また、とんでもないヤブに遭遇してしまった。
 市立病院の紹介状を持って診察を受けに行った(はず)の総合病院。はるか以前、手術を受けた病院である。
 診察室に入り、紹介状を示し、鼻腔のポリープを切除する手術を受けたいと意向を言った。
 ところが、このヤブ(6号)、ノラリクラリとわけのわからぬことばかり言って鼻の中すら見ようとしない。やる気がないことを私にわからせようとするかのようだった。
 症状を訊かれたので、答えた。「鼻腔にポリープがあると診断されている。そのせいか、鼻の通りが悪いし、冬は風邪をひきやすい」。
 それに対して、「いや、風邪をひく原因はいろいろあるから、それが原因とは限らない。」などわけのわからぬ珍問答を繰り返す。
 「鼻腔にポリープがあるため、鼻から風邪をひきやすい」。そのようなことは医学的にあり得ないというのであろうか。
 結局、珍問答にしびれを切らした私は他を当たることにし、自ら席を立った。やる気のない医者の執刀で手術を受けたくもない。
 ヤブ6号はついに私の鼻の中を見ることすらなかった。
 このヤブ6号の行為は完璧な医師法違反である。医師法第19条にはこう記されている。「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」鼻の症状が悪いと訪れた患者の鼻の中を見ずに帰らせたら、完璧な診療拒否である。ヤブ医者というより不法医師、あるいは犯罪系ヤブというべきか。
 それでも帰りにはカネを取られた。「問診」をしたということであろうか。
 後悔している。あの犯罪ヤブに罵声を浴びせ、診察を拒否されたのだから診察料など払わずに帰るべきであった。あるいは会話を録音し、診察を拒否した証拠として医師会などに告発すればよかった。

 それにしても、「ポリープがあるから、切除する手術を受ける」ということが、これほど困難とは思わなかった。ヤブどもは徹底拒否である。「梃子でも動かぬ」とはこのことか。
 考えてみれば、耳鼻科医の鼻炎治療ほど楽な仕事はないかもしれない。器具を使って鼻孔を開き薬を噴射、後はネブライダーを鼻に当てさせ、薬を処方するだけ。素人でも、私でもできそうである。手術となるとそうはいかない。面倒なことはやりたくないのである。
 市立病院の医師が、率直にポリープの存在を認めたのもそういうことだろう。自分のところでは手術できないから紹介するだけ、市立病院なので給料も決まっており、患者があまり増えても仕方ない。

 これでは、まともな耳鼻科医に巡り合うまで、いったい何軒の病院や医院を回らなければならないのか。時間と労力の無駄をどれほど重ねなければならないのか。
 そう考えた私はネットで情報を求めることにした。そして、HPに医療方針や手術の内容まで掲載している耳鼻科の専門病院を発見する。「ここなら」という思いで訪ねることにした。