当時の医療技術による蓄膿症治療手術は、過酷なものだった。
 仰向けに寝かせた患者の顔をさらに上を向かせ、あごが上を向くような不自然な体勢をさせる。その姿勢の状態で、上唇をめくり上唇と歯茎の間の最上部を切開し、副鼻腔を手術する。副鼻腔に蓄った膿を除くため、副鼻腔にノミのような器具を当てハンマーのような器具で打ちつける。これを自分の顔の中心部でやられるわけである。局部麻酔なので、意識ははっきりしており、痛みや衝撃による不快感はひどいものだった。
 手術を行う医師以外に、抑え役の医師というのがいて、患者が暴れないように体や腕を押さえつける役目を負っていた。それほど過酷な手術だったのである。

 数時間に及ぶ手術で、左右両方の副鼻腔に蓄った膿は取り除かれた。
 手術後数日間は顔がパンパンに腫れ上がり、自分の顔とは思えないほどにもなった。
 大変だったが、これで完治するならよしとしよう。

 ところが、これで完治しなかったのだから情けない。