Jリーグ・ディビジョン1第33節 横浜FマリノスVS東京ヴェルディ | もん・りいぶる21(21世紀のレビュー三昧)

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2008年11月29日 日産スタジアム 14:04キックオフ

Jリーグ創設以来15年目の今年、クラシコ(伝統の一戦)と冠してよいのかとも思ったのだが、その前身のJSL(日本サッカーリーグ)時代からの好敵手である日産と読売という黄金カードであるのだから、その実態はともかくとして、歴史としてみれば十分クラシコのなるのだろう。

久しぶりのスタジアム観戦は、レギュラーポジションであるゴール裏後段中央からの観戦ではなく、レビューを書くことを意図したわけではないが、少し冷静にサッカーを見ようというつもりにもなりバックスタンド2階中央部という高見の見物席を選んだ。

このクラシコではあるのだが、実は残り1節というところにいたって、J2への降格圏内からの脱出を図るという位置づけで、とてもこの両チームのファンとしては収まりのつかない気分で臨む試合でもある。
首位争い、優勝争いをしてこそのクラシコなのだから致し方ないが、言い方を変えれば、それだけ育成やチーム編成の技量がどこでも上がっていて、ちょっとしたつまずきで降格もし、戦略が当たれば首位争いに加われるという肉薄したチームが揃ってきたともいえるだろう。

横浜は3-4-2-1、東京Vは4-3-2-1で臨んだ試合。
と、キックオフ直後から、いきなり横浜の圧倒的なボールポゼッションが始まる。
東京Vはやたらと多い横浜のパスミスを拾う以外、ほとんどボールに触ることすらできない状態がしばらく続く。
中盤でのボール争いでも、奪った後の展開力でも相当に力の差があるのが見て取れるが、それでもさすがに横浜のボランチを徹底マークして東京Vも少しずつボールに触る回数が増えてきた。

両チームのワントップへのマークが厳しいのだが、横浜の金は左サイドに開いて狩野、兵藤が自由に動けるスペースを確保しながら東京Vのディフェンスを切り裂いていく。一方の大黒は高い横浜のスリーバックにことごとく跳ね返されて、ほとんど機能させてもらえない。
決定的なシーンはいくつかあったものの精度に欠いたりシュートの強さに勢いがなかったりと点が取れない横浜に対して、ほとんど何もさせてもらえないという印象が前半の東京Vには残った。
もはやこれでは、緑の恐怖どころではなく、「緑のおじさん」でしかない。

しかし、後半に入って気合が入った東京Vは、横浜のパスの出所がボランチ経由だという部分を見抜いて最初から飛ばしまくり、二人のボランチにすばやく寄せて切り裂き、順調にボールを奪って横浜ゴールに襲い掛かる。
しかし、点になりそうな気配はなく、逆にボランチ福西が横浜の松田にボールを奪われ、そのまま長い距離のドリブルを許し、寄せの甘いディフェンスをあざ笑うかのようにそのままシュートしてゴールを破った。

そうなるともはや組織的な動きは皆無になり、必死に動けども足は動かず、見方へのパスコースを全て消されてバックパスを繰り返すようになると、あとは鳶にさらわれた油揚げのように長谷川のJ初ゴールを献上してしまう。

横浜の状態にしても、連覇していた頃の激しいチェイシングも切れ味鋭いドリブルも少々迫力不足ではあったが、それでも勝てたところに横浜と東京Vの決定的な違いがあることが明らかになった。

横浜にはアイデア豊富でそれを使いこなせる狩野がいる。
個人で強く組織としているディフェンスがそれを支えてはいるが、狩野の成長は今期の終盤にきて横浜の降格阻止に大きく貢献していることは間違いない。

狩野は得点には結びつかなかったものの、右サイドの田中隼、左サイドの田中裕、そして3トップの一角の兵藤を伴って何度も組織的な攻撃の起点になった。
それだけではなくリズムのおかしいところでは率先してシュートしてリズムを変え、相手のディフェンスの開けた穴に次々と侵入して後一歩のところまで迫っていた。
狩野と兵藤の入れ替わりながらの自由自在なポジショニングが東京Vの守備を混乱させ、その間隙を縫ってパスカットした松田のゴールに繋がったことを考え合わせれば、やはり狩野の勝利に果たした役割は大きいといえるだろう。
終盤田中隼の代わりに投入された清水がさらに東京Vの混乱を誘発して長谷川の初ゴールに繋がったのも、戦術レベルでいえば木村監督の策がこの試合に限ってはフィットしたといえるだろう。

中盤を支配した狩野が横浜を勝利に導いたとすれば、東京Vの中盤を誰も賄えなかったことが最大の敗因だろう。ゴリゴリとこじ開けようとする3人のフォワードとその手前でお膳立てする中盤との間の断絶。
ブラジルトリオの活躍で好調を見せ付けていた時期の東京Vと比べると、やはりまったく別なチームに見えてしまうのだが、横浜で言えば山瀬功という絶対的な中盤の主を欠いても狩野がいるのと比べて、やはり当初のチーム編成時点から既にこの降格争いの主人公格の位置は宿命付けられていたのかもしれない。

まだ、東京Vの降格が決定したわけではないが、親会社「読売」への貢献度ばかりを天秤に掛けられて編成に予算が使えないという現状から変えないと、クラシコと呼べる内容に戻らないのかもしれない。