獄につながれていた三角青輝(みすみ あおてる)は、帝による平殿器(たいら でんき)の王位就任にともなう大赦令により出所しました。

<(”復讐”になど微塵も興味ねえ。  儂(わし)の本懐は、 ”妻との誓い”*を果

  たすことじゃ。)
   …略… 
 (確かに今あの男に仕官すれば、  ”国賊に屈した”とか、”保身に走ってしょうも

  な”とか、  方々(ほうぼう)からああじゃこうじゃと言われるかもしれね

  え。)
 (じゃけど、 生きてさえいれば、  今後何度でも、己(おのれ)の”本懐”を己

  の手で示すことができる‼)
   …略… 
 (儂はあの男の足下(そっか)より、  世を変えていくけん。)>

                   (66-68頁 *とは泰平の世を築くこと)
青輝は、そう言って、平殿器の手足となる司農(しのう)府の丞(じょう 三等官)の地位に就きました。

阿佐馬芳経 (あさま よしつね)は、先に青輝の勧めで平殿器に降り、辺境将軍隊の右中将となっていました。青輝は、阿佐馬の軍師として、元皇太子澄仁王(すみひとおう)と闘うために笠置山に向かいます。

敵あるいは仇の下で働く。難しいことです。

この作品を読んでいると、画面の黒と白のコントラストの強さが目につきます。この作品の雰囲気にあっていると思います。



* 松木 いっか 著『日本三國 ⑤』
 まつき いっか にほんさんごく
 裏少年サンデーコミックス 株式会社小学館 2024/7/16