小学生の頃、鼻の通りが悪い私に対して、当然ながら親は耳鼻科へ行き治療を受けることを勧めた。
 そこで近所で評判の耳鼻科医に治療を受けることになった。
 この医者(ヤブ1号)、どこぞの大学のお偉い先生でもあり、しかも地元では有数の素封家として有名だった。いわば地元の名士である。
 このヤブ1号の治療とは、金属製の棒の先に綿を巻き、そこに薬をつけて患者の鼻腔を引っ掻き回すというものだった。痛いのなんの・・・。
 通えば通うほど症状は悪化した。それはそうだろう、子供の鼻腔を引っ掻き回せば、鼻粘膜が傷つく。傷ついた鼻粘膜は炎症を起こし、充血する。腫れ上がった鼻粘膜は、さらなる鼻づまりの原因となる。
 このヤブ1号、患者に対してエラそうにものを言うのも評判だった。
 エラそうにものを言えば、エラいと思ってもらえる。それをありがたがる患者が多かったのも事実である。