私は夢の新薬という表現が大嫌いである。
なぜならそんなものは存在しないからである。
インターフェロンがC型肝炎の治療に有効でないかと
いわれたとき、「夢の新薬」かという表現が使われた。
制ガン効果という面では効果があることはわかっている。
しかし副作用の重いこともあり積極的に使われなくなってしまった。
これをいまどき夢の新薬などという人はまずいない。
経口剤ソフォスのヴビル、ハーボニーが発売されたとき
これらも夢の新薬かと言われた。
この薬はあくまでウイルスを排除するだけである。
C型肝炎の最大の課題であった、ウイルス排除が90%以上可能
になったという意味では画期的である。
しかし勘違いしてもらっては困る。
この薬には痛んだ肝臓組織を再生する力などまったくない。
(ガン抑制効果についてはいまのところ不明)
肝臓が再生するか否かは個人の肝臓の予備能力にかかっている。
代償性肝硬変状態になった場合でも使える薬ではあるが、
肝臓自体がよくなるかどうかは別次元の話だ。
非代償性肝硬変になってしまうとこの予備能力は
低下してしまっているので、この力を維持させるような
工夫が必要だ。BCAAとかアルブミン製剤とかを使って
肝機能が低下しないようにできるようになった。このおかげ
で肝硬変での死亡は激減した。しかしやはり現在の状態を維持させる
ことはできても肝臓自体を蘇生させることは
できないし、非代償性肝硬変に使うとこともはなはだ危ないし
腎臓病のある場合は注意が必要だ。
薬によってすべてを治そうなどと過大な期待をするのは妄想だ。
それゆえ夢の新薬などという表現はきわめて不愉快なのだ。
注:予備能力 肝臓は自己再生を繰り返していくので
著効後は再生を繰り返しながら繊維化
の解消を時間をかけておこなう。
肝硬変が進行するとこの再生能力が低下する
なお経口剤治療の課題としては
1多剤薬剤耐性による難治療
2SVR後の発ガンの問題
3非代償性肝硬変患者への投与
などがある