先日、ある肝臓病の講演会に参加して愕然とした。
それは2年前は参加者が300名くらいだったのに、
今回はなんと、40名くらい。
悪天候のせいもあったが、この参加者激減の理由はなんだろうか?
C型」肝炎が治ったからもう参加する必要などないということだろうか。
血液検査も順調だし、ウイルスもいない。参加者はみなB型肝炎患者のみか?
ハーボニー、ヴィキラックスなどいい抗ウイルス薬は出たおかげで
HCVウイルス駆除率は高い、これ以上何を心配することがあるのといわれそうだ。
せっかく治ったのに、こんな不快感をあおるブログを書くなともいわれる。
たしかにほとんどの方がHCVウイルスは駆除できているはず
血液検査は良好になりつつあるという方は多い。
しかしである。
線維化はどうなっていますか?この問に関して、かなり改善されている
と答えることのできる人は絶対少ないはず!!
なぜなら、これは血液検査でもエコーでもフイブロスキャンでもわからない
組織検査をした場合のみはっきりとわかるから。
SVR24著効を達成したのに、肝生検をおこなうひとなどあまりいないだろう。
しかし実はこれをしないかぎりはっきりとした状態はわからないのだ。
では線維化の何が問題なのか?
それは今は問題はなくても10年後に発癌してくるケースがあるということ。
特に線維化が進んでいた場合は、その経過観察が特に重要である。
ウイルスが消えたから大丈夫などとは言ってられない。
ところでインターフェロン治療後10年後の発癌率はどうなっているか?
講演のなかで
I 先生は
「全国の●十字病院でウイルスの消えた患者さんを1050人集めました。
するとウイルスが消えたあと5年後4.3%の方ががんになっています
10年たつと10.8%ががんになっています。」
これはどういうことなのか?
つまりウイルス性肝炎が原因の発がん率は確かに減少しているが、
それ以外の要因でもガンが発生していくということらしい。
それはNASHであり脂肪肝であるということなのでどういう人が実際
発癌しているかだが、それをここで詳しくは述べることはしない。ただし
インターフェロン治療後10年で発癌したひと、2年以内以内に発癌したひとには
臨床状態の違いはあっても肝炎ウイルスに感染したという点で発癌リスク自体は
同じだということである。つまり現在C型肝炎は治っていることには間違いはないのだが、
組織の状態は良くもなるし、油断すれば悪くもなりうるということ。
特にインターフェロンフリー治療に関してはまだ詳しい研究が
まだなされていないものだから単純に安心してはいけないということなのだ。
これがウイルス駆除後もひきつづき検査が必要ということの理由である。
つまりC型肝炎は治るようになったが、肝臓がんリスク自体はまったく消えていない。
しかしそれが、1年で出てしまう場合と10年過ぎて出てくる場合とある。
しかも実態はまだよくわかっていない。これは注意すべきことだろう。
C型肝炎患者はウイルスを駆除すれば、それで終わりと
思っている方がやはり多いように思える。それが証拠に最近の医療講演会も参加者が
すくない。確かに肝炎患者が減っていくことはいいことなのだが、それイコール発癌患者が
なくなるということでは絶対にない。参加者が少ないことをぼやいているのではない。
ウイルスが消えてしまうことで、発癌予防に関心がなくなくなってしまうのでないかということが
問題なのだ。闘病記というのものは、病気になってからの話が多いがどうやって予防しよう
という話はあまりない。
「肝繊維化の軽い若年例ではウイルス駆除後の発癌例はきわめて低いと思われるが、
繊維化進展例や高齢者ではウイルス駆除にも発癌リスクは存在する。
インターフェロン治療ではウイルス駆除後10年では発癌例が報告されている。」
もっと気になる研究が出ていることをご存知だろうか?
O大学臨床報告
「現在、主流となっている直接作用型抗ウイルス剤(DAA)の内服治療は、適用範囲が
肝硬変までと広く、また100%に迫る確率でウイルスを排除することが可能となっているが
、インターフェロン治療後と同様に線維化が改善せず、がん化する可能性がある。
研究グループは、今後はこの飲み薬による治療でウイルス排除が認められた後の
状態においても同様の検証を行う予定としている。」
なんとDAA治療するとインターフェロン治療より繊維化が解消しないのだというから驚きだ。
しかし当然というえば当然。インターフェロンは免疫を強化するが、経口剤はそれがない。
ウイルスを駆除した時点で、組織がどうなっているかだ。線維化が解消していない状態で
アルコールを摂取したり、高脂肪食を多く摂ればどうなるか・・・
私は先日の検査でZTTがまた正常範囲でなくなっていた。少し油断すればこの始末。
もちろん今のところ血液検査は良好だし、肝硬度も高くはない。それでも
線維化は今後くわしく調べる必要がありそうだ。肝硬度F1でも発癌しているケースはいくらでもある。
発癌しても初期段階ならば、完治できる。
早期治療すれば (たとえば2センチ以内)ならなんとかなる可能性がまだあるのだ。
やはり今後10年後まで検査は絶対手がぬけない。