問題となった石原の「三国人発言」を再掲する。
「東京では、不法入国した三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返している。特に大きな災害が発生した場合には騒擾事件すら想定される。警察の力には限りがあるので、自衛隊も、治安の維持も目的として遂行してもらいたい」
問題点は三つある。
①三国人という言葉を使った件
②三国人が危険であると根拠なく決めつけたヘイトスピーチである件
③自衛隊の治安出動を求めた件
①に関しては、「三国人」は差別用語ではないが、使い方が不適切であると言える。
②に関してはすでに批判した。
③に関して、なぜ佐々が批判しなかったのか、不思議で仕方ない。
71年9月に起こった東峰十字路事件。佐々ら警察関係者にとって痛恨極まる事件からわずか5か月後、再び日本の警察が総力を挙げて対応しなければならない事件が発生する。
連合赤軍による浅間山荘人質立てこもり事件である。
事件の詳細についての説明は略すが、この事件でも警察は2名の殉職者を出している。
時の政府・自民党からは、自衛隊の治安出動を求める声が上がっていたらしい。これは佐々自身が語っていた。
東峰十字路事件は、神奈川県警の応援部隊30名が約500名もの反対派武装集団に囲まれ孤立してしまったことが悲劇につながった。浅間山荘に立てこもった犯人たちは人数は少ないものの殺傷能力の高い銃器を所持し、扱いにも慣れていた。
「警察だけで大丈夫か」、「自衛隊を出動させてはどうか」。こういう声が上がるのも無理からぬことであろう。
しかし、政府から自衛隊出動について打診を受けた警察側は、断固としてこれを拒絶した。
「自衛隊は外国からの武力による侵略から防衛する組織、国内の治安維持を担うのは警察の仕事。浅間山荘にこもった犯人を逮捕するのは我々である」。よく言えば警察としての誇り、悪く言えば縄張り根性、あるいは意地、面子と言ったところか。
そもそも、自衛隊という武装集団が安易に出動することはあり得ない。石原の発言は、佐々ら警察官僚がこれまで守ってきた「警察による国内の治安維持」という大原則に反するものであり、警察の誇り、意地、面子を踏みにじるものであった。
佐々は上記②に関して石原に同意し、③については触れず、「石原発言を支持する」と言ったわけである。
その数年後、佐々は石原の都知事選挙において選挙対策本部長を務めている。
なぜ警察をコケにした石原にそこまで尽くすのか、どんな利害関係があったのか、まったく不明であるが、いずれにせよ、ろくでもない奴としか言いようがない。