「勝った者が、負けた者を裁くというのは不当だ、むちゃくちゃだ。」
 上坂による、極東軍事裁判についての言葉である。上坂だけではない、そう言っているバカは少なくない。
 では、こう反問する。
 「勝った者が、負けた者から賠償金を取るのはいいのか。そちらの方がよかったのか。」
 日清戦争で、清から莫大な賠償金を巻き上げた日本に、それを非難する資格はない。

 日本は戦後急速な復興を遂げ、1956年の経済白書には「もはや戦後ではない」と記され、それが流行語となる。64年には東京オリンピック開催に成功する。
 もし、巨額の賠償金を課されていたら、このような急速な経済復興はあり得ず、あと10年、20年、食糧にもこと欠く窮乏生活が続いたであろう。その方がよかったのか。

 アメリカによる日本への攻撃は凄惨極まりないものだったろう。都市を焼き尽くされ、破壊され、原子力爆弾を落とされた。その上に賠償金を課されてはたまったものではない。
ただし、戦争を仕掛けたのはあくまで日本であり、連合国側にも人的被害は発生している。連合国側としては、戦争指導者に相応の責任を取らせるというのは当然の措置である。
 日本は、東條らを自らの手で裁く手間が省けた、東條らの汚いクビで済ませてもらえてありがたい、と思うべきである。