分個人で知り合う場合は

まず人柄が先で、

次に外堀の情報

って場合が多い(職場の同僚とかなら別)けど、

 

おばちゃんシステムはその逆から入る。

だからお見合いでは、

余計なことを考えずに

純粋にその人の人柄だけを見ることが出来る。

 

おばちゃん見合いシステムは、

当然相手を自由に選べるわけじゃないけど、

愛情とかそういうところ以外の部分での不安が、

ある程度取り除かれた相手と知り合うことが出来る。
 

そしてその手の客観的な情報を

企業や本人含む個人が相手本人から得る以外では、

人に頼むとか無茶苦茶コストがかかる。

 

おばちゃんの場合、

相手に近しい親類縁者や近所の人とかからの

信頼性の高い情報を、

ノーコストで得ることが出来る。
 

おばちゃんの方も

「あの人に引き合わされた夫婦はすぐ離婚する」

なんて噂が立てば

自分の評判が落ちて共同体内で生きてけなくなるから、

面子にかけて本気で見合う人を選んでくれる。

 

文字通り、

おばちゃんの共同体内での生存と地位をかけた

本気の仕事をしてくれる。
 

何しろ悪い噂とかが立っても

揉み消したり誤魔化したり出来る企業や個人と違い、

噂が立つだけでも限りなくアウトに近い状況に陥るのだから、

その厳しさたるやハンパないものがある。

 

元お見合いおばちゃんだった患者さんに聞いたところによると、

本人よりもまずその人の家を見るのだそうな。
 

んでその家の経済状況とかの似通った人を

引き合わせると成功率が上がる

(逆に言うと離婚率が下がる)とか。
 

要は経済状況が似てると

価値観も似通ってくるから、

性格的にも上手く行き易いらしい。

 

ともあれ、

 

お見合いおばちゃんも今や絶滅状態。

 

私の嫁さんも前彼と別れた後、

おばあちゃんの知り合いに

見合いを持ちかけられたそうだけど、

20も年上の人だったとか。
 

結局世代によって

紹介できる世代が変わるから、

お見合いおばちゃんが現役でいられる期間も限定的なのだろう。

 

嫁さんの友達(兼同僚)が

勤務先に通院してた患者さん(当時70前くらい)に

お見合い相手を紹介してくれとお願いしてお見合いしてたけど、

 

今では3人の子宝に恵まれて幸せにしてる。
 

今ではそのおばちゃんも80代で、

当時ですら一線を退いてたみたいだから、

最後期の成功例かもしれない。

 

昔は共同体内に

自然発生的にそうしたサービスを提供する構造

みたいなもんがあって、

 

共同体存続に一役買ってたけど、

そうした構造も今では解体されて機能しなくなった。

 

個人恋愛礼賛みたいな風潮も

それに拍車をかけただろうけど、

 

男女の出会いなんてそうそうあるもんじゃないし、

ましてや性格に加えて背景要因などの

様々な要素が噛み合うなんて

奇跡に等しい運任せな話になってしまってるってのが現代日本。


人為的にその成功率を上げる機能の喪失の影響はいかほどか。

 

申し訳ないけど、

今の婚活系企業が

昔のお見合いおばちゃんほど

質の高いサービスを提供出来るとは到底思えない。

 

必要な情報を集めるのに

コストがかかり過ぎて商売にならないはずだし、

 

だからこそ結婚を考えるのに

割とどうでもいい趣味とかを合わせるとか

ズレた話をウリにしたり、

ヘンな精神論を押し付けてきたりする。

 

何れにせよ、

 

共同体が破壊された今では

結婚も子育ても自助努力、

自己責任の時代で、

 

昔なら普通にタダで得られた共助も

ほぼ絶滅して結婚も子育ても運任せの状況になっている。
 

こんなので出生率とか上がるとは思えない。

 

そして共同体破壊に拍車をかけたのが、

都市一極集中を放置し、

地方への投資を削りまくった政府の方針。
 

賃金抑制と相まって、

将来に希望を持てなければ

萎縮しがちな結婚出産という決断から

国民を遠ざけた。
 

これも大事ではあるけど、

それ以前にどのように社会が変遷してきたかもやはり重要でしょ。

 

共同体を維持しようという

周囲からの圧力が減衰すれば、

 

誰でも今現在楽で合理的な独身生活を選ぶ

なんてのは、

 

個人の自由な選択に任せれば当然の結果と言える。


結婚も子育ても、

自分以外の誰かと

ひとつ屋根の下で暮らさなければならない

 

というストレスに曝されることになるから。

 

結局、個人の自由な選択というのは、

社会の崩壊の一因になり得る。
 

何らかの価値観や制度、

風習的な社会構造からの圧力でも無ければ、

個人は個人の合理性に従い易く、

社会的合理性に従った行動を取ることは少なくなる。

 

経済的な問題は重要な要素ではあるけれど、

どうして重要なのか、

どのように影響してるのかを考えないと、

 

問題を考えるのには不十分と言わざるを得ない。

 

https://x.com/monzenkozo21/status/1733527575497203941?s=20