アイアンクローという映画を見て来ました | 意外と儚のブログ

アイアンクローという映画を見て来ました

先日、「アイアンクロー」を鑑賞して参りました。

 

王様のブランチで紹介されたのを見て

実話をもとにした内容とは思えない恐ろしそうな話に

興味を覚えて、この時代のプロレスはちょっとは見てたし

ブロディやフレアーや知ってる名前もあるし、

日本も関係していそうなので、鑑賞に行きました。

 

話としては、アイアンクローを必殺技にしたレスラー

フリッツ・フォン・エリックは息子達をレスラーに育て上げ

次男ケビン、三男デビッドを次々と自分が設立した団体で

デビューさせ、プロレス界の頂点に近づいていき

更に、モスクワ五輪の米国キャンセルで陸上を断念した

四男ケリーもプロレスに転向し、華のあるデビットを中心に、

兄弟レスラーとして、人気と実力を極めていく。

しかし、世界ヘビー級タイトル戦目前で、

デビットが日本のホテルで急死し、一家の雲行きが変わる

追悼興行でケリーがリックフレアーを倒して、王者になるが

今度は、バイク事故でケリーが片足を失ってしまう。

更に、ミュージシャンを目指していた五男マイクも

プロレス入りするが、試合中に負傷し、後遺症に悩まされ、

結局は自殺してしまう。

そして、義足で復帰したケリーも、鎮痛剤の中毒症状に

苦しんで、ついには拳銃自殺をしてしまう。

残されたケビンは家族の支えで耐え忍び、

団体を売って、幸せを噛みしめるっという感じの

映画だったと思います。

 

とにかく、これがほぼ実話だという事が信じられない。

デビットが急死してから、ケリーの自殺まで

たった9年間の出来事だという。

 

エリック家の呪いとうたわれていたが、

実態は父フリッツ・フォン・エリックのプロレスで成功せよ

という呪縛から逃れられずに、心が潰れていく息子達。

父も、解っていながら成功体験から道を変えられない。

そして、自分が生み出したもう一人の大事な息子、

プロレス団体を守る事にも固執している。

それは、母親も同様、常に息子達から距離をとり、

宗教に逃げて、自分を守っている。

唯一、ケビンは家族の存在で、父の呪縛に疑問を感じ、

兄弟に寄り添うとするが、なすすべもなく死んでいく。

そして、収益の出ない団体を処分する事で父と決別し、

穏やかな日々を手に入れるという悲劇だった。

 

そもそも、この悲劇はフリッツが目指していた音楽家を諦め

プロレスに転向し、悪役として成功した事にある。

この成功体験に、息子達は憧れ追従し、囚われていく。

そして、母は美術志向で、フリッツが音楽家の時に出会い

一緒になったが、生活の為プロレスに転向してしまう。

その時、本当の心を失ってしまったと思う。

だから、本気で息子達、そしてフリッツと向き合う事ができず

宗教に逃げて、息子をほぼ失って何もなくなった後は、

本来の絵画制作に向かっていく。

偉大な父に引きずられいった一家の悲劇の話だったと思う

 

ビジュアルとして、凄かった事はレスラー全員が

本物に見える体をしている事(ハリーレイスを含め)。

特に、ザックエフロンは元アイドルだけど、ここまでやるとは

彼の今後の活躍は楽しみだと思った。

母親を演じたモーラティアニーは「ER」の大ファンだった

自分にとっては、結構なプレゼント。

アビーさん、年食ったなと思いつつ、

乾いた演技を見てました。

音楽も良かった。トムペティの曲は懐かしかったし、

三兄弟の絶頂期のプロレスシーンにかかっていた

ラッシュのゲディーリーの声は萌えた。

マイクの部屋にもポスターが掛かってたなあ。

 

最後に亡くなった兄弟全員が、池の向こう側で

(幼くして事故死した長男も含めて)再開するシーンは

美しくて、なんとなく救われる気もした。

でも、本当は六男がいて、彼も自殺したとの事。

とてもそこまで詰め込む事は重た過ぎると

判断したのだろう。

 

彼らの娘や息子は、現在プロレスラーだそうだが、

どういう経緯や心情でいるのかをナレーションでよいので

知らせて欲しい気がしました。

 

凄く見応えのあるリアルな悲しい人間ドラマでしたが、

とにかく、あまりに不適切な昭和のプロレス映画でした。