6月25日
店の掃除をして落ち着いたところで久しぶりに読書をしました。読書と言っても漫画です。
1983年、北冬書房から出た、つげ義春「夢の散歩」です。
北冬書房とは「ガロ」の青林堂を辞めた高野慎三さんが、漫画を描かなくなったつげ義春さんに新作を描かせる為につくった出版社だそうです。この2人の関係もおもしろいです。やる気のないつげさんの才能に惚れ込んだ高野さんが、お金もないのに売れないと分かりきっている雑誌をつくるわけです。高野さん自身がまず、つげさんの新作を見たかったのだろう。儲ける為にやるのが普通ですが、誰も儲からない、高野さんというのも相当凄いなぁと思います。
つげさんにぴったりの寒々しい社名、そして雑誌の名前も「夜行」と、アングラ感満載で、古本屋でもし見つけたら中を開けなくても欲しくなります。
つげさんの全盛期はガロに作品を発表していた60年代の後半と言われてます。その作品群、特に「ねじ式」は、それまで漫画に興味の無かった文化人、芸術家などに絶賛されたそうですが、肝心の漫画好きには全く響かなかったそうです。「ほんの一部の人間には受けが良いかもしれないが絶対に売れない」というのがつげ義春の評価です。ですからつげさんは注目された後も、マガジン、サンデー、ジャンプなどのメジャーな雑誌からオファーが来ることもなく、貧乏なままでした。
有名な作品はありませんが、この本に載せられている70年代から80年代の作品も良いです。
60年代の作品が世捨て人といいますか、厭世的なイメージがあるのに対して、70年代以降のものには人との交わりが描かれた少々俗っぽいものもあります。とは言えその交わりはつげ義春独特でアジがあります。
水木しげるさんの漫画で読んだことがあるんですが、つげ義春さんはすけべで怠け者らしいが、それだけじゃなく対人恐怖症や赤面症など心がヤワなところもあるらしく、だからこそあんなおもしろい作品が描けるのだろうと思います。僕にはつげ義春さんのような発想はとてもじゃないが出来ないので、一生、読者に徹します。思えば高校生の頃から読み出し、現在ますますおもしろいというのは、ほんと驚きです。
僕は、もすこし攻撃的な性格なのでつげさんの漫画の弱々しい主人公には同化できない筈なのに、それでも読んでいて心地良いのは、懐かしくもわびしくさびしい情景にシンパシーを覚えるのだろうか。
マイナーなつげさんの作品の中から敢えてさらにマイナーなものを適当に数点、「夢の散歩」からではなく、エッセイ集の中よりご紹介致したいと思います。
行商人
旅人と渡し。
長閑な光景、個人的には特に上の女子高生が良いです。
上の女子高生と同じく、一見するとつげさんぽくないように思われるかもしれませんが、これも官能的で非常に良いですね。「夢の散歩」でも温泉旅館の仲居さんとの下手くそな絡みが描かれた作品があります。
つげさんはカメラが趣味で漫画の依頼が全くない頃、一時期、ピント商会という中古カメラ売買の会社をつくって、壊れたカメラを安くで買ってそれを直して高くで売っていたそうです。
この作品も大変おもしろいと思います。
商品案内
今週もTシャツを少し店頭に出します。
その中から80年代のチャンピオン、フットボール関係のものを2枚。
チャンピオンの定番です。サイズはMです。
それとこちらはオールコットンの適度に色褪せした黒のボディーです。
サイズはLです。
どちらも目立つダメージはございませんが、コンディション、価格等、店頭にて宜しくお願い致します。