貧困問題と経済成長 | 門前小僧、習わぬ今日を読む

門前小僧、習わぬ今日を読む

反グローバリズム、反新自由主義、反緊縮財政。
アイコン,ロゴ画面はイラストレーターtakaさんより。
takaさんの詳細情報はブログ画面にて。

何言ってんだこいつ?

 

初見の感想は、何言ってんだこいつ?でした。

そりゃそうでしょう。

曲がりなりにも貧困問題に取り組み、情報発信している人間が、経済成長を否定するような発言をしている訳ですから。

しかも、統計的な事実に反してまで。

過労死等の現状 厚生労働省

 

 

 

私が思いつく批判は、ほぼ全liberalist氏がタイムライン上で述べて下さっていますが、この方、単に無知なだけなのか、それとも何か意図があってのことなのか?

その辺りを、彼の過去の発言等から検証してみたいと思います。

 

割と左派からは批判の的になっていたようで…。

「貧困問題を政治利用するな」 鍋パーティーのブログ氏

 

「貧困問題を政治利用するな」とは、何ともカッコ良さげな主張ではありますが、

まず最大のツッコミどころは、

貧困問題は政治問題だろ?

少なくとも、貧困問題は政治的に問題解決、もしくは改善を目的として政治的発言をするのは極めて重要なことです。

にも拘らず藤田氏は、まるで貧困問題に関する左派やリベラルの政治的発言は、全て政治利用、つまり政局を有利にするのが目的であり、貧困問題を解決する意図など無いのだと言わんばかりに、貧困問題を政治的なアプローチで改善しようとする動きを批判しているのです。

 

無論、左派からは批判が集中します。

同じく貧困問題に取り組む西の雄・稲葉剛氏からも、猛烈な反論が展開されます。

 

そりゃそうでしょう。

貧困問題を政治的なアプローチで何とかしたいと思い、真剣に解決したいと思っている人々にとっては、名誉棄損モノの藤田氏の発言なわけですから。

 

しかし藤田氏、以前にはこのような発言もしています。

この意見に関しては全く賛成です。

経済的な豊さを過信し、憲法だの安保だのにかまけて、生活や労働問題をなおざりにしてきたからこそ、今の左派の失墜はあるわけですから。

 

これは、いわば左派のかつての勝利に対する過信が原因です。

高度経済成長期を経て、労働者の権利拡大を求めてこれを勝ち取ってきた左派の活動は、確かに一時的な勝利を収めたと言ってよいでしょう。

しかしながら、その勝利に過信し、連合を初めとした左派の経営者・投資家側との馴れ合いが、左派の影響力を急速に弱め、今では高プロ制度の衆院通過など、負けっ放しの状況になってしまっています。

 

つまり、2016年7月の時点で藤田氏は、

「左派は憲法や安保に拘ってないで、生活や労働問題を改善するような政治的発言をせよ!」

と言ってるわけですが、

まるで掌を返したかのように、まるで左派やリベラルの人々が、政権を取るために貧困問題を政局に利用しているとレッテルを貼り、左派やリベラルの人を批判しているのです。

 

ここでもう一つのツッコミどころ。

 

保守派や右翼は批判しないのかよ?

 

おかしいですよね。

 

例えば、子どもの貧困対策推進議員連盟には、自民党の田村憲久議員、牧原秀樹議員、薗浦健太郎議員、宮下一郎議員などが名を連ねています。

 

保守派の議員だろうと、貧困問題を政治的に取り上げ、改善しようとしている人は当然います。

にも拘わらず、貧困問題を政治利用しているのが左派とリベラルだけみたいな発言になっています。

 

何だか、民主党のTPPは悪いTPP、自民党のTPPは良いTPPという頭の悪いネトウヨ発言みたいな理屈ですよねコレ。

 

お前は何を言ってるんだ?

現在の「生きにくさ」は高齢者のせいではない


 社会が激変したという認識が正しいとしても、要因は複合的です。格差の拡大、社会的な不公平感の拡大は、経済のグローバル化、雇用システムの変化、社会保障の配分のあり方、税制が複雑に関係しています。総じて政治と社会の問題であり、激変の理由を分析しないまま、高齢者や正社員を「仮想敵」と見なして配分を変えても問題は解決しません。

 

日本と英米は80年代以降、規制緩和の旗印のもと、税金を引き下げ、市場主義を強めました。一方、他の欧州各国は社会保障による分配を重視してきました。日本が今これだけきつい社会になったのは、税による分配が弱いままだったから、ということに尽きます。私は、80年代に道を誤ったと考えています。

 その上で90年代に雇用制度を変え、2000年代に入っても社会保障による分配を上げられず、リーマン・ショック後も社会システムを変えないで、給付抑制で乗り切ってしまった。現在の変化は決して高齢者のせいではなく、その結果を高齢者に背負わせてはいけません。

 

本当の敵は高齢者ではなく“雇用を破壊した人たち”? 経済プレミア 毎日新聞

前半部分、

社会が激変したという認識が正しいとしても、要因は複合的です。格差の拡大、社会的な不公平感の拡大は、経済のグローバル化、雇用システムの変化、社会保障の配分のあり方、税制が複雑に関係しています。

これについては正しい認識だと思いますし、

総じて政治と社会の問題であり、激変の理由を分析しないまま、高齢者や正社員を「仮想敵」と見なして配分を変えても問題は解決しません。

原因の分析は重要だとも思いますが、

なぜ2000年代に入っても社会保障による分配を上げられなかったのかという問題に関して原因分析はありません。

無論、原因はデフレ不況と緊縮財政のせいなわけですが、その辺りの認識は欠落しているようですし、経済のグローバル化を問題点として挙げながら、これを是正するような認識は皆無のようで、挙げるだけ挙げてほったらかしです。

その上、

リーマン・ショック後も社会システムを変えないで、給付抑制で乗り切ってしまった。

そもそも乗り切れてねぇし、乗り切れてないから今の貧困問題に繋がってるし、っていうか、これ以上まだ変えるつもりですか?

経済成長させて国民の所得を増やして…という、至極真っ当な手段は頭になく、社会システムを変えれば何とかなるというような認識をお持ちのようです。

 

結局、貧困問題は経済問題に直結しているという認識が欠落してるんじゃないか、と思いきや、以下のような発言もしていらっしゃいます。

 

◆若者に公共住宅提供を
 社会が持続しないという懸念があります。人口が減り、経済が衰退している。日本の経済成長を支えたのは、ある程度の教育水準を提供して、戦後復興にかかわるような教育投資をしたからだと思います。何もせずに高度成長を果たしたわけではありません。家族や企業なりが教育や奨学金に投資して、若者を支えて成し遂げたと思う。今も経済成長を掲げているが、思いの外成果が上がっていない。若者を支援対象にしなければ、経済成長や日本の復興はないと思います。このままゆるやかに経済を維持していくのか、低成長か、マイナス成長を続けるか、後進国に戻ってしまうのか。インフラが維持できないので、地方の自治体は消滅していく。豊かな地域文化を維持継承する人はいなくなってしまうのではないでしょうか。

 

<ロングインタビュー> 【雇用】藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事 東京新聞

 

ハイ、とても↑のような発言をする人の言説とは思えませんね。

経済成長が必要と言ってみたり、経済成長を否定してみたり…。

何が言いたいんでしょうか、この人?

 

サッパリ解りません。

恐らく、その時の自分の思いつきを正当化するような理屈を、その場の勢いに任せて喋っているだけなのでしょう。

 

そもそも、貧困問題は経済問題と直結しています。

余程の独自理論でもない限り、貧困問題を語る上で経済問題・労働問題は避けて通れません。

要するに、貧困問題と経済問題は、論理的に不可分なものなのです。

 

藤田氏の暴走は続きます。

◆社会の「出血」止めないと
 これまでのように、サラリーマンの人たちを減税して助けてあげれば、自然と何も考えることなく豊かになったという時代ではありません。増税してでも分配をしないと、社会が維持できない。そもそも高齢化に伴い、分配しなきゃいけない人たちが増えている。

オイオイ、財務省か増税派の自民党議員みたいな言い分だなコレ。

もっとも、野党にも増税派はたくさんいますけど。

頑張って働いて稼げば報われるという原理的な資本主義の思想からは抜け出さないと、もう立ちゆかないと思う。

!!!???

頑張って働いて稼いでも報われないような社会で、誰が働いてくれるんだよ?

日本をどうしたいの?この人??

 僕は比較的、もう絶望的というか、結構厳しい局面に立たされていると思っています。10年、20年で転換できなければ、日本経済全体が沈んでいくと思う。傷口が広がりすぎている。早く出血を止めないといけないんですけどね。社会を持続可能なものにしていかないといけないよね、と世論形成なり、現状を伝える努力なりを今、必死にしています。

 

<ロングインタビュー> 【雇用】藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事 東京新聞

抽象的な表現で不安を煽り、最後は財務省が好きそうなロジックで〆る。

‟社会を持続可能なものにしていかないといけない”

なんて、財務省に洗脳された議員とか、財務省の提灯記事でよく見かけるフレーズです。

◆みんなで税払い、みんなに還元を
 問題はやはり税なんだと思います。分配がうまくいっていないから問題があると思っていましたが、今は少子高齢社会で必要な人たちが山のようにいる。どこに水をいれても枯れてしまうような状態で、絶対的に税が足りない。それははっきりしている。分配をするという議論から、ちゃんと税を取りながら再分配していくのかということを考えていかないといけない。財源が限られているという前提での議論は、争いが起きます。子どもが大事、若者が大事とか。あっち削れ、こっち削れと足の引っ張り合いをしてしまう。内戦状態になる。これは不毛です。みんなが必要なら、どれぐらい税金必要なのか。じゃあどの層に働きかけようかねという順番になる。子育てに必要なら、高齢者の予算を削れ、となりがち。若者の方が価値的に大事とか、まったく根拠なく言ってしまう。教養のなさというか、全体像の見えなさには絶望しかない。支援の現場にいると、どの層にも分配が必要だということが分かる。感情論で動いたり、利権も含めて、ある一定の層にしか税をつぎ込んでいないのは問題です。

 

<ロングインタビュー> 【雇用】藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事 東京新聞

もうこの辺りになると、言ってることが無茶苦茶です。

財源が限られているという前提での議論は争いが起こるのは不毛だ、と言いながら、結局財源問題を前提とした論理を展開していく。

しかも、税、つまり財源が足りないということがハッキリしていると言っているのに、再分配を上手くやれば何となる、という結論。

利権という抽象的な敵を作って、利権を貪る一定の層への分配を減らせと言いたいのでしょうが、結局減らした分の財源を若者や子育て、高齢者問題の間で奪い合う結果に変わりはありません

解決策を提示しているつもりなのかもしれませんが、全く解決策になっていないわけです。

っていか、財務省と全く同じロジックです。

 

さらには、

大企業や富裕層から取れみたいな、手あかのつきまくった議論が意味がないということも分かってきた。低所得者層、中間層も含めて税をみんなが払って、みんなに返ってくるという仕組みが必要ということもわかってきた。そういう層が払って圧力をかけていく、あなたも払いなさいよと。その方が合理性がある。

 

<ロングインタビュー> 【雇用】藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事 東京新聞

それって消費税のことですか?

それとも人頭税かな?

累進課税制度を否定するわけですねこの人。

っていうか、消費税なんか払ったところで、大企業や富裕層が圧力感じるわけないでしょ?

この愚論のどこに合理性を見出せと?

 

低所得であればあるほど税を取ってくれといって、還元してくれと言わないと。低所得、中間層の投票行動、税の意識がめちゃくちゃだと思います。最終的には大企業、富裕層が払っていくしかありませんが、下の人も含めて税を払わないと。

 

<ロングインタビュー> 【雇用】藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事 東京新聞

めちゃくちゃなのはお前だ。

低所得であればあるほど税を取れって、

低所得者にタヒねと言っているようなものです。

 

 

 

…。

 

 

 

 

あれ、おかしいな?

 

 

 

この人、貧困問題に取り組んでいる人のはずですよね?

 

 

 

そして、藤田氏の主張の迷走っぷりは、混迷を極めていきます。

 消費税は最後の議論にしたいですよね。まずは所得税の累進性を高めたいです。あとは資産課税を含めて、みんなが払う仕組み。非課税世帯はたくさんいるが、みんなが税金を払っているから返ってくるという印象を植え付けないといけない。

 

<ロングインタビュー> 【雇用】藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事 東京新聞

さっき累進課税を否定したと思ったら、今度は累進性を高めたいとはこれいかに

消費税の議論は最後にしたいと?

さっき貴方、

低所得者層、中間層も含めて税をみんなが払って、みんなに返ってくるという仕組みが必要

とか言ってたじゃん。

最後どころか、割と早めに出てましたよ?

日本社会で不思議なのは、公営住宅に入っている高齢者、障害者、母子家庭ですら税金払っても意味が無いという。公営住宅というかたちで税金を受けているのに。水道などのインフラも税金で維持されているが、なぜか払っても意味が無いというのが蔓延している。税金をなぜ取っているのかというそもそもの原理が理解されていないんでしょうね。節税というのがまかり通るし。一回出したら何に使われてもしょうがない、という感覚が強い。こんなに税金の使い道を知らない人が多い国ってのは、珍しいのではないでしょうか。

あのね、そりゃ貧困層からしたら、

何で自分の生活だけでも大変なのに、これ以上税金盗られなきゃいけないんだよ

って思っても不思議はないでしょう?

 

彼等には、税金なんか払ってる余裕なんか無いんですよ。

その辺りの心情くらい、忖度してあげなさいよ。

貧困問題の現場で働いてるのなら、そのくらい解るでしょう?

っていうか、ホントに貧困層に寄り添って活動してるのか、疑いたくなってしまいます。

 

しかも、

印象を植え付けないといけない

って、アンタコレ、完全にエリート層の発想ですよ?

国の舵取りをしているのはエリート層なんですよね。いろんな階層の出身者がいない。勉強すれば豊かになれるとか、勉強すればその階層に位置づけられるとかが、この20年、30年なくなっている。開成、灘とかある一定の学校出身者がエリート層を占めている。国民生活や市民生活が基本的によく分かってない。実体験が伴わないから、具体的な政策立案が出てこない。

 

<ロングインタビュー> 【雇用】藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事 東京新聞

国民生活や市民生活が基本的によく分かっていないのって、貴方のことなんじゃないですか?

 

 

ここまで検証してみて解ったことは、基本的に彼の発想は財務省や増税派の議員連中と同じってことですね。

しかし、財務省の発想を踏襲してしまうと、貧困問題を解決することは絶対に不可能。

結果、言ってることが無茶苦茶になってしまう。

 

 

一応フォローもしておきますが。

しかし、一応藤田氏の名誉のためにリンクを貼りますが、貧困問題に関するルポを数多くこなしており、

貧困問題の深刻さを社会に訴える仕事は、大変すばらしいものです。

 

経済プレミア 藤田孝典 毎日新聞

 

にも拘わらず、貧困問題解決に極めて合理的な手段である松尾教授の主張を中傷するのか?

まともな理由の提示もなく、このような発言をするのは、批判ではなく中傷に類するものです。

日本の貧困問題を何とかしようと、本気で思っているのか?

疑ってしまいます。

何か持論があるのかと言えば、過去の彼の発言から類推すれば、

 

・社会システムを変える(=構造改革)

・増税する

 

…あれ?

構造改革と増税ですか?

 

そうなると、彼の論理展開は、、

 

貧困問題は他人事ではない、と国民の不安を煽る

そうならないように構造改革、増税を(しかも低所得者からも容赦なく徴収)すべき

 

 

 

…。

 

 

 

 

…ある人物と、この方の主張がダブるのは、私だけでしょうか。

 

https://www.minnanokaigo.com/news/special/heizotakenaka1/

つまり、貧困問題は政権批判を目的とした社会運動(当然、そういう主張をしている日本共産党の運動も含まれると思われる。)の道具であり、「貧困問題を悪化させている政治が悪い」と言いたいだけ……藤田氏の主張は、そのように読める。いや、そうとしか読めない。

さすが、2013年、自民党が政権を奪還した年に厚生労働省社会保障審議会特別部会委員を努めただけのことはある。見事に自民党シンパなんだろう。安倍自民党が夏の参議院選挙で、徹底的に共産党をdisったのを彷彿とさせる。

 

稲葉剛氏による藤田孝典氏への静かな反論に、概ね同意な件【ブラッシュアップ版】 長谷川哲の言いたい放題 長谷川哲

<補足>

この記事で思いっきり叩いた藤田孝典氏ですが、2019年12月4日の段階で反緊縮派に覚醒。

元々貧困問題に取り組まれてきたということからも、ようやく本道に立ち返ってくれたかと本当に嬉しく思います。

今後も、彼の言動には注視していきたいと考えています。

 

2019年1月3日追記