勤務先の大学では、教職員のトレーニングとして教育に携わる様々な分野のゲストをお招きしてディスカッションをする機会が多くあります。
この日のトピックは「インクルーシブ教育」について。
「皆さんの生きている世界が映画の中の世界だとしたら、私の生きている世界は本の中の世界と言えるかもしれません。」
こんな一言からスタートした今回のセッション。
ゲストの横には、美しい盲導犬がびったりと寄り添っています。
「私が18歳で海外留学をしたいと言ったとき、家族に大反対されました。目が見えないあなたが、言葉も文化も違う海外に行くだなんて。そんなことができると思うの?」
そう家族に言われた際、こう返事をしたと言います。
「私だって経験したことがないのだから、できるかどうかは分からない。もしできなかったとしても、それは目が見えないからできないわけではない。やったことがないからできないだけ。」
世の中にできないことがあるのだとしたら、それは能力の問題ではなく、経験値の問題。
そう仰ったこの日のスピーカーの顔が脳裏に焼き付いています。
まさに、モンテッソーリ教師養成講座にて、モンテッソーリアンのチューターが口にしていたことでした。
「子どもは能力がないわけではない。経験値が少ないだけ。」
この日のトピックは「インクルーシブ教育」。
スペシャルニーズに焦点が当てられたものの、実際には子育てに通じることばかりだと気付きました。
「どのようにニーズがある人と向き合うべきか。」
という質問に対し
「必要なことに手を差し伸べてほしい。」
と答えかけながら、こう付け加えていらっしゃいました。
「でも一番大切なことは、出来ないはずと思うのではなく、出来るはずだと信じて欲しい。」
まさに、子育てにおいても、最も必要なことは、我が子を信じることだと感じている母。
人はみなニーズがそれぞれあるもの。
それぞれのニーズに向かって挑戦を繰り返し、どんどん経験値を高めていくことで、自分は出来るのだと子ども自身も信じられるようになっていくことを8年間の子育てから学びました。
18歳で留学を決めた時、彼女は確信していたと言います。
自分は絶対にやり抜けるということを。
なぜなら、今まで様々な課題にチャレンジし、一つずつクリアーしてきた経験が、彼女の背中を押したそうです。
この日のディスカッションを通じて、どこか自分の中に新たな息吹を吹き込んでもらった感覚を覚えたこの日。
「自分の人生にreal valueをもたらしてくれたのがインクルーシブ教育だった」
いつも自分より周りを優先するカナダ出身の同僚。
彼が彼である理由を探し続けていた母。
ここに答えがあったのだと気付きました。
インクルーシブ教育の探求はまだまだ続きます。
ご訪問、誠にありがとうございます