そばにいて
19.恋愛談義 2
「ねえマミ。吉永君は優しい? 」
おやつを持って部屋に戻った優花は、思い切って麻美に訊ねてみた。
その時の絵里の驚いた顔と言ったら……。麻美も一瞬びっくりしたよう
に優花を見たが、みるみる頬を染めてそのまま下を向いてしまった。
「……優しいよ」
消え入りそうな声で恥ずかしそうに麻美がつぶやく。優花は彼女の
肩に手をかけ、もっと自信を持って、私たちには何を言ってもいいん
だよ、と励ます。
「そうだ、マミ。ここだと吉永君ちも近いんだし、わたしたちに遠慮はいら
ないからさ、カレのところに行ってもいいんだよ」
優花は出来るだけ自然にさりげなくそう言った。同意を求めるように
絵里の顔を見る。
「そ、そうだね。マミがそうしたいんなら、吉永のところに行けばいいよ」
あわてて絵里も優花に同調する。でも、絵里が優花を見る目がどこか
悲しそうだ。優花、そんなこと言ってホントにいいの? と訴えている。
ところが麻美は顔を上げると、大きく首を横に振った。行かないよ、と。
「あのね、テスト期間中は、それぞれが自分のペースで勉強しようって
そう決めたの。だって得意なところ、不得意なところって違うし、カレの
集中力ってすごいんだ。邪魔しちゃ悪いでしょ? だから真澄君のとこ
には行かない。みんなも気にしないでね。」
「そう、なんだ……」
絵里が麻美の顔をじっと見ながら頷く。麻美は絵里から、すぐさま目を
逸らし、突然日本史の教科書を手にした。
「あ、あたしさ、今回、日本史が一番心配なんだ。戦国時代って武将の
名前がいろいろ出てくるしね。苗字は一緒でも、下の名前が微妙に違っ
たりするのがややこしくて。いくさも多いし、なんかこんがらがっちゃって。
そうそう、数学と化学はみんなの力になれると思うから、なんでも聞いて
ね。塾でやった予想問題、満点だったから。それでね、英語なんだけど
文法の……」
「ちょっと待った! 」
絵里が麻美の持った教科書を、スポッと上から取り上げる。
「マミ。なんかおかしくない? いや、おかしいって。目の動きが変だよ。
あたしたちに何か隠してるでしょ? 違うとは言わせない」
絵里は、麻美のどんな些細な変化も見逃しはしなかった。さっきから
麻美の目が泳いでいるように見えたのは、気のせいではなかったのだ。
「絵里? いったいどうしたの? あたしは、その、いつもどおりだよ。
ちっともおかしくなんかない。隠し事も……してない……」
麻美は精一杯否定していたが、そこに説得力はなかった。
「じゃあ、聞くけどさ。吉永とは、その……。どうなの? 」
「どうって? 別に普通だよ。今はテスト前だから、それぞれに……」
「ん、もうっ! そんなこときいてない。ああ、まどろっこしい。じゃあ、
はっきりきくね。吉永とは、どこまでいってるの? 恋人同士としての
関係をきいてるんだよ。はぐらかさないで、ちゃんとあたしの目を見て
言って! ね、マミ! 」
優花はドキドキする胸に手を当て、呼吸を整える。それって、つまり
男女の経験の進行度合いを訊いているのだ。手をつないだとか、あん
なことや、こんなこと……も。吉永君と麻美のそういう世界は、決して
知りたくなかったことだ。それをあえて問いただす絵里はいったい何を
考えているのだろうか。けれどそこには何か重要な意味があるのだろう。
絵里の目は真剣そのものだ。興味本位で詰め寄っているとは到底
思えなかった。
優花は唇をかみしめて、麻美の答えを待った。
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