「持ってきたよ…」
しばらくすると水浸しの市さんが来た。
いったい何が……
「大丈夫ですか!? 水浸しだし… とりあえず着替えてきてくださいよ!!」
「これ……」
市さんの手には水の入った茶碗があった。
「市さん… 俺のために…」
涙がでるほどではなかったが、感動した……気がした。
でも涼しそうだな…
「はい… ちょっと頭貸して…」
市さんから水を受け取っていきなり言われた。
意味が分からないが… 貸さない理由がない。
「いいですよ」
まぁ、体は微妙にしか動かないから移動できないけどね。

「暖かい…」
市さんは俺の頭を抱えて暖まり始めた。
市さんの体は冷たく、まるで幽霊か死人のようだった。
でもその位置は首が……
「しばらくこうしてていい?…」
しばらくこの状態…もう少し楽な状態がいいな。
「首が痛いんで… 首の位置を低くしてもらえますか?」
「…こう?」
今度は膝枕になった。
首は楽だが…にやけそうで怖い。
「えぇ… これなら楽です」
ここでまさかの膝枕初体験(笑)
いや、小さい頃は耳掻きの時に母親にしてもらったが、こういう感じの膝枕は初めてだった。
「……ねぇ、慎一… 私のことをどう思ってる?…」
「え? どういう意味ですか?」
「私のこと嫌いなんだとか… とか…」
まだ思い詰めていたらしい。
それは気にするだろう。
仲良くなった人を動けなくなるまで痛めつけたのだから……
「そんなことありませんよ。 そりゃぁ、最初は内心怒りましたけど……
あれは市さんがやったわけじゃない。 事故だったんですよ」
嘘を言っているわけではない…と思う。
いや、いくら市さんから出てきたからって、あれは人間には出来ないよ。
「……ありがと」
微笑んで言ってくれた。
下から覗き込むように見るのはなんか…新しい感覚だな。
「自分がそう思っているだけですから」
「優しいんだね…」
また心臓を打ち抜かれる感覚がした。
でもなんだろう…いやな感覚じゃない。
「慎一… 今度は顔が赤い…」
「え? そうなの?」
俺はとぼけてみたが、なんか…市さんが気になるらしい。
「うん… とっても赤い…」
市さんは心配そうな目で見ていた。
貴方のせいで赤いのですよ……

市さんは俺を抱き抱えるようにくっついた。
まだ着物は濡れていて冷たいが…顔が近いよ…
「どう?… これなら涼しいでしょ…」
まだ太陽が真上まで来ていないのに…これはNGだろ…
「うん… 涼しいですよ」
俺は今真っ赤であるはずの顔を背けた。
ここまで赤いと人に見せられない…
「こっち向いてよ…」
無理矢理市さんによって市さんの方を向かされた。
向いたとき、お互いの顔の距離は5センチも無かった。
ちょっと傾いたらキスしてしまう……
「市さん… 顔…」
きっと顔は恥ずかしさで強ばっていると思う。
この姿は誰にも見せられないな…
「動いちゃだめだよ… まだこうしていたい…」

そしてしばらくこの体勢でお互いを見ていた。