5年前、住民投票で否決され終わったはずの大阪都構想が、ゾンビのごとく息を吹き返してきた。

 https://news.yahoo.co.jp/articles/f394692413bd0b64f77a69914dbeddcfe6b21782

大阪都構想をめぐる大阪府と大阪市の法定協議会は19日、都構想の最終案を賛成多数で可決した。最終案は週明けに総務省へ提出する。都構想を主導する大阪維新の会は新型コロナウイルスの感染が落ち着けば、11月1日に是非を問う住民投票を行う考えだ。

 吉村知事は記者団に「住民投票はこれが最後になると思う。最後の審判に従う」と述べた。15年の前回の住民投票では、約1万票の僅差(きんさ)で否決された。

 

 バカバカしい。5年前も橋下が「これが最後、自分は政界から引退する」と宣言したではないか。後出しジャンケンという言葉があるが、維新の大阪都構想は「勝つまでジャンケン」と揶揄される所以である。

 

 では、大阪都構想とはどのようなものか、きちんと検証してみよう。

 東京都には区が23ある、これは誰でも知っている。意外と知られていないが、大阪市は24区ある。まさか東京への対抗意識で、「大阪は東京より区が一つ多い」と自慢するためかどうかは定かではないが、24区なのである。

 大阪都構想はこれを4区に再編するということだ。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53808840V21C19A2N10100/

 4区とは、淀川区、北区、中央区、天王寺区だそうだ。

 24区を4区にまとめれば、住民規模は平均6倍になる。当然ながら、これまでの区役所では手狭になって対応できないということになる。北区には現在の市役所がある。これは北区役所ということで転用できるだろう。

 では、現在の淀川区役所が、人口規模が数倍になる新淀川区の区役所として対応できるのか?中央区役所、天王寺区役所も同じである。

 さらに、誰にでも浮かぶ疑問、「残り20ある区役所の土地建物はどうするのか?」

 現在の市役所を北区役所にするなら、現在の北区役所はいったいどうするのか。それ以外と合わせて21の区役所はいったいどうするのか、まったく無駄になるのではないか?

 

 日経には一部答えが書いてある。

 移行に伴うコストを抑えるため、当面は特別区の庁舎を新設せず、現在の淀川区役所、大阪市役所本庁舎、中央区役所、天王寺区役所を活用する。庁舎を建てる場合と比べて初期費用を314億円抑えられるという。

ただ、区役所で職員を収容しきれない新淀川区は約2400人のうち約900人、新天王寺区は約2600人のうち約600人が新北区役所(現・大阪市役所本庁舎)に間借りする。計約1500人の職員がほかの自治体で勤務する異例の形となる。

 

 自治体職員が他の自治体の役所で間借り勤務する?これでどうやって業務効率化になるのか。「移行に伴うコストを抑えるため」にそうするらしいが、そもそも4区に再編などしなければ、余計なコストはかからない。

 さらに、

将来の庁舎建設などは選挙で決まる特別区長の判断に委ねる。

 

ということらしい。ようするに、24区を4区に再編。北区は現市役所を使うが、それ以外の淀川区、中央区、天王寺区は現区役所では狭くなるので新庁舎を建設することになる。いったい何がコスト削減なのか。さらに繰り返しになるが、残り21区役所の再利用、跡地活用の話は出てこない。無理に無理を重ね、無駄とムダが生まれるのが大阪都構想というわけである。

 

 大阪都構想など、かつて府知事であった橋下徹の「ないものねだり」に過ぎない。棚からぼた餅で府知事に当選した橋下徹。府知事になってみると権限の多くが大阪市側にあることに気がついた。大阪だけではない。京都市と京都府。名古屋市と愛知県。神戸市と兵庫県。広島市と広島県。政令指定都市には府県が保有している権限と財源が移されている。

 橋下はそれが気に入らなくなった。隣の芝生ならぬ離れた芝生が青く見える。それは東京都だった。政令指定都市がなく、知事の権限が移されない東京都知事が羨ましくて仕方ない。

 大阪都構想なんぞ、それだけのものだ。業務効率化だの、二重行政の排除など嘘、ウソ。

 だから上の日経記事にも出ている。

 

都構想は大阪市を廃止して特別区を設置。住民に身近なサービスは特別区が担い、広域的な業務は府に一元化する。26日に了承された案では、特別区は義務教育や保育・子育て支援、生活保護などを担う。一方、府が担当するのは広域インフラや港湾事業、大学、病院など。府・市が将来は府域全体での管理を目指す消防や水道も大阪市から移管する。警察や市町村との連携業務は引き続き府が担う。

大阪市の一部業務を府に移管するのに伴い、市の一般財源8600億円のうち2000億円の財源を府に移管する。法定協の議論を通じ、新制度への移行から10年間は、府から4特別区に年20億円規模を支出することが盛り込まれた。

 

 それ見たことか。住民サービスだけを特別区に残し、それ以外の権限・財源をごっそり府に移す。

 しかしこれ、大阪市内に居住する人にとっては、明らかにマイナスになる。大阪市の財源から2000億円が大阪府に移る。当然ながら、その2000億円は大阪市民だけでなく府全体のために使われることになる。

 

 これで大阪都構想に賛成する大阪市民、本当にいるのだろうか?