この記事は、自分の為の読書メモです。「いいね!」欄は閉じています。m(__)m

令和5年10月、小説を8冊、絵本を9冊読んだ。優しい気持ちになれた本、辛い気持ちになった本。どちらも自分で選んだ本。

図書館に予約をし、順番待ちで借りるから、読みたいと思ったときにすぐ読めるわけではない。でも、図書館があり、誰からも制約を受けず本を読めるのは、幸運なことだと思う。いつも、そう思う。それを確認・確定するためにメモしておこうと思う。

 

 

① 市川沙央・著 『ハンチバック』

 

第169回 芥川賞受賞作。短いということもあるが、3時間ほどで一気に読み終わる。

小説とはまるで関係が無いが、例えば、左手の小指が1cm短かったとしよう。(一見してはわからない)その手でパソコンのキーボードを打つとき、左端のアルファベット「A」に小指は届かない。想像には限界があると思う。かなしいかな。

読んでいて辛かったが、市川さんは「フン!」そっぽを向くだろう。これから障害をテーマにしたものとそうでないものを半々くらいで書いていきたいそうだが、どちらも読んでみたいと思った。どちらも辛いのだろうか・・・。

 

 石田夏穂・著 『黄金比の縁(えん)』

 

企業の人事担当者の、選考基準をめぐる話。自分もかつて新入社員の面接をしたことがあった。

そういう立場の人が読んだら面白いと思う。「黄金比の縁」の意味がわかったら腹を立てるだろうか?

「公平かつ客観的」にだれかを選ぶ基準。自分は笑って、なるほどと思った。

P031

【この仕事から学んだことがあるとすれば、それは、人間は所詮「自分ポイ」人間が好きだということだ。中村が推すのはいかにも「中村っぽいやつ」だった。友情・努力・勝利じゃないが、皆で和気藹々と事を進める人間を中村は推す。その評価軸は何ら悪くはなかったし、現行三人の中では唯一真っ当と言えた。いっぽう中村には学歴を毛嫌いする傾向があった。高学歴にはいきなり辛口になるのだ。出世街道のメンバーとしては中村は高学歴ではなかった。】

あれやこれやと出てくる選考基準を読んだあとの、「黄金比」。ほかの人はどう思うだろうか訊いてみたい。

 

 

③ 辻堂ゆめ・著 『答えは市役所3階に』サブタイトル2022、心の相談室。

 

タイトルだけ見ると何かハウツーものみたいに思えるが、ちゃんとした小説。

こんな相談室が実際にあったら良いなと思う。現実には、難しいのだろうが。あたたかい気持ちになれた本。

 

④ ドリアン助川・著 『寂しさから290円儲ける方法』

 

これも、ハウツーものみたいなタイトルだか違う。ドリアン助川さんって、懐かしい。バンドのひとだと思っていたけれど小説も書いていたんだ。中年の「麦わら」さんが、困りごとや悩みを抱えている人のもとに出向き、料理をつくって解決する。相談料は290円。プラス実費。読んでいて、ほっとし、何だか優しい気持ちになれた。自分の悩みを相談したような気持ち。

 

 

 

⑤ いせひでこ・作 『ルリユールおじさん』

 

いせひでこさんの絵は美しい。「ルリユール」とはフランス語で「本の修理をする人」本の修理職人さんを指す言葉だそうだ。

本を大切にする文化が羨ましいと思った。手元に置きたい本だけれど、終活中の身、もう本を増やすことはできない。さみしい。

 

 

 

  

「バーブ・ローゼンストック ・文 ジョン・オブライエン・絵 渋谷弘子・訳

『トマス・ジェファーソン 本を愛し、集めた人』

 

あのアメリカ大統領のトマス・ジェファーソンだ。こんなに本好きとは知らなかった。アメリカの図書館の基礎になる図書館を作ったそうだ。日本の国会議員や総理大臣もこれくらい本を読めばいいのにと思った。

 

 

  

 Junaida・作『の』

 

「わたしの・・・」で始まり、「わたし」で終わっていた。言葉のしりとりというか、物語のしりとりみたい。

とにかく絵が綺麗。見ているだけで幸せな気持ちになる。

 

 

 

 

⑧ 辻村深月・著 『傲慢と善良』

 

いまの世の中の「婚活」事情がわかって面白かった。けっして楽しい本ではないが。

先に読んだ「黄金比の縁」もそうだが、誰かを「選ぶ」というのは難しい。登場人物のだれかれを「なんて傲慢」とか思いながら、自分もどこかで誰かを見下したりしているのだろう。いや、していると思った。自分を覗いたようでヒヤリとする。

 

 

 結城真一郎・著『#真相をお話しします』

 

2022年、もっとも売れたミステリーと広告が出ていた。本屋大賞にもノミネートされていた。

【二転三転はあたり前、どんだけひっくり返すんだよ!ってくらいの《どんでん返し》。行き着くのは、背筋も凍る驚愕のラスト!】というコピー。ふむふむ、なるほど、ホッホー・・そう来たか!と読む。

 

 

 柚月裕子・著 『教誨(きょうかい)』

 

小説のモデルになっただろう事件を憶えている。その場所を知っていたからよけいに記憶に残っている。

P220

【「なにが悪いわけでもないのに、うまくいかない人っているのよ。真面目で、逃げるのが下で、不器用。もっと狡く生きればいのにって思うけど、それができないんだよね。あたしはそんな人間、嫌いじゃないけど、見ててつらいよね。】

読んでいて、読み終わって辛い。誰かに「面白いから読んで!」とは薦められないが、でも読んで欲しいと思う本だった。

 

 

 佐々木ひとみ・作 本郷けい子・絵 『ぼくんちの震災日記』

 

仙台市在住の作家さん。2011年3月11日午後2時46分から4日間を描いた本。

【「たいへんな日々を」「がんばった日々」にするために。】と書かれていた。そうだ、頑張ったんだと、あの日々を思い出した。家族で読んで欲しい本だと思う。

 

 

 

 キャシー・ステインスン・文 ロビン・ベアード・スイス・絵 

ふしみみさを・訳 『あかが いちばん』

 

子供の世界を見事に描ききったカナダのロングセラーの本。

黒とか青とかグレートとか、そういう色ばかり好んで着てきたけれど、赤も悪くないなと最近思う。子供のころから「赤」が好きだったら人生は違っていたのだろうか?あっ!それは意味のない問いだ。(笑)

 

 

 

 長田弘・詩 いせひでこ・絵 『最初の質問』

 

長田さんの詩が好きだ。この本は先日記事にしたけれど、だれかれかまわず、まるごと一冊紹介したくなる。

【あなたにとって、いい一日とはどんな一日ですか。「ありがとう」という言葉を、今日、あなたは口にしましたか。】

【「うつくしい」と、あなたがためらわず言えるものはなんですか。好きな花を七つ、あげられますか。あなたにとって「わたしたち」というのは誰ですか。】

【何歳のときのじぶんが好きですか。上手に歳をとることができるとおもいますか。世界という言葉で、まずおもいえがく風景はどんな風景ですか。】

【問いと答えと、いまあなたにとって必要なのはどっちですか。これだけはしないと、心に決めていることがありますか。】

 

 

 

 

⑭ 最上一平・文 中村悦子・絵 『千年もみじ』

 

ここにも戦争の話が書かれている。

表紙カバー【世界には何千年も生きている木があるそうです。人のいとなみや歴史を、じっと見つめてきたのではないでしょうか。大きな木の前に立つと、その存在にはげまされます。手でふれ、その声をきいてみたくなります。何千年も生きた奇跡、そして、私たちの生きている奇跡。大きな木は、何を言っているのでしょう。-ー最上一平】

 

 

 

 村上春樹・文 安西水丸・絵 『ふわふわ』

 

村上さんの絵本は、小説と同じだと思う。子供向けではないし、読み流しはできない。

【この空間に存在しているものは、きっとどこか別の空間にも存在しているのだ。ぼくはそのことを感じる。ぼくはやがて、ずっとあとで、どこか別の場所で(思いもかけないような場所で)、それを知ることになるだろう。「なあんだ、ここにあったのか」と。】

 

 

  

 ジェームズ・サーバー・作 村上春樹・訳 

『世界で最後の花 絵のついた寓話』

 

この本は1939年11月に刊行されている。その2か月前の9月、ナチス・ドイツ軍がポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発している。いまから84年前に書かれている。中扉に【ローズマリーに、君の住む世界が、わたしの住む世界よりもっと善き場所になっていることを願って】とある。・・・ただ悲しい。

 

 

⑰ 町屋良平・著 『恋の幽霊』

 

今月最後に読んだ本。10月22日・日曜朝刊の書評(作家・大鋸一正)に惹かれる。

【身体に突き刺さる言葉・・こんなにも読みやすい語り口で、素直な心情が語られているにもかかわらず、ふと自分と物語をつないでいるはずの足掛かりを失ったように感じる。それでいてなぜか、落下せずに空中を走っている。~~~小説において、読者に与えられるのは「文体」を形にした文字だけだ。文字の向こうに生きた人間はいない。けれど小説は、何もないところから発せられる声を作り出す。あり得ない「恋」を語る「幽霊」の声を。それが人の心を揺さぶる不思議を、改めて考えさせられる。】

 

町屋良平さんの本は、第160回芥川賞受賞作『1R1分30秒』を読んでいた。その時、これは女性には書けない文章だと思った記憶があった。題材がボクシングだからではない。思考回路とでもいうべきか・・・?その記憶を確認したかった。

P35。

【あのころの五感をあるべき言葉と知覚で再構築する。そのちからがいまの自分にはもうない。記憶とは体力なのだと、沙里との日々でお思う瞬間がよくあった。】