2008-11-30

今年出会った川崎市の技能者の中で興味深かった三人を改めて横並びで見てみた。一人は造園業、もう一人はケーキ作り、三人目は機械工業に従事している。以下でその概要を紹介しよう。

Aさん(60代)は造園業を営み、作図から作庭までの樹種の選定、石組み手法、霜よけ作業、エコ対策にかかわる植生配置などにおいて卓越した技能を保持している。造園業の家に生まれた彼は16歳で近隣の造園業に入って5年ほど修業した後に、実家に戻って働くことになる。50年間余り造園職に従事して経験を積み重ねるかたわら、造園1級技能士として、造園技能検定委員、造園検定主席検定委員や県のシルバー人材センター緑樹講習講師なども務めてきた。また地元中学校で毎年開催される「技能職者に学ぶ」学習にも参画するなど地域社会における活動も活発である。

会社から少し歩いた彼の自宅には造園実習用の場があり、技能検定のための実習なども行われている。そこで見せていただいた実演で、霜よけに使う紐の中に針金を入れて撚り結び目をあざやかに松竹梅に形作る彼の指はまさに職人の指だった。造園における基本的な技は5年ほどで身につくそうだが、たまにしか使わない技もあるのでオールラウンドに出来るようになるにはかなりの年月が必要なようだ。

彼の自宅の庭には別の場所から移植した樹齢150年ほどの大きな五葉松がある。木は土地によって地下水の深さや流れなどにより、根の深さや方向が異なる。ここに移して5年だが、移植には根回しが大事だそうで、ここにも彼のノウハウが活かされているようだ。また、庭の石組みも得意で、小さな石をいかに大きく見せるかが腕の見せ所だという。日本の造園は非常に芸術性の高い独特のものだが、Aさんはその技術を基礎から高度の応用まで習得するとともに、その技術を表現し、教育する能力も兼ね備えている。

Bさん(50代)はドイツ菓子を中心とする菓子店を経営し、優れた技を発揮している。彼は山梨県出身で、1967年に静岡県の洋菓子店でこの道に入った。その後神奈川県のドイツ菓子店とスイス菓子店で修業し、1976年から1年間、ドイツの老舗菓子店にて本格的なドイツ菓子作りを学んだ。留学中にはチョコレートの違い(作業しやすく美味しい)を痛感したそうである。帰国後は都内著名店のチーフとして腕をふるい、1982年、31歳の時に独立した。彼の作るドイツのクリスマス焼菓子は開業以来作り続けて高い評価を得ている。地域振興に向けた商品も開発しており、商店街と共同開発した菓子は市の名産品にも認定されている。

彼の店は都内に務めていた時の通勤沿線にあり、3階建て(3階が自宅)のドイツ風な造りになっている。白い外壁にエンジ色で描かれた鮮やかな絵が沿線から眺められる。2階にはこぎれいな厨房があり、28歳の子息が黙々と作業をしていた。

ドイツ菓子やスイス菓子は独特のスパイスブレンドで深い味を出すもので、その見えないところに努力しなければならない点に引かれた、と語るBさんは落ち着いて穏やかで研究熱心な人柄で、商品開発技術に優れている。いわく、バターにこだわりマーガリンは添加剤の固まりだから使わないそうである。日本人は口に合わないバタークリームを食べさせられてきたともいう。彼の作ったクリームは好感のもてるあっさりした味だった。

彼は日本やドイツで菓子作りを学ぶ中で何人かの師匠につき、彼らの特性をしっかりと捉え理解してきた。40有余年の中で自分の特性も客観的に見て、独自のお菓子を味を出すようになったのだと思う。彼は他者の技を観察し評価したうえで自分自身の創意工夫をする能力を持っており、飾り立てるよりも食べて美味しい菓子を作る、という彼のお菓子における自己表現は嫌味のない自然体であるように感じる。技と人柄が一致しているような菓子職人だ。

Cさん(50代)は中小企業に勤務して、ものづくりにおける生産システム設計、治工具や自動機の設計・製作において、優れた技能と技術を発揮している。彼は顧客から来た部品の図面を見て、それを効率よく作るための治具などをCADも駆使して作る。メインの仕事はコピー機の部品だ。こうした部品も量産ものは海外に発注されるが、高機能のもの、多品種少量品、新製品の立ち上がり期のものなど高い生産技術を要する仕事が同社に来る。

Cさんは工業高校を卒業後、1年ほど大手自動車メーカで働いてから同社に入社し、勤続40年ほどになる。入社後しばらくは営業の仕事をしていたが、ほどなくして組み付けの仕事に入り、治工具製作に従事することになる。ここで、必要に迫られながら、ものづくりに関する幅広いノウハウを蓄積して次第に彼の才能が発現していくことになる。

彼の作る治具や省力化機器は、量産のための無人化機器ではなく、人間、それもパートの女性がそれを使って、多品種少量生産を効率的に行うためのものである。例えば、コピー機のブレードという部品を組み立てる作業においては、両面テープを金属に貼り付けてその上にゴムを貼り付けるような作業がたくさんある。彼はこの作業を、ゴムに両面テープを貼り付けてから金属に貼るようにして、効率を大幅に向上させたそうだ。このような発想転換が治工具製作には必要で、ここに彼の才能が生かされているようだ。

誰が何回やっても、同じように、寸法の安定性を確保して正確かつスピーディに、少ない工数で出来るような治工具のアイディアは、作業する人の手の動きを絶えず観察しながらこれを何かに置き換えようとする努力の中から出てくる。治工具の動力はエアシリンダーが多く、スイッチとリレーでシーケンス制御する。電気回りの知識は独学で勉強し、秋葉原にも足しげく通うという。材料加工の精度は百分の2(ピッチ)、組み立て精度はコンマ1から2、だそうだ。そして客の要求はなによりもコスト削減である。

彼のところには顧客から中国で作る製品の治工具の製作打診もあったが、人海戦術で量産を行う中国に適した治工具とこちらの治工具とでは生産思想が違うようだ。彼が作るのは、限られた人数のパート労働者により多品種少量の精密なものづくりを行うための治工具なのである。しかも彼の会社に発注される部品は、同じ種類のものでも絶えずバージョンアップされたものばかりなので、以前のものより一層効率的な治工具を作らなければならない。ここに、絶え間なく自分を磨く彼の力が発揮されているといえる。

Aさんは家業を継ぐかたちで自然に入った道で技とノウハウを身につけて庭造りをしてきた。Bさんは志を立てて入った道で、創意工夫を重ねて新商品を生み出してきた。Cさんは生活するために入った道で自らの適性を見出してこれを磨いてユニークな治工具を作ってきた。Aさんは、生まれる前から自分の道であったかのように、ゆったりと働いている。Bさんは、夢をかなえて、生き生きと働いている。Cさんは、会社の信頼を担って、生き甲斐を持って働いている。
2008-10-31

研究室に学生用としておいてあるPC二台のうち、一台が壊れました。もう5年以上使ってきて、学生たちのハードな使用にも耐えてきたので、そろそろ買い替えかなあと思っていたところでした。それでも元気な方の(笑)PCが先にぶっ壊れたので、結構、困っています。
研究費は減額されているし、学生用のPCなんて予算くれないし、金の工面に頭の痛いところです・・・
氷河期再来 ~ 一気に悪化する気配の地域経済

先週の週末に、久々にゼミの4年生とOB数名が集まりました。当然のごとく話題は、ここのところの悪化する経済状況。さすがに内定をもらい卒業を目前に控えている4年生と、社会人たちだけに、以前よりは話題が真剣です。 悪化するとは言われていたものの、ほんの数ヶ月前は、海の向こうの「サブプライムローン」問題という受け止めかただったのが、リーマン・ブラザーズの破綻で一気に、身近に影響を感じるようになりました。

内定を持っている学生たちも、とりあえず大手企業が中心なので、大丈夫だとは思うのですが、「内定の取り消しとか、入る前に倒産なんてことになったら」と心配気です。ここ数日、その心配も杞憂ではなく、現実のものになってきていることが、報道されています。「以前、内定取り消しっていうのがあって、大変だったんだよ」と言っても、きょとんとしていた学生たちが、もしかしたらと心配するほどの急激な悪化。

「残酷なものですよ。オヤジの会社でも、まず外国人労働者、つぎに派遣社員を大幅に切ったようです。」自動車メーカー系の部品製造会社に勤務する父親を持つ学生が言います。一月ほど前から、深夜でも緊急の会議と言っては呼び出される父親に尋ねると、人員削減策だと答え、「これだけ一気に解雇が進むと、地域の治安が悪化するのではないか」と心配していたそうです。

九州でも自動車産業の進出によって、大幅に派遣社員の募集が急増。ワンルームマンションの需要が急増したために、農家が次々に新規建設に乗り出したのが、一気に空室だらけに。なかに、1室2万円や1万円台で貸し出す家主もいるそうですが、それでも借り手がつかない状況らしい。

関西のある地方都市。繊維産業の衰退が地域経済に大きな影響を及ぼしてきた。その中で、自動車部品製造に乗り出した中堅メーカーが、地方都市の経済を支えてきた。しかし、数ヶ月前から大幅に減産。正社員も含めたリストラを行わなくてはいけないと経営者が心配していると、地域選出の議員が言います。

こうした影響はすでに地域の経済に大きな影響を及ぼしています。「サブプライムローン前には、景気の減速で、大手のスーパーへの人の流れが目立った。サブプライムローン以降は、大手スーパーから、地域のディスカウントショップへ人が流れ、売り上げが増加した。この地域でディスカウントショップを数店舗持っている経営者は、これで全国チェーンの大手スーパーに対抗できると話していたのだが、先日あったら、リーマンショック以降、売り上げが急減し、消費そのものが冷え込んできたと心配していた」と、中国地方のある経営者は話します。

さて、今回の景気の悪化。「世界恐慌」の再来と大騒ぎになったものの、ひとまずは踏みとどまっている感があります。しかし、2年から3年間は、景気の悪化が続くという意見が多勢を占めています。学生たちにとっては、氷河期の再来です。

ものづくりの面ではどうなのでしょうか。1985年の円高不景気では、日本の製造業の本格的な海外移転が問題となりました。1990年代のバブル崩壊以降の長期不況には、海外製品の大幅な流入。特に家電製品や食品などの海外での生産と輸入の増加が進みました。そして、その後、景気回復とは言うものの、自動車産業の北米への輸出によっての景気改善が見られたわけです。

今回は、どういった変化が日本のものづくりに起こるのでしょうか。自動車産業を見てみると、輸出悪化が進む中、一層の海外生産体制が確立されるのではないかと指摘する人もいます。ガソリンエンジンから、電気モーターへの転換が進展するのは、景気の悪化に関係なく進むだろうという指摘もあります。

一方、前回お伝えした大阪湾岸への投資の急増ですが、今回の景況悪化による計画変更は今のところないと、シャープもパナソニックもしているようです。大阪湾岸へ立地している液晶、プラズマ、太陽光発電パネル、リチウムイオン電池などの工場群。これらの投資増加について、大手企業の関係者に話を聞くと、はからずも同じ指摘がなされました。

「工学から、化学への変化」という指摘です。従来からの「製造業」、「ものづくり」は、工学が中心に進んできたが、今後は「化学」が中心になっていくだろうとの指摘です。「これを理解していただくと、同じ数兆円規模の投資といっても、今までのようなテレビやラジオといった工場の立地や、自動車工場の立地というのとは、その波及効果などが違っていることを理解していただけるのではないか」と、某社の担当者からは指摘を受けました。

「円高が独立独歩で進んで、喜んでいるのは韓国勢だろう。ここで計画の進捗を遅らせては、三年後、五年後に韓国勢に負けを喫することになる。」やはり某社の幹部社員は、そう指摘し、不況下でも次世代を睨んでの競争が始まっていると言います。

変化のスピードが速く、めまぐるしく変っていく中で、少しついていけないような気もしないではないですが、しかし、不況が永遠に続くわけもなく、次の段階に思いをはせることも大切なことでしょう。そして、今回のこの転換期によって、日本のものづくりがどのように変っていくのか、「悪い状況」にばかり目を取られて、「変化の芽」を見失わないようにしなくていけないと思うのです。
2008-10-31

今年5月にある中小建設業で講演をした。この会社は明治45年創業で従業員数は40名、マンション、個人戸建住宅、事務所ビル、学校、区民センターなどを企画設計から施工まで一貫して行い、地域に根ざした企業として実績を挙げている。講演に先立ってこの会社の施工現場を見学した。地下鉄王子神谷駅から1分のところにある13階建てのマンション建設現場だ。

訪ねた日は屋上のコンクリートを打つ日で、現場前ではコンクリートミキサーの上に人が上って作業をしている。その近くではコンクリートの試験片を検査している人たちがいる。最初に地下部分の免震装置を見学した。スケールの大きな床下には3種類の免震装置があった。これを完備した賃貸マンションは初めてらしい。その後は1階ずつ上がって見学。下の階の方はかなり出来上がりつつあり、何人かが内装工事をしていた。しかし、上の方の階はまだそれ以前の工程だ。むき出しのコンクリート天井から電気配線がぶら下がっている。12階には天井のコンクリートを支えるパイプが林立し、壁には木枠が貼り付いたままだ。13階まで上がって外の足場に出て上に上がり、地上から送られてくる圧搾コンクリートが通るたびに大きく揺れる足場から屋上
を見学した。20名ほどの土工が作業中で、がっしりした熟練者らしき人が揺れる太いパイプを抱えながらコンクリートを注いでいる。それを数人の左官が見守りながら、仕上げの時を待っている。総工費5億円、50世帯ほどが入居するマンションの上棟現場は想像以上に迫力があった。

これを機にこれまで取り上げなかったもう一つの生業、建設業の下請構造とそれに対応した資金需要の特質について少し考えてみた。一般に、建設業における生産活動の特質としては、「受注生産」「単品・移動生産」「労働集約型」であることに加えて、「必要となる技術・技能の幅が極めて広い」「受注から工事完成までの期間が長い」「企業規模に比較して工事価格が大きい」等が指摘できる。建設業における独特の生産システムと下請構造はこのような建設生産の特質とわが国の社会構造から形成されてきたものだ。

建設業の下請構造は、一般的に得られる統計データだけでみると、機械工業などよりも階層性は少ない。建設業における技術特性だけをみれば、水平的・横断的な分業構造が中心で、その下請構造の重層性はそれほど大きくなるとは考えにくい。しかしながら、建設業においては、現場作業がきわめて労働集約的で、しかも現場そのものが受注ごとに移動する、という特徴が下請構造をより複雑なものにしている。すなわち「労務下請」の存在が、横断的な技術的分業関係の中に垂直的ないし準ピラミッド型の重層的下請構造を形作っているのだ。

建設現場においては、労災事故が起きて初めて元請は4~6次下請の存在を確認することが多いという。安全教育名簿や下請負状況報告書を完備している大手ゼネコンでもなかなか3次下請以下を把握することは難しい。建設業では、工程表に沿って必要な時期に必要な労働量を投入しなければならないので、限られた期間に必要な労働力を確保する柔軟な生産システムが下請構造の一面となっているのである。このため、社会的分業関係として存立している職別工事業に依存する一方で、元請企業自身や職別工事業は、さらに「労務提供」だけを行う数人から数十人単位のグループ(組)を周辺に配置しているのである。この場合、組自体の中で親方と労働者の間に請負関係が成立していることが通常で、この「請負関係」の存在が下請関係の重層性をさらに高めることになっている。

建設業における短期就業者は、一般に「地縁血縁」などの縁故関係を軸とする数名グループの「班」を形成し、請負制を形作っており、企業に直接雇用されてはいないものの、実際には企業が賃金管理や保険手続等を行っているケースがある。これらは「雇用関係」というよりも「請負関係」の色合いが濃い。下請と請負を同次元で捉えるならば、「企業内企業」である班や組の存在は下請構造を重層化していることになる。このような班構成が企業として独立すれば明瞭な下請構造になるからである。

建設業においては、このようにおもてに現れた企業としての労務下請の他に、企業内の班構成などの隠れた労務下請という二重の意味内容を持つ労務下請構造が出来上がっているのである。一般的なデータからは製造業よりも建設業の下請構造の方が重層性が薄く見えるが、実際にはこのようなかたちで重層性を内包しているのである。

以上のように、建設業においては、異職種間で元請・下請関係が発生するという技術的・技能的要因による「横の(重層的)下請」と、生産システムの柔軟性を確保するという労務面での要因によりさらに同一業種・職種内で生じる「縦の重層下請」が存在しているといえる。そして、この重層的な下請の存在が建設業における資金需要の特質を規定しているのである。

1件あたりの金額が巨額な典型的受注生産で、しかも技術的に不確定要素が強いことにより、建設業における発注者と受注者の関係はなかなか対等なものになりがたい。原則的には対等な契約といっても、工事代金の金額と受取条件に関しては発注者の意思が反映され易い環境にある。しかもこの発注者と受注者の関係は、元請ー下請関係にも持ち越される。

製造業では、一応は、確定した製造原価を基礎に価格形成が行われ、(発注者の言い値であるにせよ)見積もり合わせがなされて下請単価が決定される。一方、建設業の下請取引においては、工事原価が未確定のまま発注者と請負契約を結び、未完成の構造物や施設を販売するわけで、実際の工事原価は工程表に沿って材料、労務、機械を投入しながら施工する過程で決定されていくことが多い。したがって、設計ミス、ロス、材料代の上昇、気候・土質などの自然条件の見込み違い、等から実際の原価は予想原価や契約原価を超えて採算割れが生じることもある。しかも下請取引においては、その本質的性格上、製造業の場合と同様に下請単価にはきわめて厳しいものがある。

このため建設業において企業規模を大きくしようとすればするほど、必要となる資金量はより大きな伸びで拡大し資金調達に関するリスクも増大する。工事に関わる出金と入金の間のタイムラグがきわめて長いため、事業規模拡大のために無理をして条件の悪い工事を受注すると、総資産/総負債の項目間のアンバランスが生じて経営危機を招きがちである。しかも、最近の中小建設業においては現状維持型あるいは拡大型を問わず、「代金受取条件の悪い仕事でもとる」「下請仕事も増やす」等の方策を採らざるを得なくなっているようだ。

このような建設業の資金需要は下請構造の中で連鎖していく。建設業においては元請ー下請間で明確な機能分担がなされており、この機能に応じて資金ニーズが発生する。下請の中では1次下請が重要な機能(とりわけ労務集散機能、資材調達機能)を担っており、ここに大きな資金ニーズ発生源がある。また、従来元請が担当していた諸機能の一部が1次下請に転移される傾向も見られる。このような中で、発注者の代金支払条件が悪化すると、元請ー下請構造を通じてそれが波及していくのである。

随想録(89)において、日本経済はミニバブル崩壊の状況にあると述べたが、どうやら本格的な投機市場の崩壊に続いて不況突入という事態になってきたようで、中小企業の資金需要をめぐる諸問題は一層深刻化しつつある。バブル崩壊に端を発した不況においては投機の当事者でもある金融業の経営悪化が顕著になるため、貸し渋り貸しはがしが横行して事態はさらに深刻となる傾向があるからだ。ここで述べたような下請構造の中にいる中小建設業にとっても極めて厳しい経営環境になっているようだが、中小製造業も同様の状況だろう。

近年、町工場も多品種少量生産の時代に対応してその生産システムは一品生産の建設業と類似したネットワーク的な構造になってきている。企業内企業的な構内外注もいる。短期就業者もいる。工程表的に見切り発車の仕事も多い。付加価値の高い仕事に対応するべく高額の設備投資をしたところもあり、建設業ほど巨額ではなくとも連鎖的な資金需要の中でババ抜きのようなかたちでの下請中小企業の資金繰り悪化が懸念される。