消えていった | カスケ汁

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電車の入り口でおじさんが両手をぶんぶん振っていた。

どうやら駅員に危険を知らせたいようで、身振り手振りで『ここのドアに傘が挟まってる』『危ないからドアを閉めないで』と伝えようとしているようだった。

が、単にドアの近くのじいさんの傘が手すりに引っかけてあって、その先がドアの外にはみ出てただけで、おじさんがわしわし腕を振ってるその異常な光景からそのことに気付いたのか、「こらすんませんな」みたいなことをいいながら傘を引っ込めた。

と同時にドアが閉まった。

と同時におじさん腕をわしわししたままの姿勢で車内に飛び込んだ。

と同時におじさんそのままの勢いで「ちょっと失礼」みたいなことをいいながら隣の車両に消えていった。

また別のおじさんは、

傘から垂れた雨水でできた水たまりを、無心になって傘の先でこすっていた。

どんどん速くなっていくおじさんとおじさんの傘の先。

なんかリズミカルなのか野生的なのかわからないくらい速くなる。

水たまりを引き延ばしたいのだろうか、こする速度があがり続ける。

周囲の視線に気付いたおじさんは、不意に指折り数えながら「16かな」みたいなことをいいながら隣の車両に消えていった。

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