小説を公開します!
脚本とは方法論が全く違うので、難しい。
不定期に次のページをアップしていきますので、
暇なときにでもお読みください。
タイトルがついていないので、良かったら、考えてください。
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夜が近づいていた。池の向こうにゆっくりと夕日が沈むにつれて、僕の緊張はしだいに高まってきた。
彼女は僕の隣に腰掛けて、前を向いたままじっと夕日を見つめている。
「夕日を見に行こう」
彼女を誘ったのは僕だった。だが、僕は夕日を見ずに、じっと彼女だけを見つめている。
紅く染まった彼女の顔に陰りが見え始めるのがわかった。あっという間に、彼女の目の中は暗くなり、夕日と共に 僕も吸い込まれてしまいそうになる。彼女から目を離し、前を見る。近くにあるひときわ目立つタワービルの光が一斉に点いたように見えた。大通りを走る渋滞の列のエンジンやクラクションの音がかすかに聞こえ始める。
静かすぎる。何か話さないと。
僕の頭の中で様々な文字や文章が入り乱れる。昼に読んだ恋愛マニュアルに書かれていた常套句が何度も頭をよぎるが、そんなものを口にすることがいかに馬鹿げたことであるか、わかるほどには、恋愛経験があるつもりだ。
彼女が僕の思考回路の先を越した。
「きれいな夕日でしたね」
あまりにもありきたりだが、会話の初めとしては悪くない言葉だった。
彼女は僕のほうを向いている。
もちろん、僕は彼女のほうを向いていない。
その声はどこか他人行儀な響きを持っていた。彼女も緊張しているのだろう。
「公園なんて久しぶりに来ました」
僕の目をしっかりと見て話しているのがわかる。緊張しているのは僕だけなのかもしれない。
思い切って彼女のほうを向いた。だが、彼女の目を見ることはできない。
代わりに彼女が腰掛けている今にも朽ち果てそうなベンチを見た。
「今の時代に、こんなに暗い場所があるとは思いませんでした」
彼女の今の表情を思い浮かべることはできた。彼女の目や顔がベンチに映った。
かわいい。心の奥底から溢れ出る純粋な気持ちだった。それは、彼女の顔を見なかったからこそ、湧き出てきた感情なのかもしれない。彼女の本当にかわいい顔を見てしまっていたら、あまりにもドギマギしてしまって、そのような感情も湧き起こらない。ただ、不必要に焦ってしまうだけだっただろう。
彼女との距離がこんなに近いのは初めてかもしれない。いつでも僕は彼女を遠くに見るばかりだったからだ。
彼女は僕の長い闇に光をもたらしてくれた。光の後の闇は暗かった。しかし、闇の後の彼女という光はもっと明るかった。僕には神々しすぎて近づけなかった。近づけなかったのは怖かったからかもしれない。そして、光を再び失うことは何よりも怖いことだった。
だが、今、彼女は僕の隣にいる。