モンゴルだるま@モンゴル在住の遊牧民企業家です。
2017年の夏のツアーシーズンがひと段落し、草原の我が家は夏のゲストゲル等の施設を撤収、越冬準備に入っています。
9月24日(日)はモンゴルの暦だと、秋の中の月の青き寅の日。
ということで、突如、仔馬の焼き印式をすることになりました。
モンゴルの遊牧民暦では、夏の最初の月あたりの戌か寅の日に「雌馬を捕まえる儀式」というのをやって、その年に生まれた仔馬を捕まえて、ゼルというつなぎ紐につなぎ、朝から晩まで2時間ごとに馬の乳しぼりをする夏の作業のオープニング祭みたいなことをします。
今年は6月7月が壮絶な干ばつだったことや、馬の乳しぼりができるのが草原の我が家では、ガナー君と私だけ。ガナー君は腰痛、私は乗馬ガイドのお仕事で多忙、ということで、馬乳酒づくりは早々に断念してたから、やらなかったのですが。
まぁ、仔馬は2頭生まれているし、「儀式だから」ってことで、焼き印式はやるよ、ということに。
通常、「戌の日に雌馬を捕まえたら寅の日に子馬に焼き印をつける」「寅の日に捕まえたら、戌の日に焼き印をつける」ということになっていますが、我が家は捕まえてないから、もう戌の日でも寅の日でもいいよ、と。
子馬の焼き印式で用意するもの
*その年に生まれた仔馬
*焼き印
*香炉
*馬乳酒
*ストーブまたは五徳または鉄板&ファイヤーボックス(焚火とかするときに使う不燃金属製の器みたいなの)
*ハダグ(青い絹の布。モンゴル人にとっては神聖・高潔なものを大切にするときに使う)
方法
1)焼き印を熱する(ストーブ等の熾火の中に入れて赤くなるまで熱する)
2)子馬を捕まえる
4)焼き印用の焼きゴテをハダグで柄の部分をくるんで運ぶ
5)固定された子馬の太腿(左側が多い)の肉厚部分に焼きゴテを押し当てる
6)ジュッと煙が出てもひるまず、暴れる馬のうごきに合わせつつ、しっかりあとがつくまで押し当てる
7)子馬を放す(たくさんいるときは、母馬を別の場所に放しておいて、参加者が子馬を持って、ノクト(ハミなし頭絡)を外して子馬を解き放つ。母馬がゴールで、仔馬が一番早くに自分の母馬のところについた人が1位、その冬はなんかいいことある)=うちはノクトをつけていなかったし、母馬も同じ柵の中に入っているから省略)
8)ゲル内では小宴会の準備
9)馬乳酒を入れた容器に焼キゴテを入れてじゅーってさせる。
10)焼キゴテについた馬乳酒のしずくを参加者ひとりひとりに配る(参加者は両手を器のようにしてうけてすする)
11)なんとなく、飲み食いして、無事に子馬が駿馬・多産な牝馬になるようにと縁起のよさそうなことを言いあいながら終わる
せっかくの日曜日だったから、お客様をお誘いすればよかったのですが、なにせ、突然、当日の朝になって「行くぞ!」と言われてやることになったので、すみませんでした。
馬牧民のアセンバイの話によると、来年は10頭くらい子馬が生まれるんじゃないか、とのこと。
シーズン途中で種馬を若駒と交換したり、若い種馬に年増雌馬がうまく群としてまとまらず別の種馬の群に吸収されちゃったなどがあり、一部の雌馬は種付けされていないと思うのですが、若い種馬ジュチ君がどんだけがんばってるかで、来年、馬乳酒つくれるかどうか、が決まります。
子馬の焼き印式は、夏の終わりを実感させてくれます。
子馬にとっては、「これで1頭として数えられる」一人前への門出です。