「オールド・ドッグ」~コメディの円熟と悪ふざけ | ゴダールよりもデ・パルマが好き

ゴダールよりもデ・パルマが好き

映画監督を目指す大学生、清原悠矢の映画生活

「オールド・ドッグ」
2009年・アメリカ・Old Dogs
監督:ウォルト・ベッカー

ゴダールよりもデ・パルマが好き-オールド・ドッグ1


















なんだか無性に、呑気なアメリカン・コメディが見たくなって、
レンタルビデオ屋のコメディの棚に立ってみると、前々から
見たいと思っていた「僕の大切な人と、そのクソガキ」や
「かぞくはじめました」「僕が結婚を決めたワケ」と言った
気分にぴったりな映画が並んでいたのだけれども、
コメディ映画なんかいつもだれも借りていないのに、
どういうわけかどれもレンタル中だった。
仕方なく、やたらと本数だけは多いのにほとんど借りられて
いなかったこの作品をいまだに「パルプフィクション」の
イメージしかないトラボルタの顔に誘われて借りてみた。

ゴダールよりもデ・パルマが好き-オールド・ドッグ2







期待どおり、ほどほどに面白い良質なコメディだった。
アメリカで公開された時は批評家筋から嫌われたというよりも
完全にコケにされていたが、これほどの映画を駄作扱いするとは、
アメリカ映画もまだまだ大丈夫だな、という妙な気持ちになってしまう。
このほどほどに面白い、というのは極めて職人的な技術のいる
ものであり、日本映画にはこれほどの円熟は見られない。
日本映画界には傑作か駄作かの2種類しかなく、
この作品のような安心して子供に見せながら
自分も楽しめるような健康的な作品は見当たらない。

アカデミー賞や映画祭なんか狙うつもり全くありません、
というただ観客を楽しませたいという姿勢も潔く、
脚本もそのためだけに全神経をつぎ込んでいて、上手い。
ただ、演出はお世辞にもうまいとはいえず、テンポが良すぎるために、
十分にタメを作りきれていなかったりするのは勿体ない。
また、過剰なまでの顔芸や体を張った軽はずみなネタが多いのは、
現場の中が良すぎたことの功罪かもしれない。

ゴダールよりもデ・パルマが好き-オールド・ドッグ3








ジョン・トラボルタとロビン・ウィリアムズという異色ともいえる
2人が絶妙なケミストリーを生み出していて、まるで漫才コンビのようだ。
名優2人が自ら「オールド・ドッグ」の代表として、自虐的に
年寄りネタをしつこいまでに披露していくのがとても面白い。
マット・ディロンが間抜けなボーイスカウトとして登場し、
2人と争うキャンプのシーンには爆笑してしまった。
ディズニー映画らしく本当の悪人が出てこないのも、この作品の
あくまでも、悪ふざけ、という楽しい雰囲気をぶちこわしにすることがない。
子供たちがどんな状況であっても2人を信じているのもまた良い。
クライマックスの「I knew it」というセリフがすべてを言い表している。

〈70点〉