先日「ハイドリヒを撃て」という映画を観たのですが
まるで安っぽいアクション映画のようなタイトルだったのであまり期待してなかったら
久々に心の奥にずっしり響く重厚な見応えある作品でした。
映画の舞台は第二次世界大戦前のチェコスロバキアの首都プラハ。
連合国の一員であったチェコにヒトラー率いるナチスドイツが進攻。
ドイツの報復を恐れた同盟国は戦わずして静観の態度を取ったため
チェコは無抵抗のままナチスドイツの傘下に屈することになります。
そのチェコを支配下において徹底的なホロコーストで街を統率していたのが
ナチスドイツナンバー3の実力者
ラインハルトハイドリヒです。
余りにも残忍な手法によりチェコが侵略されていくことに耐えかねた在英暫定チェコ政府は
元凶であるハイドリヒを暗殺するために数人の精鋭部隊を密かに送り込むことになります。
もちろん彼らの任務はただハイドリヒを抹殺することのみであり
もし暗殺に成功したとしても彼らの人生にその先はない。
という悲しい宿命がこの作品を終始重たい空気で支配することになるのですが・・・
そんな未来のない任務でも彼らは祖国チェコのために最初から命を捧げる覚悟であり
母国のために死ねるということに誇りさえ抱いてるわけですが・・・
それは敵方のドイツ兵とて同じことであり
彼らも祖国繁栄のために残忍な行為さえ厭わず
むしろ敵兵を蹴散らせば蹴散らすほど母国の礎となるという喜びさえ抱いていたのかもしれません。
じゃあもし仮にこの世の中に国家という概念が存在せずにこのドイツとチェコの関係が単に個人のいさかいごとだったらどういう展開になったのでしょう?
たぶん 人の土地に入った入らないくらいのトラブルで最悪でも殴り合いの喧嘩くらいで事は終わるんじゃないでしょうか。
それが国家レベルの喧嘩になると国家という大義のもとで個人の心情や家庭環境だけでなく個々の人格そのものさえ国に掌握されてしまうという・・・
ハイドリヒを襲撃した後のナチスドイツによる報復の描写は見るに耐え難いものがありますが
この作品は可能な限り史実を忠実に再現してますので
国家がいかにして個人を殺していくのか?
現代に生きる僕たちもしっかりその事実を受け止めて次世代の人間に引き継いでいかなければなりません。
観賞後に苦しい溜息とともに涙が込み上げてくるほど辛く悲しく重たい映画ですがちゃんと真正面から向き合ってみたいですね。
ちなみにこの「ハイドリヒを撃て」のサブタイトルは・・・
ナチの野獣暗殺作戦!
何やその川口浩が洞窟に入る的な胡散臭いタイトルは!
せっかくの映画史に残る名作が台無しですよね(´_`。)