コストプッシュインフレと株主至上主義 | 門前小僧、習わぬ今日を読む

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反グローバリズム、反新自由主義、反緊縮財政。
アイコン,ロゴ画面はイラストレーターtakaさんより。
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賃金を上げるにはどうすればいいでしょう。

 

まずその前提条件の一つとして、

売上が適切に

労働者の賃金として分配される

という状況が必要です。

 

これが無ければ、どうにもなりません。

 

その上で、

 

売上が増えているという状況が必要です。

 

売上が増え、経費に割ける企業所得が増えれば、

企業は賃金を上げることが出来ます。

 

売上が増えるパターンは、主に二つ。

単価が上がるパターンと、

売上個数が増えるパターンがあります。

 

単価が上がるパターンでは、物価が上がります。

物価、すなわち販売されるモノやサービスの一つ一つの価格、

単価が上がるということです。

 

売上個数が増えるパターンでは、物価は必ずしも上がりません。

同じ価格で売上個数が増えることによって、

売上高が増えるということですからね。

 

しかし、これはあくまで前提条件

 

売上が上がったからと、

企業が賃金を上げるとは限りません

 

 

 

では、株主至上主義が蔓延する社会で、

賃上げをするとどうなるでしょう?

 

賃上げした分、物価が上がります。

つまりコストプッシュインフレです。

 

なぜかというと、

 

利益最大化、つまり株主への利益供与分を保全しつつ、

コストに当たる賃金(人件費)を増やそうとすれば、

物価、すなわち価格に転嫁するよりほかはありません。

 

前者、

すなわち単価を上げて売上高が上がる

というパターンがそれに当たります。

「賃金上げるのは良いけど、俺たちの利益はちゃんと取っとけよ?」

というわけです。

 

後者、

すなわち売上個数が増えて売上高が上がるパターンではどうでしょう。

売上個数が増えるには、

賃金、そして賃金以外の企業の経費が増えることが必要です。

 

賃金が増えることによって庶民労働者、

すなわち消費者の可処分所得が増え、

生活用品以外のより幅広いモノやサービスに

費やす余裕が生まれ、

結果としてより多くの売上個数が得られるわけですが、

 

これを前提条件にしてしまうと

売上増加による売上高の上昇は、

賃金上昇が必要条件になってしまう、

つまり賃金上昇の条件が賃金上昇になってしまうという

循環論法になってしまうわけです。

 

個人消費以外で売り上げ増加の要因を考えると、

企業の経費があります。

 

企業の運営、

モノの生産、

サービスの提供に必要な経費が増えることで、

それを提供する他の企業の売上個数が増え、

売上高が増えるわけです。

 

しかし当然のように、

 

「ちょっと待った!」

と、そこでも株主からストップの声がかかります。

 

「賃金と経費増やした分、

俺たちの利益分は確保しとけよ?」

 

そういう圧力が掛かります。

 

さらにその分が単価に上乗せされると、

さらに物価上昇圧力が強くなります。

 

つまり、

 

株主至上主義社会では、

コストプッシュインフレ圧力が

極めて強く作用しやすくなる

ということです。

 

我々庶民が安定した生活を営むためには、

賃金上昇が物価上昇を上回る

ような状況が必要です。

 

しかし、

 

株主至上主義社会では、

例え景気が良くなり、実体経済が活発化しても、

物価上昇が賃金上昇を上回りやすい状況になってしまいます。

 

そもそもなぜ、

絶賛株主至上主義天下となっている今の日本で、

なぜここまで物価が上がりにくい

デフレ・ディスインフレ体質になっているのかといえば、

単純に企業が人件費にも経費にもカネを使わないからです。

 

使わないことが許される、

むしろ使わない方が良いとされる税制度や規制が

多く存在し、

何よりもお金を使わない、

つまり節約が美徳とされる価値観が、

株主至上主義的な文脈の中で蔓延しているから

物価上昇も賃金上昇も起こりづらい状況なわけですが、

 

株主至上主義が蔓延する社会で

賃上げをしようとすると、

株主からの利益最大化要求との相乗効果で

ダイレクトにコストプッシュインフレを惹起し、

賃上げ以上の物価上昇をもたらす可能性が

極めて高くなってしまいます。

 

要するに、

株主至上主義社会では、

物価の変動が不安定になってしまうというわけですね。

 

賃上げをすれば物価が高くなりすぎ、

賃金を抑制すれば物価は低インフレで安定しますが、

国民労働者の所得が減少して

生活は苦しくなってしまう。

 

どこまで行っても、

株主至上主義というのは格差を拡大し、

貧困を助長する以外にない社会を強制するのです。

 

 

こうした株主至上主義的な社会を構造化している

規制、風潮、価値観、

 

その多くは、この30年間に導入され、

あるいは流行したものばかりです。

 

労働者の賃金上昇を求め、

真の好景気、

すなわち庶民も好景気の恩恵を受けるためには、

そうした規制を撤廃し、

価値観を否定し、

ビルトインスタビライザーを再建する必要があるのです。