概況
この1週間(1月22日~26日)のNY株式市場は、マクロ経済指標もほぼ想定通りの内容であり、一方で、佳境を迎えてきている第4四半期業績発表も、強弱両方ある中、全体としては強気トーンが勝っている状況で上昇を続けました。
1/26 | QTD | YTD | WTD | MTD |
NYダウ | 1.11% | 1.11% | 0.65% | 1.11% |
S&P500 | 2.54% | 2.54% | 1.06% | 2.54% |
NASDAQ | 2.96% | 2.96% | 0.94% | 2.96% |
R.2000 | -2.40% | -2.40% | 1.75% | -2.40% |
NASDAQ100 | 3.54% | 3.54% | 0.62% | 3.54% |
1/26 | 1/19 | |
10年債金利 | 4.14 | 4.12 |
2年債金利 | 4.35 | 4.38 |
原油(WTI) | 78.01 | 73.41 |
金(NY Spot) | 2,018.52 | 2,029.49 |
為替(US$/JPY) | 148.15 | 148.12 |
S&P500とNASDAQは13週で12週上昇となっています。また、S&P500とNASDAQ100は5日連続で最高値を更新し、金曜日に小休止。
NYダウも19日から2日連続で最高値を更新し、2日休んで、再び2日連続で最高値更新となっています。
金曜日に発表された個人消費支出は予想より若干強めでしたが、FRBがインフレ指標として重視しているPCE価格指数は、対前年比で+2.6%、コア指数も+2.9%と順調にインフレは落ち着きつつあるように見えます。
雇用市場は依然堅調であるようなので、1月30・31日に実施されるFOMCで利下げすることはないが、3月のFOMCでの利下げ織り込みも低下傾向にあるが、5月のFOMCでは、ほぼ確実に利下げがあると市場は予想し、織り込んでいます。
上昇を続ける株式市場は、出来高を見ると増えるどころか減少傾向にあり、この上昇に機関投資家が参加しておらず、様子見をしているように見えます。
これは、市場に過熱感がないことを示しているので、大きな下落要因の可能性のあるものが見えない中では、この上昇はまだ続く可能性があります。
もちろん、スピード調整的な下落は時折発生するかと思いますが、大きな下落につながることはないかなと思っています。ただし、現在見えている状況の外から想定外の事象が発生した場合は、全く話は別です。
大きな懸念が無い時には、サプライズで新たな問題が発生するのが常ですので、楽しみにしておいてください。
市場は、適度に下落し、損をする人がいて、逆に得する人もいて、成り立っています。そうしたことを乗り越えて経済成長とともに株式市場は上昇していきます。
下落も上昇するために必要なものと考えれば怖くはなくなります。
セクターの状況
S&P500 Sector | WTD | MTD | QTD | YTD |
Energy | 5.15% | 0.35% | 0.35% | 0.35% |
Communication Services | 4.52% | 8.40% | 8.40% | 8.40% |
Financial | 1.88% | 2.34% | 2.34% | 2.34% |
Technology | 0.93% | 5.63% | 5.63% | 5.63% |
Industrial | 0.87% | -0.65% | -0.65% | -0.65% |
Consumer Staples | 0.83% | 1.14% | 1.14% | 1.14% |
Utilities | 0.42% | -3.45% | -3.45% | -3.45% |
Materials | 0.29% | -4.00% | -4.00% | -4.00% |
Healthcare | -0.23% | 2.04% | 2.04% | 2.04% |
Real Estate(REIT) | -0.51% | -5.00% | -5.00% | -5.00% |
Consumer Discretionary | -1.40% | -3.47% | -3.47% | -3.47% |
PHLX Semiconductor | -0.77% | 3.99% | 3.99% | 3.99% |
テクノロジー系のグロースセクター中心に市場は上昇している、という印象でしたが、実際には、最も上昇したのはエネルギーセクターでした。
上から2番目のテーブルを見ていただくと、この1週間で原油先物(WTI)が、$73.41→$78.01と久々に大きく上昇しています。
今月、既に原油価格は8%も上昇しています。これは、地政学的要因の影響もありますが、むしろ需給関係によるものです。米国の原油在庫が想定以上に取り崩されていたことと、中国の景気刺激策で中国の需要が増加するとの思惑による影響が大きいかと思われます。
2番手が、コミュニケーションセクターであることは、メタ(META)やアルファベット(GOOGL)が、この週に最高値を更新したことなどの影響によるもの。同セクターの主要2銘柄が絶好調なので、当然と言えば当然の上昇。
一方で、同じくグロースセクターである一般消費財・サービス(Consumer Discretionary)セクターは、テスラ(TSLA)の急落の影響を受けて最も劣後したセクターになっています。
個別銘柄の状況
Magnificent 7 | WTD | MTD | QTD | YTD |
MetaPlatforms | 2.79% | 11.35% | 11.35% | 11.35% |
Amazon.com | 2.43% | 4.73% | 4.73% | 4.73% |
Alphabet | 3.97% | 8.95% | 8.95% | 8.95% |
Microsoft | 1.32% | 7.42% | 7.42% | 7.42% |
Apple | 0.45% | -0.06% | -0.06% | -0.06% |
Nvidia | 2.59% | 23.24% | 23.24% | 23.24% |
Tesla | -13.64% | -26.25% | -26.25% | -26.25% |
その他の個人的注目株 | ||||
Netflix | 18.11% | 17.16% | 17.16% | 17.16% |
Advanced Micro Devices | 1.73% | 20.24% | 20.24% | 20.24% |
Vertex Pharmaceuticals | -1.11% | 5.72% | 5.72% | 5.72% |
Johnson & Johnson | -1.35% | 1.76% | 1.76% | 1.76% |
United Healthcare | -0.07% | -4.42% | -4.42% | -4.42% |
Zoom | -1.88% | -5.80% | -5.80% | -5.80% |
Salesforce.com | -0.33% | 6.38% | 6.38% | 6.38% |
Catapillar | 4.96% | 1.27% | 1.27% | 1.27% |
Hyattt Hotels Corp | -0.11% | 0.02% | 0.02% | 0.02% |
Marriott International | 3.39% | 7.13% | 7.13% | 7.13% |
American Airlines Group | 10.76% | 10.12% | 10.12% | 10.12% |
United Airlines | 9.61% | 3.13% | 3.13% | 3.13% |
Deere &Co | 2.85% | -1.56% | -1.56% | -1.56% |
Chevron Corp | 4.85% | -0.01% | -0.01% | -0.01% |
J.P.Morgan | 1.16% | 1.28% | 1.28% | 1.28% |
マグニフィセント7の銘柄が市場を牽引する状況はあまり変わっていないです。
上のテーブルで緑でハイライトした銘柄はこの週にAll Time Highと引け値ベースの最高値を更新した銘柄です。
マグニフィセント7の7銘柄のうち4銘柄が最高値更新している状況ですから、インデックスが大きく上昇しているのは当然と言えば当然です。
注目は、重機・建機のキャタピラー(CAT)や、ロッジング(ホテル)のマリオット(MAR)を最高値を更新していることです。景気の減速が懸念されていましたが、ソフトランディングの可能性が高くなってきていることなどが影響しているかと思われます。
半導体セクターは、前週の台湾セミコンダクターの好決算と強気のガイダンスで、半導体セクター全体の底打ちが示された格好になりました。そのため、AI用の最先端のものだけでなく、セクター全体が上昇しています。
韓国のSKハイニクスが、想定外の黒字転換を発表したことも明るい材料になっています。(同社はNVDAのAIアクセラレーターと共に作動する広帯域メモリー(HBM)のリーダー企業でもあります)
最先端の分野は、ASMLの好決算などもあり、更に期待感が高まり、エヌビディア(NVDA)は留まることを知らないかのように上昇を続けています。
一方、売上高は予想を越えたものの、収益が未達となり、収益性の減少も示されたテスラ(TSLA)は、次世代EVへのフォーカスのため、2024年の成長率は大きく減退するとのCEOのコメントもあり、大きく下落しています。
TSLAは、2021年11月に付けたAll Time Highから‐55%のレベルと、他のマグニフィセント7の銘柄に出遅れています。
今、何をすべきか
インフレ鎮静化は、スピード感はともかく、進んでいます。景気は想定したほど鈍化せず、ソフトランディングになりそうな気配が現時点では漂っています。
企業業績に関しても、産業の血液ともいうべき半導体セクターがセクター全体として底打ちし、上昇に向かうことが想定される状況になっています。
2023年の米国GDPは、名目で+6.3%増と、中国の+4.6%を上回り、中国との差を拡大し、世界一の経済大国の地位を盤石なものとしています。
こういうのを見ると、当面は海外株の投資は米国中心で良いかなという気になります。
上でも述べましたが、上昇のスピードが速すぎる以外に大きな懸念材料がなく市場が上昇している時には、想定外のショックも起きることがよくあります。
これは理屈ではなく、経験知でしかないので、全く合理的ではありません。とはいえ、油断している時のネガティブ・サプライズは大きなショックになりやすい。
常に、そのようなことが起こった際にどう行動するかを考えておいた方が良いです。
もちろん、何もしないで静観し、時を待つというのも、非常に有効な対策です。(私の場合、これが一番多い)
杞憂で終わってくれるのが一番いいですけどね。
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<参考図書>(抜粋)