エセ保守やネトウヨがつける言いがかりに、「対案を出せ」ということがある。

 辺野古の工事は中止すればいい、対案は不要。

 憲法は改定などしなくていい、現憲法維持が対案。

 特定秘密保護法は不要、対案も不要。

 組織的犯罪処罰法改正案(共謀罪)も不要、対案も不要。

 

 いらない、というだけのモノなら対案もいらぬ。対案を出せというのは言いがかりに過ぎない。

 では北方領土問題はどうするか。解決を目指さず、このまま放置するのか。

 解決を目指すなら、対案があり得る。では、どのような方法があるのか。択捉からも国後からもロシアは出て行け、ロシア人はすべて出て行け、住宅もインフラも、施設はすべて日本のモノとなる、でロシアが応じるわけがない。では、どうするか。

 

 1998年4月、当時の橋本龍太郎首相がエリツィン大統領に解決策を提案した。川奈提案とも呼ばれる。

 即ち、択捉島の北東に国境を確認する。日本の領土であることを確認した上で、ロシアによる使用収益を認める。

 法的根拠がないわけではない。日本の民法では、たとえ不法占拠でも所有の意思をもって20年間占拠を続ければ時効取得が認められる。

 つまり、土地の領有権は日本、土地の所有権はロシア、あるいは現住のロシア人ということになる。名実ともに、という表現があるが、名と実を分離するわけだ。日本が名を取り、ロシア側が実を取ることになる。

 所有権を認めるだけなら、日本による統治・施政権が及ぶことになる。さらに踏み込んで、ロシアによる施政権を認めるか。川奈提案はロシアによる施政も認めたと言われる。

 例のないことではない。日本国内の米軍基地は、横田であろうと沖縄であろうと、日本の統治権は及ばない。日本であって日本ではないとも言える。

 歯舞・色丹は無条件で日本に返還され、択捉・国後については、日本とロシアの間に新たな条約を締結して、島の一部(あるいは大部分)にフェンスを設け、そのエリア内は特別区としてロシアの施政権を認める。あるいは、島全体を特別区としてロシア人の渡航や居住を認める。香港だって、中国に返還される時には、新たな制度を認めた。「1国2制度」とも言われる。そんな制度はあり得るだろう。

 

 自民党の先達たちは、このような解決策を模索してきた。安倍の愚行は、このような先達(安倍晋太郎も含まれる)の苦労に泥を塗るものだ。

 残念ながら、エリツィンはこの川奈提案の頃からアルコール依存症になったと言われ、話にもならなくなってしまい、より強硬派のプーチンが大統領に就任し、情勢が変わってしまった。

 

 北方領土(択捉・国後)は安易に放棄するのではなく、何十年かけても、この川奈提案を基にした解決を目指すべきであろう。安倍はプーチンと20回以上も面談して、いったい何を話していたのか。

 舐められっぱなしのバカ首相には無理な話ではある。