大阪市長選挙は前府知事の松井一郎、大阪府知事選挙は前市長の吉村洋文が当選した。

 

 この二人への批判はとりあえず置くとして、事実上「大阪都構想支持」をした大阪市の有権者はいったい何を考えたのだろうか。

 

 大阪都構想は、すでに2015年の住民投票で僅差ながら否決されている。

 都構想を唱えた橋下徹はすでに政界引退を表明、とっくに終わった話なのではなかったか。

 

 そもそも都構想など時代の趨勢に逆行している。

 「権力の分散」は三権分立だけではない。中学校の社会科授業で習う程度の話である。国会の二院制、裁判の三審制(ほとんど二審制だが)、地方自治もその一つだ。

 行政権をすべて国家が管理するのではなく、権限を国から都道府県へ、さらに市町村へというのが権力をより分散させ国民に身近なものにさせる大きな流れではなかったか。

 

 「タレント弁護士」としてテレビで名前と顔を売った橋下徹が、府知事選挙に立候補してみたら当選した。知事になってみたら、多くの行政権が市にあり、それが面白くない。そこで大阪市を分断し、権限を自らに集中させる野望を抱いた。都構想など、その程度のものでしかない。

 

 これも言うまでもないが、政令指定都市には都道府県の権限の多くが移譲される。政令指定都市は、かつては人口100万人が目安であったが現在は人口50万人に下げられ、より多くの市が指定を受けている。

 さらに90年代には中核市が創設され、人口20万人以上50万人未満の市も中核市の指定を受けることで、(政令指定都市ほどではないが)都道府県権限の一部が移譲される。

 これが時代と社会の流れだったのだ。

 

 都構想とは、大阪市を5つの区に分断し、大阪市が保有していた政令指定都市としての権限を大阪府が保有するというものである。

 維新の側やそれを支持する人々の主張とは、「大阪市と大阪府の二重行政をなくすため」とのことだ。

 では京都府と京都市、愛知県と名古屋市、兵庫県と神戸市、広島県と広島市も二重行政が問題なのであろうか。

 

 東京都には東京市はなく、東京市会議員もいないが、それぞれの区には区議会があり議員は選挙で選ばれる。、区長も選挙で選ばれる。人口規模を考えれば仕方あるまい。例えば世田谷区だけで人口は90万人、政令指定都市の規模である。住民に身近なサービスを提供するには、東京市よりも各区に役所を設置した方が効率的ということになる。

 

 大阪市を5つの区に分断したところで、それぞれの区に区議会議員を設置し、区長を選挙で選ぶなら、議員や役所の職員数など削減になるとは考えられない。ただ府知事の権限が肥大化するだけである。

 

 結局のところ、何も考えず、ただ「知っているから」という理由だけで投票する有権者があまりに多いということだろう。

 投票率も50%前後、民度が低いとしか言いようがない。