烈火のごとく13 | 注文の多い蕎麦店

注文の多い蕎麦店

人間は何を食べて命を繋いできたのか?
純粋に生きるための料理を実践し
自然に回帰することで
人間本来の生活を取り戻します。

あの時は確か寒い朝だった。
もうそろそろ桜も終わりだろうか。
そんな時に季節はずれの降霜。

ご飯粒まみれのスカートで
颯爽と教室に入ってきたあいつ。
何の躊躇もなくいじめっ子のリーダーのところへ。
手には何やら小さな風呂敷包みが。

な、何やねん!

これ。
あいつはそっと風呂敷の結び目を解く。

現れたのは何の飾りもない真っ白なおにぎり。

は?何これ?!
何やねんお前!

これ。
あんた昨日うちの椅子にご飯落としたやろ?
うち知らんと座ってもうてなあ。

え?

すぐ剥がして返そう思たんやけどな。
さすがに人が尻で踏んづけたご飯なんて無理やろ?
だから今日おにぎりにして持ってきたんやで。
はい。
ごめんな気づかんで。

あ、いや・・・

一個で足りたかなあ。
足りんかったらお弁当の分けてあげるけど?

い、いや・・・十分やわ。

あ、そうそう。
このスカートに引っ付いたご飯粒な。
知らんかったとはいえご飯粒には罪ないやろ?
そやから自然に剥がれるまでこのままでいるわ。
ご飯粒は何も悪くないもんな。
な?

これが俺が聞いた話全部や。
もちろんその後いじめはなくなったらしいで。
その代わりあいつに話しかける奴も
おらへんなったらしいけどな。

あのスカート?
梅雨前くらいまでそのまま履いとったみたいやなあ。

それにしても凄いやつやなあ。
お前の姉ちゃん。
家では何も言わんかったやろ?
まあ言いたくても言えんやろけどな。

で。お前俺に何の話やったっけ??

続く