おととい、友人からメールがきました。

 

「一昨日〇〇〇図書室から『ミシンと金魚』が届いたと連絡がありました。すぐ受け取りに行きましたが、計画では一週間位かけゆっくり読むつもりでした。でも読み始めたら止まらなくなり今日2:30に読み終えました。今の自分には必要な情報がいっぱい書かれていましたが、なぜか複雑な心境です。~中略~ すてきな本の紹介をありがとうございました。」

 

  本は食べ物と同じで、それぞれの好みだと思います。そしてお腹がいっぱいの時は好物でも食べたくありません。

だから、滅多に他人には薦めません。なのに紹介したのは、そのとき友人が悩んでいたことに対するヒントが、たくさんあるような気がしたからです。小説の類は滅多に読まないその人が、止まらなくなったというのだから、嘘ではないでしょう。薦めて良かったと思い、本を読むことは無駄ではないと思ったのでした。

 

 

 

 そんな訳で、この下、7月4日から7月22日までに読んだ本の、自分のための読書メモです。興味がありましたら、どーぞ。たらたらと長いですが。(;^_^A

スルーされても、悪さはしません。(笑)

 

 

呉 勝浩著『スワン』

 

 先日の直木賞にノミネートされた『爆弾』を6月4日図書館に予約したが、100人近い順番待ちだった。ならばと、借りたのがこの本。ショッピングモールで起きた無差別銃撃事件。事件の渦中にいながら生き残った少女と他の生存者たちの話。被害者のはずが、加害者かもしれない・・・。第73回日本推理作家協会賞、第41回吉川英治賞を受賞した作品だけに面白かった。

 

 話しが飛躍するけれど、素人が拳銃を作り、実際にそれを使用することが現実になった今、「プラン75」も映画の世界だけではなくなるかもしれないと思った。しんどい世の中になったと思う。

 

 

 

伊藤比呂美著『いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経

 

 母親が寝たきりになったことをきっかけに「死」を身近に感じるようになり、その後、父親とご主人をなくされた詩人の伊藤比呂美さんのエッセーと、お経を現代語訳した本。詩人が現代語に訳すお経も面白かったが、エッセイが心に沁みた。一部はすでにブログで紹介したので、ここには記さない。「日没」というエッセーをコピーした。これ、紹介したかった。とても・・・。

 

 

幾島幸子著 『いつかは行きたい美しい場所100 NATIONL GEOGRAFHIC』

 

 ナショナル ジオグラフィックが永年に渡り撮りためてきた写真集。世界100ヵ所の美しい風景が紹介されている。

プロの人たちが腕によりをかけて撮った写真は美しい。美しい場所はより美しくだ。

人間がいなければ、世界は美しいままなんだろうと思う。二つの意味で、ため息をついた。

 

 

  

ジョン・J・ミューズ作 三木卓訳 『3つのなぞ』

 

いつが一番だいじな時なんだろう?

だれが一番だいじな人なんだろう?

何をすることが一番だいじなんだろう?

 

トルストイの『3つの疑問』を子供たちに親しみやすい形にかえ、人としての真理を説いた絵本。(ネットより)

大人にこそ分かり易い本だと思った。国会議員必読の書!皮肉( ´艸`)。

それにしても、ジョン・J・ミューズの絵が美しい。

 

 

伊与原 新著『オオルリ流星群』

 

 高校時代の仲間とともに40代の大人たちが故郷に天文台をつくる物語。著者は東京大学大学院で地球惑星科学専攻の博士課程をでているそうだ。天文学に知識のない自分にも分かりやすかった。ままならない人生を生きて来た大人たちの、面白おかしいという話ではないのに、読み終わってほっとする。世の中、こんなだったら好いなと思う。

 

P17より。

 人間は、貧しい暮らしや不自由な生活にも、愛着を感じ得る。それが日常となれば、ことさら不幸だとは感じないのかもしれない。そして、些細な幸運にも幸せホルモンがたっぷり出るだろう。その分泌量の日々の平均値は、裕福な人々と果たして大きく違うのかどうかーー。

 

P214~P215

 「雨戸が閉まっているのが梅ちゃんの部屋だよ」

「もう何年もああいう状態なんだ」修が低く言う。「俺たちが何度訪ねていっても、返事一つしない。そういう人間にいきなり頼み事なんて、無茶だと思うぜ。やってくれるわけがない」

「それならそれで構わない。やってくれたら嬉しいけど、やってもらわなくとも困らないから。頼みごとといっても、その程度のこと。資料にもそう書いた」

「それって、もしかして」久志は訊いた。「実は天文台のためじゃなくて、梅ちゃんのためってこと?」

 

 彗子は肯定する代わりに、静かに言う。

「梅野君、現にミニFMはやってたわけだし、たぶん、何もやりたくないというわけじゃない。やらなきゃならないことがあるのに、それがやれてない。そう感じてしまう自分が辛いんだと思う」

 

 

パトリシア・C・マキサック作 

ジゼル・ポーター絵 福本由紀子訳

『ほんとうのことを いってもいいの?』

 

 たとえ本当の事でもストレートに伝えては駄目な場合がある。同じ意味でも「伝え方がある」ということを、主人公の女の子が遭遇する具体的な場面を通して教えてくれる絵本。でも、自分にはそれが面倒で、とても難しい。いつも他人(ひと)を怒らせる。図書館でこの本を手に取った時、自分は本当のことを言いたいと思っていたのだと思う。ものすごく。

 

 嘘はついていない(つもり)だけれど、本当のことをストレートには言って(書いて)いない。自分が無口になるときは、本当のことを言いたくて言いたくて仕方がない時かもしれない。いや、そういう時だ。(笑)

 

 

 

  

森絵都作 吉田尚令絵 『希望の牧場』

 

 福島第一原子力発電所の警戒区域内に取り残された牛たちと、売れない牛を生かし続けることは意味がないと馬鹿にされながら、牛たちを守り続けようと決めた牛飼いの話。学校の副読本にして欲しい。無理だろうな・・。

 

  

  

 

全ページ、そっくり紹介したいけれど、それは出来ないものね・・・。

今日の朝刊の一面【処理水放出 正式認可】【規制委「安全性問題なし」】の文字。

言葉もでない・・・。

 

 

 

三宮麻由子著『センス・オブ・何だあ?』

 

 4歳で目の手術をし、光を完全に失った著者が、日常生活の中で小さな変化や疑問を感じ、「何だろう」と興味を持つことの大切さや愉しみを書いた本。五感を使って感じることの素晴らしさが伝わってくる。歳をとると五感は鈍る。せめて、いま残っている感覚を、おぼえていたいなと思う。

 

P25から

 ところで、雨粒を丸い形のまま触る方法を試したことがありますか?傘の内側に手のひらを当てると、まっすぐ落ちてくる雨を、そのまま触ることができるのです。直接手にうけると雫がつぶれて平たくなってしまいますが、傾斜のある傘に落ちる雨は転がるので、手のひらには丸いまま感じられます。

 この気持ちよさは子どもたちにも味わわせてあげたい。

 

 

 

乗代雄介著『パパイヤ・ママイヤ』

 

 千葉・木更津の小櫃川(オビツガワ)河口の干潟を舞台に、異なる環境で生きる2人の少女(パパイヤとママイヤ)のひと夏を描く長編小説。人との関係に縛られた2人が友情を支えに夢と自由を手に入れる物語。

 

P131から

 本当に楽しそうに、私の頭の上で指が弾んだ。悩みってなに。ぼうっとする頭がどうにか考えているうちに、パパイヤの指はまた小さな円を描き始める。

「それで、初めて思ったからちょっと変なんだけど」そこで頭を撫でる手が止まった。

「なんか、なりたい自分だって気がするんだよね、あんたといる時だけ」

 

 ちょっと痛くてじんわり熱いわたしの目が見たのは、睫毛からあふれて零れ落ち、頬を伝って顎の先から滑り落ち、サンダルのあいだ音もなく、砂色を転々と変えるわたしの涙。それと一緒に耳が聞いた。

「ありがと」

 

自分のためのメモ書きを読んで下さって「ありがとうございます」

(*'▽')♪& m(__)m