民間銀行の信用創造と銀行間(インターバンク)取引②~融資編 | 門前小僧、習わぬ今日を読む

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反グローバリズム、反新自由主義、反緊縮財政。
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銀行は、取引企業と融資契約を結ぶことで、

自公の負債として預金通貨を発行します。

すなわち信用創造です。

 

このとき銀行は、

相手企業が“将来”得るであろう

売上利益を資産にするのと引き換えに、

負債として預金通貨を発行します。

 

つまりこの時点では、

確かに“無から有”と言えますが、

これはあくまで

相手企業が将来稼ぐであろうお金に対する“信用”あってこそです。

それゆえの“信用創造”というわけですね。

 

当然、

 

その企業が

将来必ずお金を儲けることが出来るかどうか

というのは解りません。

 

自然災害や国内外の紛争、

あるいは昨今のコロナ禍のような異常事態が発生した場合など、

企業が思うように売上を上げられなくなってしまうことは

様々な事由からあり得ますから、

銀行は借用証書に加えて、

 

お金を返せなくなったとき用に、

融資額とほぼ同じくらい価値のある資産、

例えば不動産などを担保として、抵当権を設定します。

 

これによって、

銀行は融資先企業が支払い不能になった場合に、

その不動産を処分して自行の資産に繰り入れ、

融資先企業の取引先からの代金請求に充てたりするわけです。

 

融資という銀行業務

さて、融資というと、

一般的には“お金を貸す”という意味として使われますが、

実態を見ていきますと、

実際にお金、

つまり銀行の資産を貸しているわけではありません。

 

融資に際して自行の負債を発行し、

融資先企業の資産にしてはいますが、

実際に融資先企業の取引先に代金支払いをするのは銀行です。

 

要するに、銀行が融資した金額の範囲内で、

融資先企業の負債を肩代わりするような形で、

請求された代金を支払うわけです。

 

 

即ち融資とは、

お金を貸すというより、

融資した金額の範囲内で

企業や個人の支払いを

銀行が代行するサービス

ということができるわけですね。

 

少々話をややこしくしてしまうような感はありますが、

お金というものを正確に把握するためには、

こういった細かい話を理解する必要があります。

 

不良債権と銀行の倒産

例えば、

「銀行は預金通貨を発行できるのに、なぜ不良債権とか倒産とかが起きるんだ?」

という疑問。

 

この疑問は、銀行があくまで負債として預金通貨を発行しているというのが今一つイメージできていない場合に起きる誤解です。

 

 

例えば、銀行の融資先企業が倒産してしまい、

融資先企業の取引先が

企業の上げた売上から支払いを受けられなくなってしまったとします。

 

しかし、その企業の銀行口座に預金が残っている場合、

取引先企業たちは、

その代金の支払いを銀行預金によって済ませることが出来ます。

 

その銀行口座の預金は、当然銀行の負債です。

つまり、例え融資先の企業が倒産したとしても、

銀行口座に企業の預金(銀行の負債)が残っている以上、

銀行はその企業が抱える負債を弁済しなければいけない、

というわけです。

 

当然、融資先の企業が倒産してしまったということは、

銀行はその企業に

それ以上の債務の償還を求めるわけにはいかないわけで、

取引先企業への弁済は、

その銀行の資産からの持ち出しになってしまいます。

 

要するに融資によって発行される預金通貨は、

融資先企業にとっては資産になりますが、

融資する銀行側からすればあくまで負債なので、

融資契約時に企業から受け取った

借用証書の額面通りの金融資産が

融資先企業から得られなくなってしまえば、

銀行は負債を抱える、つまり損をしてしまうということで、

これが多くなれば当然倒産することもある、というわけです。

 

融資における銀行の支払い代行業務

さて、銀行融資における大きなポイントは、

まず融資契約締結時の信用創造、

そして融資契約締結後の銀行の支払い代行という業務ですが、

 

同じ銀行に融資先企業と取引先企業の口座がある場合は、

銀行の資産に特段の移動はありません。

 

 

融資先企業の口座の預金額(銀行の負債)を減らし、

取引先企業の口座の預金額(やはり銀行の負債)を増やせば済むだけだからです。

 

当然、取引先企業が銀行に預金を引き出すと言った場合には、

銀行は自行の資産から引き出した額面と同じ額の現金を取引先企業に渡し、その分を自行の負債を減らして、通帳の預金額を減らします。

 

ただし、

基本的に現在は代金の支払い等はほとんど銀行が代行しているわけですから、現金を一気に引き出すといったようなことはほとんどないでしょう。

それだけ銀行とその業務は、現代の経済活動において重要なインフラストラクチャーであるという証左とも言えますね。

 

さて問題は、異なる銀行に企業同士の口座がある場合です。

 

A銀行が融資契約を結んでいる企業をA'、

その取引先企業をB'として、

企業B’が口座を開いている銀行をBとします。

 

企業B’がA’に代金の支払いを請求すると、

A’はA銀行に代金の引き落とし、

つまり代金の支払い代行を依頼します。

 

A銀行は、B’企業が口座を開いているB銀行に、

代金を振り込むわけですが、

当然、A’企業の口座にある預金は、A銀行の負債です。

B銀行のB’企業の口座の預金も、B銀行の負債です。

 

この振込では、A銀行が自らの負債を減らして、

B銀行はA銀行が減らした分、自行の負債を増やすことになります。

 

 

ここで、

あれ、おかしいな?

と思う方もいるかもしれません。

 

A銀行はB銀行に代金を振り込んだはずなのに、

B銀行の負債が増えてしまい、

A銀行の負債が減ってしまっています。

 

ここで感じる違和感は、

次回の③振込編で解決することにしましょう。