タイタニック・ジョークというのがあった。

 

 ある豪華客船が航海の最中に沈みだした。船長は乗客たちに速やかに船から脱出して海に飛び込むように、指示しなければならなかった。船長はそれぞれの外国人乗客にこう言った。

アメリカ人には「飛び込めばあなたは英雄ですよ」

  (アメリカ男はヒーローになることを夢見る)
イギリス人には「飛び込めばあなたは紳士です」

  (イギリス男はジェントルマンでなくてはならない)
ドイツ人には「飛び込むのがこの船の規則となっています」
  (ドイツ人は規則に厳格だ)
イタリア人には「飛び込むと女性にもてますよ」

  (イタリア男は女にもてることが最優先だ)
フランス人には「飛び込まないでください」

  (フランス人はヘソ曲がりだ)
日本人には「みんな飛び込んでますよ」

 

 

 人種的偏見、民族的レッテル貼りではないかという批判はあり得るが、それはともかくとして、このジョークが最初に流布したのは何十年前か(何年前ではない)定かではないが、現在もあまり変わっていないとはいえるだろう。、

 煙草の規制がいい例だ。日本ではほとんど喫煙が野放しだった。分煙や禁煙の導入、煙草広告の規制は欧米諸国に遅れに遅れて導入された。「他の国はやってますよ」で始めたわけだ。

 

 「他の国は始めますよ」でやっと動き出したのが、化石燃料を動力とする自動車の規制だ。

 

 欧州をはじめ、世界最大の自動車市場を誇る中国、米カリフォルニア州などが、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売を2030~2040年にかけて禁止する政策を打ち出してきている。

 

 さらに2020年11月17日には英国政府が2035年にガソリン車、ディーゼル車の新規販売を禁止するとしていた計画を5年早めて2030年にし、HV車に関しても2035年禁止を維持。温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標の達成に向け、EVの普及を推進する方針を固めた。

 

 

 イギリスの発表が11月17日、日本はその2週間後にこんな発表。

 

 しかし日本の場合、発電のほとんどを火力に頼っている。おおよそ8割にもなる。

 こんな状況で電気自動車を強制導入したところで、クルマのマフラーから出る排ガスが発電所の煙突から出るだけではないか。

 電気自動車の導入で、電力需要が高まれば、手っ取り早く供給拡大できる火力発電への依存度がさらに高まれることも想定される。これでは、何の意味もない。

 

 では、水素で発電しながら走る(発電所からの電力供給に依存しない)燃料電池車の拡大を目指すのか。

 それとも火力発電を大幅に削減し再生可能エネルギーによる発電拡大を官民一体となって推進するのか。

 それらについての情報や方針が一切発表されないのはいったいどうしたことであろうか。その理由としては以下の二つが考えられる。

 

 ・他国との横並びで発表しただけで、そこまで考える知能はない。

 ・電気自動車のための電気需要拡大に対して、再び原子力発電の拡大を狙っているから、明らかにできない。

 

 どちらであろうか?