形なくとも想いは残る3 | 注文の多い蕎麦店

注文の多い蕎麦店

人間は何を食べて命を繋いできたのか?
純粋に生きるための料理を実践し
自然に回帰することで
人間本来の生活を取り戻します。

彼との取引は僕が店を辞めるまで続きました。
2年間くらいでしょうか。

夜の営業終了後。
翌日使用する野菜をチェックしてメール送信。
基本的におっちゃんとこのは地場野菜。
もちろん旬以外のものはありません。
そういう知識がないと成り立たないシステム。

例えば夏場に大根や白菜を注文しても
あるはずもなく。

僕はいつも商品を確認しながら
畑を想像してました。
野菜の成りや味を見て
そろそろトマトの糖度が上がりそうだなとか
茄子のピークは来週までだなとか。

お互いに生産者の立場を理解してるからこその取引。
あうんの呼吸まではいかないですけど
ヤーと言えばサイくらいは(笑)

だから僕が辞めた後。
うちの店との取引は終了しました。

商品取引のシステムは引き継げても
商品知識までは伝えられません。
いちいち畑に行ってまで説明できないですし。

取引が続かない理由は。
欠品が多い→商品の旬を把握していない。
毎晩の注文が面倒→確かに3日分とか1週間分とか
まとめて注文するほうが手続きは簡単。

ですが毎日新鮮な野菜が手に入る利点。
これを理解できる業者がいればいいんですけどね。
まあ個人店舗に限られるでしょうが。

そんなおっちゃんが僕の店に食べにきてくれました。
オープンして直ぐ。
片道3時間の小旅行も厭わず(笑)

おっちゃん、奥さん、息子さん。
ほのぼのとした一家団欒。
そこに抜け落ちた一つの空間。

お互いそこには触れないように。

続く。