NLGST | 門前小僧、習わぬ今日を読む

門前小僧、習わぬ今日を読む

反グローバリズム、反新自由主義、反緊縮財政。
アイコン,ロゴ画面はイラストレーターtakaさんより。
takaさんの詳細情報はブログ画面にて。

illustration by たか

經世濟民猫イラスト集(pixiv)

 

 

 

「そこの貴方!」

 

「?」

 

「そこのいかにも最近睡眠不足に栄養不足って顔色の

猫背で住所不定で無職の貴方! 」

 

「僕のことですか?」

 

「そもそもこの付近に、

私たち以外の人間は貴方しかいないでしょう。

状況判断もマトモに出来ないほど弱ってらっしゃるようね。

 

私は天神ツェリ子

 

後ろの二人も含め、

市の生活安全保障課の監察員です。

 

貴方のお名前は根織部源介さんでよろしいかしら?」

 

「はぁ…」

 

「貴方は勤務先を退職し、

家賃滞納で以前のお住いから退去して以降、

住所不定となっていますが、

どうして行政に相談にいらっしゃらなかったの?」

 

「いや、

家賃が払えなくてアパート追い出されたなんて、

恥ずかしくて…」

 

スパン!スパァン!!

 

「ぁ痛!痛っっ!何するんですか!

 

「貴方の行動は

 

“国民は健康で文化的な

最低限度以上の生活を営まなければならない”

 

という

 

“国民生活保障法”

生活義務違反に該当します」

 

いやいやいやいや

健康で文化的な最低限度の生活云々って、

義務じゃなくて権利のはずでしょ?」

 

「シャラップ」

 

スパン!スパァン!!

 

痛っ!痛い!何なんすか!

 

“国民生活保障法”を御存知ないようね。

 

貴方が言ってるのは憲法25条のお話。

“国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する”

でしたね?

 

“国民生活保障法”では、

国民及び行政府は、

国民が最低限度以上の生活を営めるよう

最大限の努力をしなければならない

 

と規定しています。

 

つまり、

 

国民が最低限度の生活を営むのは権利ですが、

 

最低限度以上の生活を営むことは

義務になったのです」

 

ちょっと何言ってるのか解

 

「シャラップ」

 

スパン!スパァン!!

 

「だから痛いっすよ!何で叩くんすか!?

 

 

「…解り易く言えば、

 

行政府は国民が最低限度以上の生活を営めるよう最大限努力しなければいけないし、

 

国民も自分が最低限度以上の生活を営めるよう

自分自身でも努力しなければいけない

 

ということです」

 

「いや、でも僕の場合、

体調不良で仕事を辞めざるを得なくて…」

 

「なぜお辞めになる前に、

お辞めになった後でも、

行政に相談にいらっしゃらなかったのかしら?

そのくらいはできたはずでしょう?」

 

「いや、そんな法律知らなかったし…」

 

「そうですね。

 

貴方のような無知蒙昧な愚民にも、

最低限度以上の生活が維持・継続できるよう、

 

私たち国民生活安全保障課こと、

Nation LIfe Guard Security Team

通称NLGSTがいるのです」

 

「横文字長いっすね。

 

っていうか、

 

サラッと今とんでもない暴言吐きましたよね?」

 

 

スパン!スパァン!!

 

痛い!!

 

「当然、

貴方のように法律を知らない、

あるいは行政に頼るのを潔しとしない方も

多数いらっしゃることは、

行政側も認識しています。

 

そういった方たちをほく…

ゲフゲフン!

探し出し

行政サービスに繋げるのが

私たち監察員の仕事です」

 

「今捕獲って言いかけましたよね!?」

 

スパン!スパァン!!

 

 

 

だから痛いってば!

何なんすか!?その手に持ってるそれは!?」

 

 

 

警策(きょうさく)です。

禅修行の際、お寺で用いられるアレですね。

 

貴方のような無知蒙昧な輩を啓蒙するのに、

これ以上のものがあるかしら?

 

 

(イカれてる…)

 

 

「···問答はここまでです。

 

貴方はこれから、

行政が運営する住居不定者専用の施設に

入居していただきます。

 

家賃は無料ですから安心してください。

 

食事も三食提供されますが、

生活費支給の代わりとして、

この“生活保障カード”が支給されます。

 

医療費や食費はこれで全額支払うことができます。

 

ただし、一食5,000円以上かかる食事は原則月1回です。

 

また趣味など遊興に使う場合は、

限度額が定められていますのでご注意を」

 

「気持ち悪いほど好待遇ですね」

 

「ちなみに拒否は認められません

 

その場合は裁判なしで懲役刑となり、

即刑務所に連行されます」

 

そんな無茶な!?

国民には裁判を受ける権利ってものが…」

 

“国民生活保障法”で

定められている通りの処置です。

 

それに、

 

そんなものは

生活権と生存権

が安定した後の話では?

 

さぁ、

 

刑務所で臭い飯を食べ、

冷たい床で煎餅布団で眠るのがいいの?

 

それとも、

 

1LDKの暖かい部屋で、

美味しいご飯を食べる生活の方がいいの?

 

選びなさい

 

「···」

 

「なお、

 

一度入居したら、

自立して必要最低限度以上の生活が営めるようになるまで

退去できません。

 

もし脱走した場合は…」

 

「そこも刑務所みたいっすね」

 

スパン!!

スパン!スパァン!!!

 

痛い…

 

「…無断で抜け出そうとした場合は、

私の後ろにいる二人のような、

 

グラサンに黒スーツを着た

アスリート体型の男性に

全力で追い掛け回された挙句、

三角締めで絞め落とされて

施設に連れ戻されますので、悪しからず」

 

「“人権”の意味が解らなくなってきました」

 

「…全く、

聞き分けのない大衆はこれだから…。

 

ノンスケ!

栗鼠室!!

 

「「はっ」」

 

この哀れな男性拘束します!

 

これから彼に、

 

最低限度以上の生活というものが

どういうものか、

 

教えてあげるのです

 

「「イエッサー」」

 

「さぁ、これで貴方も···。

 

···?!

 

あっ!!

コラ逃げるな!!!

 

捕まえなさい!!

 

ここで逃がしたら

減給&午後のおやつ抜き十日間よ!

 

 

「「イエス、マイボス!!」」

 

いやああ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…と、

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、

 

 

 

 

安全保障カルトが天下を取ると、

このような社会がやってくることに

なるでしょう(適当)。

 

怖いですネ。

 

どんな思想、どんな考え方も、

先鋭化して思考が硬直化する

トンデモないことになる

 

という見本です。

 

なお、

 

この記事はフィクションであり、

実在する人物、団体、

ツイッターアカウント等とは

一切関係ありません。

 

 

 

 

Special Thanks!

カバーイラストは

たかさんに描いていただきました!

ありがとうございます!!

 

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