1)薬剤耐性の問題
これは経口剤治療において最も悩ましい問題である。
というのもインターフェロン治療においては
問題にはならなかった。しかし経口剤治療
においてはタンパク合成阻害剤の属性を十分に考慮したうえで
治療しなければ、新しい耐性ができてしまう。
たとえばNS5A阻害剤やNS3阻害剤を使った場合がそうだ。NS5Aでは
Y93、L31などという箇所だけでなくNS3という非構造蛋白のD168という箇所に
耐性ができやすく、連続して同じ属性の薬品を使うと時として交差耐性、
多重耐性が出来てしまうことがある。これらは新たな耐性を獲得すれば
さらなる難治性化していく可能性もあるので、従来の蛋白阻害剤では対処しにくい。
このような耐性が出来た経緯は
かなり複雑である。現在はほとんどの阻害剤が攻撃ターゲットを非構造タンパクと
いうものになっているが、攻撃ターゲットを新たに設定することで薬剤耐性を解決
するようになるかもしれない。
2
非代償性肝硬変患者への投与
従来の経口剤は重症の肝硬変もしくは腎臓病患者には
投与できない(薬によって違う)という欠点があった。
これは薬が肝臓代謝だったりすると、ウイルスを駆除
するために、肝機能や腎機能が悪化することがあるからである
最新の薬では、これらの症状がある患者でも投与できる
という触れ込みがある。
しかし実際問題として、非代償性肝硬変患者にこれらの
薬を投与してはたして、本当に肝機能が十分に自然回復するのか。
肝臓が本当に再生可能かどうかはきわめて疑問である。
なぜなら自分で再生できないものを薬で治せるのかは大いなる疑問だからだ。
3)SVR後の発癌
インターフェロン治療でもそうだが、SVR後に発癌するケースがしばしば
ある。
たとえば高齢者、SVR後も高度線維化、飲酒歴この3つうの条件がそろえば
結構高い確率で発癌することが判明している。これは高齢者は免疫が低下
しており、高い繊維化が潜在的発ガンリスクが高く、飲酒はガン化を促進する。
といったことに起因すると考えられている。
またSVR後、脂肪肝、内臓脂肪蓄積 NASHなどで、肝臓癌が発症
することもある。しかしこれは発症に数年かかってはじめて判明するので、追跡調査が
追いついていない。経口剤のおかげでウイルス性肝炎は減少しても
非C型非B型の発癌が今後どうなるか。肝臓ガンは初期に見つけて
対応することが重要なので早期発見、早期治療が重要である。
そういう意味での定期検査、画像診断はSVR後5年以上は欠かせない。
1)"2)の対策方法はきわめて専門的でなおかつ短期的に有効な方法が
あるかどうか現時点ではわからない。
脂肪肝やNASHを予防することは患者レベルでも対処可能だ。
しかし禁酒だの過剰糖分摂取禁止だの油ものを控えるなど続ければストレスがたまる。、
そのことをズバリ指摘すると、多くは非常に煙たがられるのが現実である。
なぜなら日常生活習慣を変えないと無理だから。逆にお前はどうなんだ
とさえ言われてしまう。事実私もかなり禁欲的な生活を送ってみたが、
想像以上に不満がたまったし、そのわりには血液検査もそれほど良好ではなかった。
ならば放置していればいいのかということである?
ウイルスがいないのだから自然に良くなっていくという予想はずばりすごく甘い。
ウイルスがいなくなったのになんだか調子が良くない。なぜだろうか?
肝臓がんなんともなければ、そんなことはないはずである。
臓器のどこがおかしいから不調をきたすわけであり、実はこういう体験を
した方が多いという話を耳にする。副作用がないからというだけで
治療してみたものもの、治療後に不調をきたした。いかにウイルスが臓器を
蝕んでいたかということだ。私も例外ではなかった。治療後数か月後かなり
具合が悪かった。幸い、線維化が悪化していることはなかったが、経口剤で
まったく副作用なしだっただけにこれはあるいみショックだった。
しかしここ数か月ゆっくりではあるが改善傾向をみせているし、疲労の回復度
が昔とは格段に違うのでウイルスがいないことの影響は大きいと思うわれる。
ものは考えようである。毎日発ガンを恐れて生きていくのも疲れる。
ならば検査はきっちりとして、あとは好きなようにするというのもひとつの生き方である。
一番危険なのは、SVRになったからといってのんべんだらりと過ごすこと。
とある有名病院の肝臓専門医先生のお言葉である。
私はこれはやや厳しい嫌な言い方だと思ったが、かなり現実的だと思う。
もう大丈夫だと思って、検査を甘くみていつのまにか悪化していた。
これが実は一番怖いのではなかろうか。物言わぬ臓器とはそういうことなのだろう。