頭蓋骨に2箇所穴を開けて両側から腫瘍を摘出する大きな手術です。

 

現時点で可能性のある病名 : 髄膜種、悪性リンパ腫、その他の腫瘍

 

 

メモ頭蓋内腫瘍摘出術(テント上)
 ・テントとは

 ・2か所開頭

 ・ドレナージ

 ・術中迅速病理検査

 ・腫瘍摘出後

 

メモ起こりうる合併症など

 ・いろいろあります

 

 

  頭蓋内腫瘍摘出術(テント上)

 

手術前後のMRI画像。手術の翌々日に撮影した画像は開頭部がよくわかります(矢印部分)

 

ーテントとはー

 

大脳と小脳を仕切るようにある厚い硬膜を「小脳テント」
それよりも上方の大脳側を「テント上」
下方の小脳や脳幹側を「テント下」と呼ぶ
 
 
ー2か所開頭ー
 
 • 腫瘍に一番近い脳天からのアプローチは(危険な部位を通るため)避け、その前後2か所を開けて両方から腫瘍にアプローチする
 • 体は横向き(左下)
 • 絶対に動かないよう、末梢神経ブロック注射のあとヘッドピンで頭部を3か所固定(頭蓋骨に打ち込む)
 • できるだけ髪に隠れる部分に打ち込んでくれるらしい
 
 • 昔は丸刈りにしていたが、近年は開頭する部分のみ髪の毛を剃るため、術後は開頭部がわかりにくい
 • 脳を包んでいる硬膜を切開し脳を露出、脳の隙間をぬって脳腫瘍へ到達し摘出する
 • 顕微鏡を使用して細かい部分を観察しながら手術を行う
 

画像引用元:名古屋大学大学院医学系研究科・医学部医学科/ Brain theater

 

 

ヘッドピンを刺す場所が悪いと術者にとって邪魔になったり、体位の取り方が悪いと肝心の腫瘍が見えなくなってしまうため、体位取りは手術を左右するほど重要なことなんだそうです

 

ードレナージー

 

いきなり開頭すると圧で脳が飛び出してしまうため、開頭前に頭蓋内圧を調整する

 

 • 脳室から脳脊髄液を体外に出す処置を行う

 • 髄液は脳から脊髄の方へ循環しているため、夫の場合は腰椎からドレナージを行う(腰から管を入れる)

 

 参考サイト:脳神経外科領域のドレナージ

 

 

ー術中迅速病理診断ー

 

手術中に一部の腫瘍細胞を調べること

細胞を調べることにより全摘出すべきか部分摘出にとどめておくべきか判断できる

 

 • 術中迅速病理診断の精度はかなり高い

 • 術後に改めて時間をかけ病理診断を行い腫瘍細胞が確定する

 

 

術中迅速病理検査は精度が高く、その後で行う病理診断でグレードが良くなることはまずない、とのことでしたが…。

 

ブログ内:術中病理診断の結果

     病理診断結果「孤立性線維性腫瘍」

 

 

ー腫瘍摘出後ー

 

 • 硬膜を縫合し頭蓋骨をチタン製プレートで固定する

 • 傷口は糸で縫い合わせるとひきつったり皮膚へのダメージが大きいため、近年はステイプラーというホチキスで縫い合わせる

 • 術後1週間で抜鉤(ばっこう・ホチキスの針を抜く)

  

 

夫の腫瘍は主治医ともう一人の先生が

両方向から摘出をしてくれました

 

脳神経外科の先生は長時間の手術の間

寝食を絶ち、手術が終わるまでずっと

治療に専念してくれています

(集中していると空腹にもならないそうです)

 

先生方、そして手術チームのみなさまには

尊敬と感謝しかありません

 

 

 

  起こりうる合併症など

 

 

ーいろいろありますー

 

 • 現在現れている症状が悪化する可能性がある

 • 意識障害、認知機能障害、言語障害、感覚障害、運動障害など

 • 手術による脳の損傷

 • 術後の頭蓋内出血や脳血管閉塞

 • 最悪の場合恒久的な後遺症となる

 • 血管を巻き込んでいるため大量出血する可能性があり、その場合は輸血で対応する

 • 術後の傷口の感染

 • てんかんや痙攣

 • 肺炎や肺血栓塞栓症

 • 薬剤に対するアレルギー反応

 • 頭を固定するヘッドピンは頭蓋骨に穿刺するため、骨がもろい人は貫通する可能性がある

 • 骨が丈夫な人でも側頭部からこめかみにかけては骨が比較的薄いため、やっぱり貫通する可能性がある

 

 

夫の場合はかなりの出血を伴う手術でしたが、輸血をしなくても問題ないと判断されました

 

骨はしっかりしているためヘッドピンが頭蓋骨を貫通することはまずないと言われ安心しましたが、10時間もの間5kg近くもある頭部を支え続けた左こめかみは、1か月後のPET検査でも炎症部位として煌々と輝くほどの反応をみせていました