肝臓の状態というのは人によってそれぞれ違います。肝炎に感染した場合
肝炎ウイルスを駆除しなければいけないという点はみな同じですが
駆除がうまくいってSVRを達成した時点での肝臓の状態は
個人差がかなりあります。
ところが多くの人がそのことに気がついていないのか
HCVウイルス駆除がゴールだと思っているように思えるのです。
ウイルス駆除すれば肝機能は改善されますからそう思うのも無理ありません。
先日もインターフェロン治療を終わった患者さんとお話をしていて
「SVRになったからもうやることがなくなってしまったよ。
これでガンになったならしかたないよね。」
これはある意味ひどい誤解でして
この方はウイルス駆除が治療のすべてだと思われていたようです。
もともと症状の軽い人は、ウイルスを駆除すれば、どんどん肝機能も
改善して肝臓もどんどんきれいな状態になっていくきます
この場合放置しておいてもそれほど問題はありません。
しかし中程度F3やF4の肝硬変になってるような場合はなかなかそうは言い切れません。
この場合繊維化がどこまで進行しているか、自力で再生できるかどうか。これは常に重要な
ポイントです。つまりウイルスが消えても完全に元どおりには
戻らないのです。 (戻るなんて言っているお医者さんいますがそれは一部のひとだけ)
肝硬変になっている場合、
自力再生できる代償性肝硬変かそれが難しい非代償性肝硬変かの分かれ目も
なかなか難しいです。現在経口剤でウイルスの駆除は簡単にできるようになりましたが
繊維化の解消はまだ薬ではできません。
将来的にわかりませんが、繊維化の性質とも関係ある、遺伝子レベルの傷
をいじる話なので、簡単にはいかないでしょう。
では解消の方策がまったくないのかといえば、そうでもないのです。
というのも肝臓は常に再生していく予備能力を持っているわけですから、これを利用する
、薬を用いない療法があります。ただし絶対元のような状態にはもどりません。
それだけは無理です!
これは盲腸の傷あとが消えないのと同じこと。ただし症状の改善はできます。
まあそれでも果てしなく個人の努力レベルの問題なので 努力を要します。
はっきりいえばそんなに甘くはないわけです。
なぜなら楽をしてアルコール飲んで、脂ぽいもの食べながら肝臓がよくなっていくなんて
ありえません。
そもそも人間の代謝能力は年齢とともに低下してわけで
糖分代謝や脂肪代謝をコントロールしなければ糖尿病や脂肪肝になってしまいます。
それが肝炎になった人だと普通の人よりよけいにこの遺伝子の傷があるわけですから
よけい発癌リスクがあるのです、。
いまのところこの方法で発癌リスク因子を減らそうというのが、もっとも効果的な方法なわけです。
SVR後の発癌についての報告は専門的な文献もありますが、要因としては年齢、繊維化の程度などが関係してきます。
SVR後すぐ発癌するケースや10年して高齢になって
突然発癌してしまうケースなども実際症例としてはいくらでもあります。
だからその場合はしかたがないのでしょうか?
いえそんなことはありません。もちろん検査でガンがみつかった場合2センチ以内ならば、すぐ
対処できます。しかしもっと大事なことはそうならないように、予防することです。
できてしまったキズは回復しようがありませんが傷口を広げないことは可能です。
でもまずは検査で早期発見することです。
ALT 30以下
膠漆反応(ZTT) 12
血小板数 20
フィブロスキャン F1
エコーで異常個所なし
AFP 5
こういう数値が出たとしましょう、これでも油断はできません。
なぜなら、遺伝子のキズまでは目に見えないからです。
しかしこういう場合数年は発癌しないでしょう。血液検査でわかるのはそこまで。
5年10年先のことまでは予測できません。
最近新しくできた予測マーカーでも5年くらいまで。
ウイルス駆除をした後は、できるだけ肝臓の状態をよくしていくこと
放置しておいたのでは改善しません!
ともかくまずは太らないことです。というか内蔵脂肪をつけないこと。
しかしこれが簡単なようで、以外に難しい。なぜなら自己管理の世界だから。
医者だのみでなく最終的には自己管理ができるかどうか!
厳密にいえば脂肪分も糖分も要注意なわけでして
さらにいうなら肝硬度が正常だからといって安心しきってはいけないということです。
特に糖尿病はリスク因子は大なわけですからその話はいずれまた。
https://medicalnote.jp/contents/150622-000003-AFKTGH
なおこのテーマに関して12月2日に国立国府台病院肝臓病教室で講演会があります。
